自治会費はPayPayで払える?

家計・物価memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
自治会費はPayPayで払える?

回覧板に「今年度から自治会費をスマホ決済でも受け付けます」と書かれていた。班長の当番が回ってきて、会費の集め方を役員から相談された。そんな場面で、何を確かめればよいのかを調べる家庭もあるはずです。

自治会費は、決済サービスによってはスマホで払えます。たとえばPayPayは2024年6月11日に全国の自治会・町内会との契約受付を始め、会費の集金と、自治会によるお祭りなどのイベントでの支払いに使えるようにしました。寄付には使えません。会員の家族として確かめたいのは、払い方の便利さよりも、自治会への加入が任意であること、名簿に載る家族の情報の扱い、そして払ったお金がどこに入るかの3つです。ここでは裁判例と、総務省・個人情報保護委員会・金融庁の資料をもとに、2026年10月時点の情報で整理します。

自治会費をスマホで払える仕組み

自治会がキャッシュレス決済を使う方法には、決済サービスと自治会が加盟店の契約を結ぶ方法と、自治会向けの地域交流アプリの集金機能を使う方法の2種類があります。

PayPayの自治会・町内会向けページによると、契約できるのは一定の住所を有する者が地域的な共同活動を行う団体で、契約者は自治会・町内会の会長に限られます。申し込みには規約・役員名簿・契約者の本人確認書類などを出し、同社の審査を受けます。支払いに使えるのは会費と自治会によるイベントでの物販・サービスで、寄付は対象外です。売上の入金先は、自治会名と代表者名を含む口座と案内されています。

総務省が2025年3月にまとめた「自治会等における地域活動のデジタル化ハンドブック」は、地域交流アプリの機能として会費集金・決済機能を紹介しています。クレジットカード、QRコード決済、コンビニ決済、銀行振込などに対応するアプリや、会員名簿への消込処理ができるアプリもあると説明しています。

手数料の扱いも確かめておきたい点です。PayPayの場合、手数料は受け取る自治会の側にかかり、制限プランの決済システム利用料は取引金額の1.98%(税別)で、取引金額から自動で差し引かれます。年会費3,600円をPayPayで受け取ると、約71円(税別)が自治会の受取額から引かれる計算です。この分を会費全体でどう負担するかは、自治会の総会や役員会で決めることになります。

自治会への加入は任意

自治会に入るか、入り続けるかは住民が決められます。最高裁判所は平成17年4月26日の判決で、県営住宅の入居者でつくる自治会について、強制加入団体ではなく、規約に退会を制限する規定もないという事情の下では、会員はいつでも一方的な意思表示で退会できると判断しました。

総務省の「地域コミュニティに関する研究会」の報告書(2022年4月)も、市町村長の認可を受けた地縁団体について、正当な理由がない限り区域の住民の加入を拒めない一方で、住民は加入・脱退を任意に行える私法人だと整理しています。認可を受けていない自治会は、いわゆる権利能力なき社団と解されています。

加入する世帯は減っています。同じ報告書によると、加入率を世帯単位で毎年把握している600市区町村の平均は、2010年度(平成22年度)の78.0%から2020年度(令和2年度)は71.7%に下がりました。加入率低下の要因として、高齢による役や会費の負担を理由にした退会の増加が挙がっています。総務省の実証事業の報告書には、自治会費を電子決済で払えるようになれば加入率の向上につながるのではないか、という参加自治体の感想も載っています。

総務省と市区町村のデジタル化の取り組み

国が進めている自治会のデジタル化の中心は、会費の決済よりも情報の伝達です。総務省が全1,741市区町村に行ったアンケートでは、自治会のデジタル化で有効と考える分野として、災害時の安否確認(72.1%)や電子回覧板(60.8%)を挙げた市区町村が多く、自治会費等の集金の電子決済は289団体(16.6%)にとどまりました。

総務省は2023年度に「自治会等における地域活動のデジタル化実証事業」を行い、2024年3月に成果報告書を公表しました。報告書は、決済手段の多様化を踏まえた自治会費のオンライン決済機能などにもデジタル化の余地があると記しています。

2025年3月のハンドブックは、導入費用の出し方として、市町村による導入、市町村の補助金、複数の自治会による共同導入、企業の協賛やふるさと納税などを使う官民連携、自治会の会費からの充当を挙げています。住んでいる市区町村に補助制度があるかは、地域振興やコミュニティの担当課で確かめられます。

デジタルに不慣れな会員への対応として、ハンドブックは対面でのフォローや説明会を勧めています。高齢の親が同じ自治会にいる家庭では、スマホ決済だけにせず現金や口座振込も残すのか、説明会はいつかを、役員に尋ねておくと安心です。

名簿と家族の個人情報

決済やアプリを始めるときは、会員の氏名や連絡先を集め直すことが多くなります。自治会も個人情報保護法の対象で、2017年5月30日以降は、5,000人分以下の個人情報を扱う自治会などの非営利団体にも法律が適用されています。

個人情報保護委員会の「自治会・同窓会等向け会員名簿を作るときの注意事項」(2023年12月発行)は、名簿づくりが禁止されたわけではないとしたうえで、次のルールを定めています。

場面 自治会が守るルール 家族が確かめること
情報を集める前 利用目的を決める 何のために集めるのか
記入・入力してもらうとき 用紙や画面に利用目的を示す 用紙・画面に目的が書かれているか
家族の情報を聞くとき 配偶者や子どもにも利用目的を知らせる 子どもの名前や年齢まで要るのか
名簿を会員に配るとき あらかじめ本人の同意を得る 載せたくない項目を伏せてもらえるか
名簿を業者に預けるとき 委託先を選び、監督する どの事業者が情報を扱うのか

同委員会は、犯罪者グループが不正に手に入れた名簿を使って、高齢者などを狙った強盗や特殊詐欺の標的を絞り込んでいるとみて、名簿の管理を呼びかけています。配られた名簿を家庭で保管するときも、他人に渡したり紛失したりしないよう注意します。同意が得られなかった項目は、マスキングなどの処理をしてから配る方法も示されています。

払ったお金の行き先と不正利用への備え

スマホで払う前に、お金がどの口座に入るのかを確かめます。送金サービスを営む資金移動業は、資金決済法第37条により内閣総理大臣の登録を受けた者が営める業務で、金融庁は登録業者の一覧を公表しています。会費の受け取り先が自治会名義の加盟店なのか、役員個人のアカウントなのかは、自治会の会計報告の確かめやすさにも関わります。

決済アプリと銀行口座を連携させる場合は、口座の明細も見ておきます。金融庁は2020年、不正に手に入れた口座情報でキャッシュレス決済のアカウントを作り、銀行口座から預金を引き出す事案が多く起きたとして注意を呼びかけました。身に覚えのない取引があれば、取引先の銀行か決済サービス事業者に相談するよう案内しています。

当番で集金を担う世帯は、受け取った記録を残すことと、自治会の口座や加盟店の仕組みを使うことを役員と確認しておくと、後で会計を説明しやすくなります。

名簿が詐欺の標的探しに使われることもあります。家族で決めておきたい電話の受け方は、次の記事にまとめています。

出典

よくある質問

自治会費をスマホ決済で払うと、会員が手数料を払うのですか?
PayPayの場合、決済システム利用料は加盟店である自治会の受取額から自動で差し引かれます。会員が払う金額に上乗せするか、自治会の予算で吸収するかは、自治会ごとの決めごとです。
寄付や募金もスマホ決済で払えますか?
PayPayの自治会・町内会向けの契約では、寄付は支払いの対象外です。対象は会費と、自治会によるイベントでの物販・サービスに限られます。
自治会に入らなければ、会費を払う必要はありませんか?
自治会は強制加入の団体ではなく、最高裁判所の平成17年4月26日判決は、退会を制限する規約がないなどの事情の下で、会員はいつでも退会できると判断しました。会費は会員として負担するものなので、加入するかどうかとあわせて、自治会の規約で確かめます。
名簿に家族の携帯番号を載せたくないときは?
名簿を会員に配るには、あらかじめ本人の同意が必要です。個人情報保護委員会は、同意が得られなかった項目をマスキングしてから配る方法を例に挙げています。載せたくない項目は、記入するときに役員へ伝えます。
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