お盆玉は広まったのでしょうか — 4つの調査は、別々のものを数えていました

お金の話memStock編集部
お盆玉は広まったのでしょうか — 4つの調査は、別々のものを数えていました

お盆が明けて、数日が経ちました。実家から帰る車の中で、子どもがぽち袋を持っていた家庭があります。中身を見て、去年より多い気がした人もいるかもしれません。

反対に、袋の話が一度も出なかった家庭もあります。渡さなかった、もらわなかった、そもそも帰省しなかった。どちらの家庭にも、うちのあれは普通だったのだろうか、という小さな引っかかりが残ることがあります。

この夏も、お盆玉についていくつかの調査が発表されました。ただ、数字を並べてみると、まるで別々の習慣の話をしているように見えます。片方は4割近く、もう片方は4人に1人。その差には、はっきりした理由があります。

車で帰省する人のあいだでは、用意する人が増えています

いちばん大きく報じられた数字から見ていきます。2026年のお盆に車で帰省する予定がある20〜50代の男女1,000名への調査(ソニー損害保険、2026年6月19日〜22日実施)では、お盆玉を「用意する」と答えた人が38.6%でした。残りの61.4%は「用意しない」です。

同じ調査主体は、過去にも同じ設問を置いています。2019年が32.3%、2020年が33.4%、そして今年が38.6%。発表元はこれを「上昇傾向」と説明しています。

ただし、この数字が指しているのは「車で帰省する予定がある20〜50代」です。帰省しない人、車を持たない人、60代以上の人は、最初から数えられていません。日本全体の4割が用意している、という意味ではありません。

3回の調査は対象条件の書き方も少しずつ違い、2020年は回答者が817名でした。厳密な定点観測ではない点も、あわせて押さえておくと読み違えずにすみます。

言葉を知っている人は、4人に1人のままです

もう一つの調査は、かなり違う絵を見せます。全国の20代〜60代以上の男女4,802名への事前調査(株式会社マルアイ、2026年7月15日発表)では、「お盆玉」という言葉を知っている人は26.2%でした。73.8%は「知らない」と答えています。

同じ設計の前年調査(同社、2025年7月15日発表、4,797名)では26.8%。この1年で、わずかに下がっています。言葉そのものが世の中にどれだけ届いているかは、ここ数年ほとんど動いていません。

言葉を知っていると答えた1,260名に「今年の夏あげるか」を聞いた結果は30.6%で、前年の31.6%からやはり微減でした。年代別に見ると、あげる予定のある人は20代と30代に多くなっています。これは「言葉を知っている人に限れば」という条件つきの数字です。

数字が食い違って見えるのは、数え方が違うからです

38.6%と26.2%。並べると別々のことを言っているように見えますが、どちらかが誤っているわけではありません。設問の作り方が、根本から違います。

ソニー損害保険の設問は、こう書かれています。「お盆の時期に親戚の子どもや孫などにあげるお小遣いである“お盆玉(おぼんだま)”を用意するか」。設問文の中に説明が入っているので、回答者は「お盆玉」という言葉を知らなくても答えられます。つまりこれは、言葉の認知度ではなく、行動の予定を数えた数字です。

一方のマルアイは、先に「お盆玉を知っているか」を聞き、知っていると答えた人にだけ「あげるか」を聞いています。こちらは、言葉を経由しないと数えられません。

同じ「お盆玉」という語について、片方は言葉を知らない人も数え、片方は知っている人しか数えない。二つの数字が並び立つのは、測っているものがそもそも違うからです。

名前を知らないまま、同じことをしている人がいます

言葉と行いを正面から分けて数えた調査が、一つあります。全国の55〜74歳の男女2,071名を対象にした調査(あおぞら銀行「シニアのリアル調査」、2019年6月7日〜8日実施)です。

ここでは、「お盆玉を知っていて、実際にあげたことがある」が7.7%、「言葉は知らないが、お盆の時期に子や孫に小遣いをあげたことがある」が6.9%と、別々に集計されています。後者の6.9%は、言葉を経由せずに数えられた人たちです。

どの調査も、言葉と行いのどちらを入口に置くかで、拾える人が変わります。数字が噛み合わない理由の一つが、ここにあります。

なお、この調査で言葉を知っていた人は41.5%でした。2016年の16.6%、2017年の28.9%から上がっています。ただしこれは2019年時点の数字で、このシリーズはその後お盆玉を扱っておらず、いま同じ世代がどうなっているかは、この系列からは分かりません。

「相場」と呼べる一つの数字は、まだありません

いちばん気になるのは金額かもしれません。ところが、ここでも数字は一つに揃いません。

ソニー損害保険の調査で「用意する」と答えた386名に金額を聞くと、子ども1人あたりの平均は9,977円でした(自由回答形式)。マルアイの調査で「あげる」と答えた327名では、金額は「1,000〜4,999円」が主流と報告されています。あおぞら銀行の2019年の調査では、子や孫がいるシニアにその年の予定額を聞いた平均が6,100円でした(「0円」の回答を除いた平均)。

そのまま並べて比べられる数字ではありません。聞き方が違います。ソニー損害保険は自由回答の平均で、2万円以上と答えた人が14.0%いて平均を押し上げています。マルアイは選択肢の中でいちばん多かった帯、あおぞら銀行は実績ではなく予定額です。

聞いた相手も違います。20〜50代の親世代と、55〜74歳の祖父母世代とでは、渡す立場そのものが違います。

「相場は◯円です」と書ける根拠は、どの調査にもありません。裏を返せば、この習慣はまだ一つの型に収まっていない、ということです。今年渡した額が多すぎたか少なすぎたかを判定できるものさしは、いまのところ存在しません。

数字を読むときの前提として、誰が数えたのかも書き添えておきます。マルアイはお盆玉袋を製造・販売する会社で、「お盆玉」の商標権者でもあります。このあと触れるフタバは、ぽち袋を企画・販売する会社です。ソニー損害保険とあおぞら銀行は、この習慣に直接の利害を持ちません。

どれが正しくてどれが誤りという話ではありません。それぞれが誰に何を聞いたのかを見るための、材料です。

税金のことが気にかかる場合もありますが、個人から受け取る、社会通念上相当と認められる範囲の贈答には贈与税がかからないとされています(国税庁 タックスアンサー No.4405、令和7年4月1日現在法令等)。家庭のあいだでやりとりされる程度の金額で、この話が問題になる場面は多くありません。

今年の夏、いちばん多かったのは「何もしない」でした

マルアイは同じ発表の中で、別の調査結果も出しています。全国の20代〜60代以上の男女600名に今年の夏の家族・親戚づきあいを聞いたところ、最も多い答えは「何もしない」の49.7%でした(2026年6月19日〜22日実施)。前年の46.4%から増えています。「会いに行く」は25.0%から21.7%へ減りました。

同じ600名への別の設問、今年の夏休みの過ごし方でも、「親族で集まる」は12.4%から10.0%へ、「国内旅行に行く」は20.7%から15.8%へ下がっています。車で帰省する人のあいだでは、用意する人が増えています。その一方で、そもそも集まらない夏のほうが増えている。どちらも同じ年に出た数字です。

自分や親戚に孫や子どもがいる200名への調査(フタバ株式会社、2025年7月3日〜4日実施)では、自分がお盆玉をもらった経験があると答えた人は17.0%で、「ない」が83.0%でした。身近に子どもや孫がいる人に絞っても、この数字です。

今年、何も渡さなかった家庭は、少数派ではありません。知らなかったわけでも、遅れているわけでもありません。

それでも落ち着かなさが残るとしたら、原因は金額ではないのかもしれません。渡す側と受け取る側とで、この習慣の見え方がそろっていないことがあります。共通のものさしが存在しない以上、その差は数字では埋まりません。埋まるとすれば、お互いが何を思っていたかを知ることのほうからです。

家族のやりとりが集まる場所を作っていると、こうした「毎年少しだけ迷うこと」ほど、どこにも書かれないまま消えていくのだと感じます。お盆玉は、その典型のような習慣なのかもしれません。

来年の夏、同じ問いがまた出てきます。そのとき手がかりになるのは、相場を書いた記事ではなく、去年うちがどうしたかという記録のほうです。誰に、いくら渡したのか。渡さなかったのか。

もらって困ったのか、うれしかったのか。まだ記憶が新しいうちに、家族が見られる場所へひと言だけ残しておく。渡した家も、渡さなかった家も、同じようにできることです。

本記事の数値は、2026年8月時点で公表されている各社の調査結果によります。調査ごとに対象者・調査時期・設問が異なるため、数字を横に並べて比較することはできません。

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