セールの「通常価格」は、セール前に売っていた値段!? — 「50%OFF」の元の値段には、国の目安がある

夜、子どもを寝かしつけたあとにスマホを開くと、「スーパーSALE開始」の通知が届いていました。カートに入れっぱなしだったおむつと洗剤の横に、「50%OFF」の赤い文字と「ポイント10倍」のバナーが並んでいます。買うなら今なのか、普段の値段と変わらないのか。画面の前で数分止まってしまう夜が年に何度かあります。
総務省の家計消費状況調査によると、2025年平均で二人以上の世帯の56.9%がネットショッピングを利用しました。支出は1世帯あたり月26,928円です。セールで買うかどうかは、毎月の家計の話です。
「50%OFF」の50%は、元の値段と比べた数字です。その元の値段の決まり方には国の目安があり、各社も自社の定義を公開しています。
「通常価格」の目安は、8週間の過半・通算2週間以上・最後の販売から2週間以内
「通常価格12,000円のところ9,500円」のように、元の値段と売値を並べる表示を二重価格表示と呼びます。景品表示法のもとで消費者庁が示す考え方では、比べる相手の値段(比較対照価格)に過去の販売価格、将来の販売価格、メーカー希望小売価格、他店の価格の4種類があります。
「過去の販売価格」型には目安があります。セール開始からさかのぼって8週間のうち、その値段で売っていた期間が過半を占めていれば、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよい、という考え方です。ただし、その値段で売った期間が通算2週間に満たない場合や、最後に売った日から2週間以上たっている場合は、通常価格とはいえないとされています。
資料には不当表示のおそれがある例も載っています。「当店通常価格12,000円を9,500円」と表示しているが、過去8週間のうち12,000円だったのは最初の2週間だけだった場合。比較のための実績作りとして一時的に高い値段をつけた場合も、「販売されていた」とはみられません。
「セール後は元に戻ります」と将来の値段を比較対照にする表示には、2020年12月に執行方針が出ています。セール後にその値段で売る「合理的かつ確実に実施される販売計画」を、セール期間を通じて持っている必要があるとされました。セール後にその値段で売らなかった場合は、原則として表示を始めた時点から有利誤認表示(実際より有利に見せる不当表示)として扱われます。
資料はこれを一般的な考え方として示し、個々の事案ごとに検討されると書いています。8週間に1日足りなければ即違法、という話ではありません。それでも「通常価格」は自由に名乗れる言葉ではなく、直近の販売実態かセール後の確実な計画のどちらかの裏付けが要る、というのが国の考え方です。
2025年に、「通常価格」の根拠が問われた2件
2025年9月12日、消費者庁は株式会社ジャパネットたかたに対し、おせち商品の表示について措置命令(行政処分)を出しました。自社通販サイトで「ジャパネット通常価格29,980円が」「値引き後価格19,980円」と表示していたものです。消費者庁は、この通常価格はセール後に適用される将来の販売価格と受け取れる表示だったが、セール後にその価格で売る合理的かつ確実な販売計画はなかった、と判断しました。
同社は、2022年と2023年はキャンペーン後に通常価格で販売した実績があり、2024年も同じ計画だったが期間内に完売したと説明しています。表示は有利誤認に該当しないとして、同年9月25日に行政不服審査法に基づく審査請求を提出しました。2026年9月時点では、審査請求中とみられます。
同年11月28日には、株式会社ツルハグループマーチャンダイジングに対して措置命令が出ました。自社EC「ツルハグループe-shop本店」の79商品について、「特別価格:498円(税込) 通常価格:612円(税込)」などと表示していたものです。消費者庁は、この通常価格はサイト上で通常販売している価格と受け取れる表示だったが、実際には最近相当期間にわたって販売された実績のない価格だった、と認定しました。
2件は個別の事案で、セール前に値上げする慣行が業界に広くあることを示す資料はありません。読み取れるのは、「通常価格」には根拠が求められ、なければ行政処分の対象になる、という制度が動いていることまでです。
Amazonの「過去価格」は、直近90日間の中央値
Amazon.co.jpは「表示価格について」というヘルプページで、割引率の分母を定義しています。「参考価格」は、メーカーなどがあらかじめ公表している希望小売価格です。
「過去価格」は、販売主体を問わず、直近90日間に販売実績がある販売価格の中央値です。期間限定のセール価格、クーポン適用後の価格、法人価格などは、この中央値の計算から除かれます。
商品ページに出る「30日間での最低価格」のバッジは、算出方法が別です。直近30日間にサイト上で提示された販売価格の最安値以下であることを意味し、こちらもセール中の価格や法人価格は除いて計算されます。同じページに並ぶ「◯%OFF」と「30日間での最低価格」は比べている相手も期間も違う数字です。
ポイント「10倍」は、分母と上限と期限で決まる
楽天市場の買いまわり(お買い物マラソン・スーパーSALE)の公式ガイドによると、対象は1店舗で税込1,000円以上の買い物で、送料やラッピング料はこの金額に含みません。倍率は買った店舗の数で上がり、最大10倍です。特典分は税抜・送料別・クーポン適用後の金額に対して付きます。
獲得できる上限は開催回ごとに決まっていて、2026年9月のスーパーSALEでは7,000ポイントと公式ページに明記されていました。上限に達したあとは、何店舗で買っても増えません。
特典分は期間限定ポイントで、2026年9月回は付与が10月15日頃、有効期限は11月30日です。期限を過ぎた分は戻りません。楽天の常設のポイントアップ制度「SPU」(2026年7月1日改定)も税抜のお買い物金額が分母で、サービスごとに月間の獲得上限があります。
Yahoo!ショッピングでは、2025年2月1日の購入分から、付与されるのが「PayPayポイント(期間限定)」に統一されました。有効期限は付与翌日から最短30日以降の月末で、使えるのはYahoo!ショッピングやLOHACOなどLINEヤフーの一部サービスに限られます。街のPayPay加盟店では使えません。
「ポイント10倍」を「10%引き」と読み替えることはできません。分母に税や送料が入るかどうかが各社で違い、上限があり、付与まで1か月以上あき、期間限定で使い先も限られるからです。倍率に分母と上限と期限を添えてはじめて、金額になります。
衝動買いのきっかけの1位は、「大型セールイベント」でした
オールアバウトとNTTドコモが共同運営するサイト「イチオシ」が、2026年3〜4月に482人へインターネット調査を行っています。衝動買いをすると答えた410人のうち65.8%が、きっかけに「大型セールイベント」を挙げました。同じ調査で、「計画買いのほうが満足度が高い」と答えた人は71.8%でした。482人の回答で全体の傾向とまでは言えませんが、セールの通知で買う行動が動く人が少なくないことは読み取れます。
消費者庁が2025年12月から2026年1月に1,200人に行った調査もあります。過去12か月にネット通販で経験した手法で最も多かったのは、「残りわずか」「カウントダウン」などの「緊急性の強調」で19.3%でした。手法の類型を尋ねた調査で、特定のECを指してはいません。
割引率が正しいかどうかと、わが家にとって買う値段かどうかは別の問いです。国の目安は「通常価格」に根拠を求めますが、その値段で買うべきかまでは決めてくれません。
「この値段なら買う」を、セールの前に家族で決めておく
セール中に判断しようとすると、比べる相手は画面の「通常価格」になります。セールの前に決めておけば、比べる相手はわが家の基準になります。
おむつなら1枚あたり何円まで、洗剤の詰め替えなら1回分あたり何円まで。普段の値段を一度書き出しておくと、「50%OFF」がいつもの値段と同じなのか、本当に安いのかが数秒で分かります。買い物リストに基準価格を添えておけば、通知が来た夜に家族で同じ数字を見て決められます。ポイントの付与日と失効日もカレンダーに入れておくと、期限切れを防げます。
家族の間のやりとりをテーマにしたサービスを作っていて、感じることがあります。こうした「わが家の基準」は決めた人の頭の中にだけあると、次のセールまで残りません。家族で見える場所にあれば、セールの通知は「今すぐ決める」ものから「リストと照らして決める」ものに変わります。
次のセールの通知が届いたとき、画面の割引率より先に、わが家のリストを開く。順番を一つ変えるだけで、画面の前で止まっていた数分は、家族で決める数分に変わります。
本記事は2026年9月時点の公式情報によります。各社のポイント条件や上限、有効期限は開催回ごとに異なり、予告なく変更されることがあります。購入前に各社の公式ガイドをご確認ください。
よくある質問
- セール前に一時的に高い値段をつけてから割引すると違法になるのか?
- 比較のための実績作りとして高い値段をつけた場合は「販売されていた」とはみられません。セール開始から8週間のうち、その値段で売った期間が過半を占めることが条件です。
- Amazonの『過去価格』はどう計算されているのか?
- 直近90日間に販売実績がある価格の中央値です。期間限定のセール価格やクーポン適用後の価格は除いて計算されます。
- セール後に表示された値段で売らなかった場合は違法になるのか?
- セール期間を通じて「その値段で売る合理的かつ確実な販売計画」がなかった場合、表示を始めた時点から有利誤認表示として扱われます。
memStock編集部
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