人間ドックは何歳から? — 協会けんぽの補助は35歳から、最高25,000円

会社から健診の案内が回ってきて、去年の結果票を引っぱり出す。項目の数が、年によって違う気がする。同僚は人間ドックを受けたと言っていたけれど、あれは自費なのか。何歳から受けるものなのか。
健診の対象年齢は、法律と保険者がそれぞれ別に決めています。そしてその一部が、2026年4月に動きました。いま自分が何を受けられることになっているのかを、確かめるところから始めます。
会社の健診がタダなのは、法律が事業者に払わせているからです
労働安全衛生法第66条第1項は、事業者に労働者への健康診断の実施を義務づけています。費用の扱いは、昭和47年9月18日の基発第602号という通達にあります。「法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること」。窓口でお金を払わないのは、福利厚生というより、法律が払う人を決めているからです。
人間ドックのほうは、健康保険が使えません。健康保険法第63条第1項が療養の給付の対象を「被保険者の疾病又は負傷に関しては」と定めていて、病気やけがを前提としない検査はここに入らないためです。日本人間ドック・予防医療学会も「健康保険を使用して、全身をチェックすることはできません」と説明しています。費用は原則として全額自己負担です。
35歳の健診だけ、項目を減らせません
定期健康診断の項目は、労働安全衛生規則第44条第1項に11号まで並んでいます。ただし同条第2項に続きがあり、一部の項目は「厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる」となっています。
その基準が平成10年労働省告示第88号です。省略できる人を、年齢で名指ししています。
| 項目 | 省略することができる者 |
|---|---|
| 身長の検査 | 二十歳以上の者 |
| 胸部エックス線検査 | 四十歳未満の者(二十歳、二十五歳、三十歳及び三十五歳の者を除く。)で、感染症法施行令・じん肺法に掲げる者に該当しないもの |
| 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査及び心電図検査 | 四十歳未満の者(三十五歳の者を除く。) |
34歳と36歳では血液検査と心電図を省略でき、35歳では省略できません。30代の健診が薄いという実感には、この告示の表という理由があります。
ただし条文は「省略することができる」であって、「省略しなければならない」ではありません。要件も「医師が必要でないと認めるとき」で、年齢だけで自動的に外れるわけではありません。34歳でも血液検査まで行う会社はあります。
2026年4月、協会けんぽが人間ドックに最高25,000円を出し始めました
保険者の側にも、別の区切りがあります。協会けんぽ(全国健康保険協会)は2026年度(令和8年度)から、被保険者向けの健診を組み替えました。
| 健診 | 対象(被保険者) | 自己負担・補助 |
|---|---|---|
| 一般健診(若年) | 20歳、25歳、30歳 | 自己負担 最高2,500円 |
| 一般健診 | 35歳〜74歳 | 自己負担 最高5,500円 |
| 人間ドック健診 | 35歳〜74歳 | 協会けんぽが最高25,000円を補助 |
対象年齢は、その年度中に達する年齢で数えます(2026年度は2026年4月2日〜2027年4月1日)。一般健診の自己負担の上限は、前年度の5,282円から5,500円に上がりました。受診間隔に制限はなく、対象年齢のあいだは毎年度受けられます。
協会けんぽの補助は年度内に一人1回です。人間ドック健診の補助を使った年度は、生活習慣病予防健診の補助を使えません。会社の健診に人間ドックを足すのではなく、その年度はどちらかを選ぶ形です。
年齢早見表を見ると、31歳から34歳までは補助の対象になる健診がひとつもありません(偶数年齢の女性の単独子宮頸がん検診を除く)。
金額はいずれも上限で、協会けんぽ自身が「自己負担額は最高額です。健診実施機関によって多少異なります」と注記しています。人間ドック健診の総額も機関ごとに違い、北海道支部は総額35,000円の場合に自己負担額10,000円という計算例を挙げています。人間ドックの費用相場を示す公的なデータは見当たらないため、総額は予約のときに機関へ確かめることになります。
ここまではすべて協会けんぽの話で、健保組合・共済組合・国民健康保険では対象年齢も補助額も違います。保険証(資格情報のお知らせ)にある保険者の名前から、その保険者のサイトを確かめるのが確実です。健保組合には、加入者が横断して調べられる一般向けの窓口がないため、組合名から個別に当たることになります。
同じ家に住んでいても、使える枠は働き方で違います
協会けんぽの被保険者が20歳から枠を持つ一方で、扶養に入っている配偶者が対象になるのは40歳からです。根拠は高齢者の医療の確保に関する法律第20条で、保険者は「四十歳以上の加入者」に特定健康診査を行うものとされています。上限の74歳は条文ではなく、省令と実務によるものです。
同じ法律の第21条は、加入者が労働安全衛生法などにもとづく健康診断を受けた場合、保険者は特定健康診査を行ったものとする、としています。働いている側は会社の健診がこれを兼ねる。会社の健診がない扶養側には、保険者が直接受診券を送る。枠の形が違うのは、ここから来ています。
協会けんぽの場合、受診券(セット券)は例年4月ごろ被保険者の自宅に送られます。補助の上限は基本的な健診で7,150円。東京支部は、集合契約Aタイプの機関なら窓口での支払いが0円になると案内しています。
この年齢差は2026年度のものです。協会けんぽは「令和9年度からは、これらの健診がすべて被扶養者も対象となります」と告知しています。
市区町村のがん検診は別の系統です。国の指針は、子宮頸がん検診を20歳以上の女性、肺がん・大腸がん・乳がん検診を40歳以上、胃がん検診を50歳以上(胃部エックス線検査は当分の間40歳以上でも差し支えない)としています。2026年4月からは、40歳と50歳を対象に指針のがん検診を同時に行う「総合がん検診」も加わりました。
ただし、がん検診の実施は健康増進法第19条の2にもとづく市区町村の努力義務です。対象年齢も回数も自己負担額も自治体ごとに違うので、最後の答えは住んでいる市区町村の案内にあります。
検査を足すかどうかは、国の指針も本人に預けています
がん検診指針は、対象者に知らせることとして、検診の利益と不利益を並べています。利益の例は「検診受診後のがんの早期発見・早期治療による死亡率減少効果があること」など。不利益の例は「偽陰性、偽陽性(また、その判定結果を受けて不安を生じることや、結果として不必要な精密検査を受ける場合があること。)、過剰診断、偶発症等」です。
そのうえで指針は、「がん検診の対象者自身が、がん検診の利益・不利益を考慮した上で受診を検討することが望ましい」としています。市区町村に向けた国の文書が、受けるかどうかの判断を本人に置いています。
協会けんぽの補助を使って人間ドック健診を受ける場合は、必須項目を原則すべて受ける必要があり、10時間以上絶食した状態での血液検査、胃部検査、便検査が含まれます。直前に食事をとった場合や、自己都合で受けられない項目がある場合は補助を使えません。検査の内容については、健診機関や医師に相談してください。
人間ドックの費用は、原則として医療費控除の対象外です
国税庁の質疑応答事例「人間ドックの費用」は、「いわゆる人間ドックその他の健康診断は疾病の治療を伴うものではないので、その人間ドック等の費用は、医療費控除の対象とはなりません」としています。
例外は、条件つきで1つだけ置かれています。「健康診断の結果、重大な疾病が発見され、引き続きその疾病の治療を行った場合には、(略)その健康診断のための費用も、医療費控除の対象に含まれます(所得税基本通達73-4)」。何かが見つかれば控除できる、という話ではありません。
結果票の側でも、先に決まっていることがあります。2027年4月1日から、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第89号)により、血清クレアチニン検査が定期健康診断の法定項目に加わり、喀痰検査が外れ、肝機能検査の酵素名がGOT・GPT・γ-GTPからAST・ALT・γ-GTに変わります。協会けんぽの一般健診には血清クレアチニン検査がすでに入っているので、生活習慣病予防健診を受けてきた人にとっては新しく測る項目ではなく、結果票の並びと名前のほうが変わります。
家族間のコミュニケーションをテーマにしたサービスを作っていると、年に一度しか来ない手続きほど、誰かが覚えているのを前提に流れていく場面に出会います。今年度、自分と配偶者はそれぞれ何を受けられることになっているのか。保険証に書かれた保険者の名前を1つ調べれば、その年の答えは出ます。受けるかどうかを決めるのは、そのあとの話です。
本記事は2026年9月時点の情報によります。健診の対象年齢や補助額は保険者・市区町村によって異なり、変更されることがあります。ご自身の保険者と市区町村の案内でご確認ください。
出典
- 労働安全衛生法 第66条/労働安全衛生規則 第44条(e-Gov法令検索、確認日2026-09-15)
- 昭和47年9月18日 基発第602号「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」— 厚生労働省 法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2043&dataType=1&pageNo=1(確認日2026-09-15)
- 平成10年労働省告示第88号「労働安全衛生規則第四十四条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」— 安全衛生情報センター https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-9-1-0.htm(確認日2026-09-15)
- 基発0428第9号(令和8年4月28日)「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」— 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001700009.pdf(確認日2026-09-15)
- 健康保険法 第63条/高齢者の医療の確保に関する法律 第20条・第21条/健康増進法 第19条の2(e-Gov法令検索、確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会「健診について(被保険者)」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/health_promotion/health_checkups/insured/001/index.html(確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会「新しい健診のお知らせ」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026kenshin/(確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会「令和8年度 生活習慣病予防健診等対象者年齢早見表」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/2026nennrei.pdf(確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会「被扶養者(ご家族)の方の健診」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/health_promotion/health_checkups/dependents/001/(確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会 よくあるご質問「健診について」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/health_checkups/index.html(確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会 北海道支部「人間ドック健診のご案内(令和8年度より開始)」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/hokkaido/health_guidance/015/index.html(確認日2026-09-15)
- 全国健康保険協会 東京支部「特定健康診査(家族)のご案内」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tokyo/cat040/6180-15949/(確認日2026-09-15)
- 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(令和7年12月24日一部改正、令和8年4月1日適用)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001642974.pdf(確認日2026-09-15)
- 厚生労働省「がん検診」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html(確認日2026-09-15)
- 厚生労働省「特定健診・特定保健指導について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html(確認日2026-09-15)
- 国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/09.htm(令和7年8月1日現在の法令・通達等/確認日2026-09-15)
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm(令和8年4月1日現在法令等/確認日2026-09-15)
- 日本人間ドック・予防医療学会「人間ドックQ&A」https://www.ningen-dock.jp/public_faq/(確認日2026-09-15)
よくある質問
- 人間ドックは何歳から受けられますか
- 年齢の下限を決めているのは、加入している保険者です。協会けんぽの場合、2026年度から人間ドック健診の補助対象が35歳〜74歳の被保険者になりました(75歳の誕生日の前日まで)。健保組合・共済組合・国民健康保険では対象年齢も補助額も異なるため、保険証に書かれた保険者名からその保険者の案内を確かめてください。補助を使わず全額自己負担で受ける場合は、この年齢の線とは別の話になります。
- 会社の健診とは別に、人間ドックの補助も使えますか
- 協会けんぽの補助は、年度内(4月から翌年3月)に一人1回です。人間ドック健診と生活習慣病予防健診は、どちらか一方を選ぶことになります。両方に補助を使うことはできません。
- 扶養に入っている配偶者は健診を受けられますか
- 協会けんぽの被扶養者は、特定健康診査の対象が40歳〜74歳です。受診券(セット券)は例年4月ごろ、被保険者の自宅に送られます。補助の上限は基本的な健診で7,150円、詳細な健診を含む場合で10,550円。東京支部の案内では、集合契約Aタイプの機関なら窓口の支払いが0円になります。受診券が届いていない場合は、申請書で交付を申請できます。なお協会けんぽは、令和9年度から被扶養者もこれらの健診すべての対象になると告知しています。
- 人間ドックの費用は医療費控除の対象になりますか
- 原則として対象外です。国税庁は、人間ドックその他の健康診断は疾病の治療を伴わないため医療費控除の対象にならないとしています。例外は「健康診断の結果、重大な疾病が発見され、引き続きその疾病の治療を行った場合」で、このときはその健康診断の費用も控除の対象に含まれます。
- 人間ドックの費用はいくらくらいかかりますか
- 公的なデータで相場を示すことはできません。学会も協会けんぽも金額のレンジを公表しておらず、協会けんぽの実施機関一覧にも金額の記載がありません。公的な資料で確認できる金額の例は、協会けんぽ北海道支部が挙げている「総額35,000円の場合、自己負担額10,000円」という計算例です。総額は健診実施機関ごとに違うため、予約時に機関へ確認することになります。
memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

