家庭の食中毒予防、子どもと高齢者の注意点

育児・子どもの安全memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
家庭の食中毒予防、子どもと高齢者の注意点

暑い日に子どものお弁当を持たせるとき、作り置きのカレーを翌日に温め直すとき、家族の誰かが夜中に吐いたとき。台所で「これは大丈夫だろうか」と迷う場面は、季節を問わずやってきます。

食中毒は飲食店だけで起きるものではありません。厚生労働省は、家庭で起きた食中毒は症状が軽かったり患者が1〜2人だったりするため、風邪や寝冷えと思われて見過ごされやすいと注意を呼びかけています。2025年の統計と、厚生労働省・農林水産省・消費者庁の資料をもとに、家庭でできる予防の手順と、赤ちゃんや高齢の家族がいる家で気をつけることを整理しました(2026年10月時点の情報です)。

2025年の食中毒は1,172件、患者は前年の約1.7倍

厚生労働省の食中毒統計によると、2025年(令和7年)の食中毒は1,172件、患者24,727人、死者2人でした。2024年は1,037件・14,229人で、患者数は約1.7倍に増えています。

病因物質別に見ると、件数が最も多かったのはノロウイルスの462件で、患者は18,566人と全体の75.1%を占めました。続いて魚介類に寄生するアニサキスが280件、鶏肉などが原因になりやすいカンピロバクターが220件(患者1,226人)です。重い合併症を起こすことがある腸管出血性大腸菌は10件(患者362人)でした。

原因施設は飲食店が56.1%と最多ですが、統計に表れるのは保健所が食中毒と判断して報告した事例です。家庭で1人だけおなかを壊したような場合は、食中毒として数えられていないこともあります。農林水産省は、細菌による食中毒は気温や湿度が高い時期に増え、冬はノロウイルスなどのウイルス性の食中毒が見られるとして、年間を通した予防を呼びかけています。

買い物と保存は「温度を上げない」

厚生労働省の家庭向けの食中毒予防の資料(買い物・保存・下準備・調理・食事・残った食品の6項目)は、1997年に公表された資料ですが、現在も同省の食中毒のページでリーフレットとして配布されています。食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」の三原則を、買い物から残り物の処理までの6つの場面に分けたものです。

ポイント1の「食品の購入」では、冷蔵や冷凍が必要な生鮮食品は買い物の最後にかごへ入れ、寄り道せずに持ち帰ります。肉や魚は汁が漏れないよう、ビニール袋にそれぞれ分けて包みます。

ポイント2の「家庭での保存」では、冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下に保つことがめやすです。細菌の多くは10℃で増え方がゆっくりになり、−15℃で増殖が止まりますが、死ぬわけではありません。詰め込みすぎると冷えにくくなるため、量は7割程度にとどめます。農林水産省は、あくまで目安としながら冷蔵室は4℃前後、冷凍室は−18℃以下が適温といわれていると紹介しており、温度計で確かめることを勧めています。

下準備と調理は「付けない」「十分に加熱する」

ポイント3の「下準備」では、生の肉・魚・卵を触った後に加えて、おむつ交換や動物に触った後、トイレの後にも手を洗います。生の肉や魚を切った包丁・まな板で、そのままサラダや果物を切るのは避け、洗ってから熱湯をかけて使います。冷凍食品を調理台に置いたまま解凍すると菌が増える場合があるため、解凍は冷蔵庫か電子レンジで行い、水を使うなら気密性のある容器に入れて流水で解凍します。冷凍と解凍を繰り返すのも避けます。

ポイント4の「調理」では、中心部の温度が75℃で1分間以上の加熱がめやすです。ハンバーグやメンチカツなど生のひき肉を使う料理は、外側が焼けていても中が生焼けのことがあるため、肉汁や断面の色を確かめます。

鶏肉はとくに注意が要ります。厚生労働省のQ&Aによると、カンピロバクターは数百個程度の少ない菌量でも感染し、潜伏期間は一般に1〜7日間とやや長めです。感染の数週間後に手足のまひなどを起こすギラン・バレー症候群を発症する場合があることも指摘されています。鶏の刺身やたたきなど、生や加熱不十分な鶏肉は「新鮮だから安全」とはいえません。

カキなどの二枚貝はノロウイルスを取り込んでいることがあり、汚染のおそれがある場合は中心部を85〜90℃で90秒以上加熱することが望ましいと示されています。

食卓と残り物は「増やさない」

ポイント5の「食事」では、温かい料理は65℃以上、冷やして食べる料理は10℃以下に保つのがめやすです。厚生労働省は、O157は室温でも15〜20分で2倍に増えると例を挙げ、調理前後の食品を室温に長く置かないよう求めています。

ポイント6の「残った食品」は、浅い容器に小分けして早く冷やし、温め直すときは75℃以上、味噌汁やスープは沸騰するまで加熱します。大量に作ったカレーや煮物を鍋のまま置いておくと、冷める過程でウェルシュ菌が急に増えることがあると農林水産省は説明しています。時間が経ちすぎたもの、少しでも怪しいと思ったものは、口に入れずに捨てます。

お弁当は、ご飯やおかずを冷ましてから詰めます。温かいまま詰めると蒸気がこもり、傷みの原因になります。卵焼きは完全に固まるまで加熱し、前日の残り物は詰める直前に十分再加熱します。長時間持ち歩くときは保冷剤や保冷バッグを使います。

赤ちゃんと高齢の家族で気をつけること

1歳未満の赤ちゃんには、はちみつと、はちみつ入りの飲料やお菓子を与えません。腸内環境が整っていない赤ちゃんでは、はちみつに混じったボツリヌス菌が腸内で増えて乳児ボツリヌス症を起こすことがあります。ボツリヌス菌(芽胞)の耐熱性は120℃・4分とされ、通常の加熱や調理では死にません。国内では保健所が食中毒として報告した事例が1986年以降3例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例が1999年以降16例あります。1歳以上の人にとっては、はちみつはリスクの高い食品ではありません。

粉ミルクを作るときは70℃以上のお湯を使い、調乳後2時間以内に飲まなかった分は捨てます。母乳を冷蔵庫で保存するなら24時間以内に飲ませ、離乳食の期間は刺身などの生ものを控えるよう、農林水産省は勧めています。妊娠中の人に向けては、厚生労働省がリステリア菌による食中毒のパンフレットを出しています。

腸管出血性大腸菌に感染した場合、症状がある人の6〜7%が溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重い合併症を起こすといわれ、子どもと高齢者で起こりやすいと説明されています。厚生労働省は、乳幼児や高齢者には加熱が十分でない食肉を食べさせないほうが安全だとしています。農林水産省は高齢の人向けに、体力が落ちているときは寿司や刺身、生卵を避けることを勧めています。

家族が吐いたときの片付け方

ノロウイルスによる胃腸炎は、11月頃から2月の間に乳幼児や高齢者の間で流行します。潜伏期間は24〜48時間で、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛が1〜2日続いたあと治るのが一般的です。効く抗ウイルス薬はないため、乳幼児や高齢者は脱水にならないよう水分と栄養の補給を心がけます。症状がなくなっても、通常1週間程度、長いときは1か月程度ウイルスの排泄が続くことがあります。

吐いた物や便を片付けるときは、使い捨ての手袋とマスク、エプロンを着け、ペーパータオルなどで静かに拭き取ります。その後、家庭用の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を塩素濃度約200ppmに薄めた液で浸すように拭き、水拭きします。拭き取りに使ったペーパーやおむつはビニール袋に入れて密閉します。消毒用アルコールは石けんと流水の手洗いの代わりにはならないと説明されています。汚れた衣類は下洗いしてから、85℃・1分間以上の熱水洗濯か塩素系漂白剤で消毒します。

腸管出血性大腸菌の患者がいる場合は、乳幼児が患者の後に入浴しないようにし、バスタオルは共用しません。下痢や嘔吐が続く赤ちゃんは早めに受診し、便の付いたおむつを持っていくと参考になる場合があります。

子どもの食事や食習慣そのものについて考えたいときは、次の記事も参考にしてください。

出典

よくある質問

冷蔵庫の温度は何℃にすればいいですか?
厚生労働省の同じ資料では、冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下に保つことがめやすです。農林水産省は目安として冷蔵室4℃前後、冷凍室−18℃以下を紹介しています。低温でも菌は死なないため、冷蔵した料理も早めに食べきります。
はちみつを加熱した料理なら赤ちゃんに食べさせてもいいですか?
食べさせないでください。ボツリヌス菌(芽胞)は120℃・4分の加熱に耐えるとされ、通常の加熱や調理では死にません。厚生労働省と消費者庁は、1歳未満の赤ちゃんにはちみつ入りの飲料やお菓子も与えないよう呼びかけています。
鶏肉はどのくらい加熱すればいいですか?
中心部を75℃以上で1分間以上加熱するのがめやすです。鶏肉はカンピロバクターに汚染されていることが多く、厚生労働省は生や加熱不十分な鶏肉を食べない、食べさせないよう求めています。生肉を切ったまな板や包丁は、ほかの食材に使う前に洗います。
ノロウイルスの消毒にアルコールは使えますか?
厚生労働省のQ&Aでは、消毒用エタノールは石けんと流水の手洗いの代わりにはならないと書かれています。ノロウイルスを失活させる方法としては、次亜塩素酸ナトリウムや加熱が挙げられています。手は石けんを泡立てて洗い、流水で十分にすすぎます。
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