生命保険料控除の枠が4万円から6万円へ — 2万円まるごと増える人と、1円も増えない人がいます

お金の話memStock編集部
生命保険料控除の枠が4万円から6万円へ — 2万円まるごと増える人と、1円も増えない人がいます

10月になると、保険会社から「生命保険料控除証明書」のハガキが届きます。毎月口座から引き落とされている保険料の、1年分の額が印字された紙です。勤務先から配られる年末調整の書類に貼って出す、あの1枚。

今年、その書類に去年までなかった欄が増えました。23歳未満の子どもがいる人のための欄です。令和8年分の所得税から、その人たちの一般の生命保険料控除は、限度額が4万円から6万円になりました。

増えたのは「一般」の枠だけで、対象は新しい契約に限られます

生命保険料控除は3つに分かれています。一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つです。今回広がったのは、このうち「一般」の枠だけでした(国税庁 タックスアンサー No.1140)。介護医療保険料控除は最高4万円のまま、個人年金保険料控除も新しい契約なら最高4万円、古い契約なら最高5万円のままです。

もうひとつ条件があります。対象になるのは「新生命保険料」、つまり平成24年1月1日以後に結んだ契約の保険料です。それより前に結んだ契約(旧契約)の保険料しか払っていない場合、この特例は働きません。控除額は従来どおり最高5万円で計算します。

自分の契約がどちらなのかは、10月に届く控除証明書で分かります。証明書には「適用制度」という欄があり、「新生命保険料控除制度」といった表示が入っています。1枚の証明書に旧生命保険料と新生命保険料の両方が書かれていることもあるので、金額の内訳まで目を通しておくと、申告書に写すときに迷いません。

6万円を使い切るには、年12万円の保険料が要ります

控除額は、払った保険料をそのまま差し引けるわけではありません。金額を計算式に当てはめます。23歳未満の扶養親族がいる場合の式は、令和8年分からこうなりました。

1年間に払った新生命保険料 控除額
3万円以下 全額
3万円超 6万円以下 保険料×1/2+1万5,000円
6万円超 12万円以下 保険料×1/4+3万円
12万円超 一律6万円

年12万円を払っていれば、12万円×1/4+3万円で、ちょうど6万円になります。年12万円を超えて払っても、控除額は6万円のままです。

では、去年と比べていくら増えるのか。年8万円を払っている人は、従来の式では控除が4万円、特例の式では5万円です。増えるのは1万円。年12万円払っている人は4万円が6万円になり、増えるのは2万円です。

新しい契約と古い契約の両方がある家庭は、それぞれの式で計算してから足します。国税庁が公開している令和8年分の記載例は、新生命保険料8万円・旧生命保険料3万5,000円というケースです。特例の式で新契約分を計算すると5万円、旧契約分は3万円です。

足すと8万円になりますが、一般の枠の上限に当たるので、この人の一般生命保険料控除は6万円になります。払っている額は同じで、去年までなら4万円でした。

増えるのは控除額であって、戻ってくるお金ではありません。所得税は、所得から各種の控除を引いた残りに税率をかけて計算します。控除が2万円増えて減る税額は、2万円に税率をかけた分です。

所得税率10%の人なら、復興特別所得税を含めて約2,042円。税率20%の人で約4,084円になります(税率は国税庁 タックスアンサー No.2260)。増えた控除が1万円なら、その半分です。

3区分の合計は12万円のまま、住民税の枠も動いていません

一般の枠が6万円になった一方で、3つの控除を合わせた適用限度額は12万円で据え置かれました。

つまり、一般4万円・介護医療4万円・個人年金4万円で合計12万円に達している人は、一般の枠が6万円に広がっても、合計の上限に当たって控除額が1円も増えません。3つの区分すべてに十分な保険料を払っている家庭ほど、この特例で動く金額は小さくなります。

住民税も変わりません。個人住民税の生命保険料控除は、一般が最高2万8,000円、3区分の合計が最高7万円です(東京都主税局)。今回の特例は所得税だけの措置で、令和7年度・令和8年度の税制改正の大綱のどちらにも、地方税側の生命保険料控除の見直しは入っていません。住民税の計算方法は自治体が案内していますので、細かい金額はお住まいの自治体でご確認ください。

「23歳未満の扶養親族」は、扶養控除の対象とは別の言葉です

「23歳未満の扶養親族がいる場合」と聞くと、高校生や大学生の子を思い浮かべるかもしれません。けれど、この特例が言う「扶養親族」に年齢の下限はありません。0歳の子でも当てはまります。

所得税は「扶養親族」と「控除対象扶養親族」を分けて使っています。扶養控除が使えるのは後者で、その年の12月31日時点で16歳以上の人に限られます(国税庁 タックスアンサー No.1180)。16歳未満の子は「控除対象扶養親族」ではありませんが、「扶養親族」ではあります。

今回の特例が求めているのは前者のほうです。扶養控除の対象になっていない乳幼児や小中学生の子でも、条件を満たします。

申告書の裏面には、生計を一にする平成16年1月2日以後生まれの親族で、里子を含み、配偶者や事業専従者は除く、と定義が書かれています。その年の所得が一定額以下であることも条件で、金額は同じ裏面に載っています。そして、23歳未満の子が2人以上いても、申告書に書くのは1人で足ります。控除額が子どもの人数で増えることはありません。

書く場所は2か所あります。生命保険料控除の枠の中に「年齢23歳未満の扶養親族の有無」を選ぶ欄があり、用紙の下のほうに☆印のついた欄が新しくできました。

そこに子どもの氏名、個人番号、生年月日、続柄、その年の合計所得金額の見積額を書きます。生年月日の欄には「平16.1.2以後生」と印字されています。子どもの個人番号を書く欄があるので、マイナンバーカードや通知カードを手元に出してから取りかかると、一度で終わります。

夫婦それぞれが申告できます

扶養控除では、1人の子をどちらか一方の親の扶養に入れます。夫婦の両方が同じ子で控除を受けることはできません。この特例は、そこが違います。

国税庁は令和8年分の保険料控除申告書の裏面に、こう書いています。「年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例には、夫婦共働き世帯のように同じ世帯に所得者が2人以上いる場合において、年齢23歳未満の扶養親族1人ごとに、同一世帯内のいずれか1人の所得者にのみ適用されるという制限がありません。したがって、夫婦の間に年齢23歳未満の扶養親族である子が1人いるような場合には、その夫婦双方が、この特例の適用を受けることができます。」

前提はあります。特例が働くのは、その人自身が新生命保険料を払っている場合です。夫の名義の契約しかなく、妻は生命保険料を払っていないなら、妻の側には当てはめる保険料がありません。

どちらに、いくらの新生命保険料があるのか。10月に届いた証明書を2人分そろえて見れば、その場で分かります。

令和8年分と令和9年分の、2年間の特例です

この特例は令和7年度の税制改正でつくられました。当初は令和8年分だけの措置でしたが、2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱で、適用期限が1年延長されています。国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし」にも、適用期限が令和9年分まで延びたと書かれています。

「令和8年分だけの特例」と説明している記事はまだ残っていますが、いま動いているのは令和8年分と令和9年分の2年間です。恒久的な制度にはなっていません。上乗せ分を恒久化してほしいという要望は出ているものの、要望の段階にとどまっています。

この2年のうちに年末調整で書きそびれた場合は、確定申告で生命保険料控除を受けられます。

家族間のコミュニケーションをテーマにしたサービスを作っていると、こうした書類の話が「詳しいほうの人」に集まっていくのをよく見かけます。けれど今回の特例は、夫婦それぞれの保険料と、子どもの生年月日がそろって初めて形になります。

10月に届くハガキは、毎年ほとんど同じ顔をしています。契約したのは何年も前、保険料は口座から静かに引き落とされ、中身を思い出す機会はめったにありません。今年はその1枚を、子どもの生年月日と一緒に見ることになります。

新と旧のどちらの制度なのか、年間でいくら払っているのか。封を開けたその場で確かめておけば、勤務先から書類を渡されてから探し回らずに済みます。動く金額そのものは数千円です。それでも、家族のために払っているお金の輪郭が1つはっきりする分だけ、見ておく値打ちはあります。

この記事の内容は2026年9月時点で国税庁・財務省が公表している情報によります。制度や様式は変更される場合があるため、最新の情報は国税庁のウェブサイトでご確認ください。住民税の取扱いはお住まいの市区町村にお問い合わせください。

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