森林環境税とは?住民税に年1,000円

住民税の決定通知書を夫婦で見比べていると、市民税や県民税と並んで「森林環境税」という欄があります。森林環境税は、2024年度から国内に住所のある個人に1人年1,000円が課される国税で、市区町村が個人住民税の均等割と一緒に集めています。共働きで夫婦とも住民税を納めている家庭なら、世帯で年2,000円です。ただし、同じ時期に住民税の均等割に上乗せされていた防災のための臨時の引き上げが終わったため、多くの地域で住民税と合わせた負担額は2023年度までと変わっていません。
この記事では、総務省と林野庁の資料をもとに、森林環境税の仕組みと、集めた税が森林環境譲与税として配られ使われるまでを、2026年10月時点で整理します。
誰がいくら払うのか
総務省によると、森林環境税は国内に住所を有する個人に課される国税で、市区町村が個人住民税の均等割と併せて1人年額1,000円を課税します。税の種類は国税ですが、納税者が別に申告することはなく、住民税と一緒に納めます。
課税されない人もいます。横浜市は、森林環境税の非課税の基準は個人住民税の均等割の非課税基準と同じだと案内しています。たとえば生活保護の生活扶助を受けている人や、前年の合計所得金額が一定以下の人です。所得のない子どものように、住民税の均等割がかからない家族には、森林環境税もかかりません。
| 世帯の例 | 森林環境税(年額) |
|---|---|
| 夫婦とも住民税の均等割を納めている | 2,000円 |
| 夫婦の一方だけが均等割を納めている | 1,000円 |
| 子ども(所得なし) | かからない |
税収は全額が森林環境譲与税として都道府県と市区町村に配られます。林野庁と総務省のパンフレットでは、納税義務者は約6,200万人、年間の総額は約600億円と記載されています。
住民税と合わせた額は2023年度までと同じ
森林環境税が始まっても、住民税の通知書に書かれた合計額が増えていない家庭は少なくありません。東日本大震災を教訓に全国で行う防災施策の財源として、2014年度から2023年度までの10年間、個人住民税の均等割が市町村民税と道府県民税でそれぞれ500円、合わせて1,000円引き上げられていたためです。この引き上げが終わった2024年度に、入れ替わる形で森林環境税の1,000円が始まりました。
横浜市の例では、次のとおり1人あたりの合計は6,200円で変わっていません。
| 横浜市の均等割など(1人あたり年額) | 2023年度まで | 2024年度から |
|---|---|---|
| 市民税の均等割 | 4,400円(500円の引き上げを含む) | 3,900円 |
| 県民税の均等割 | 1,800円(500円の引き上げを含む) | 1,300円 |
| 森林環境税 | ― | 1,000円 |
| 合計 | 6,200円 | 6,200円 |
均等割の標準の税額は市町村民税3,000円、道府県民税1,000円ですが、横浜市のように独自に上乗せしている自治体もあります。住んでいる地域の内訳は、市区町村の住民税のページか決定通知書で確かめられます。
なぜ新しい税ができたのか
林野庁は、森林には地球温暖化の防止だけでなく、国土の保全や水源の涵養など、国民に広く恩恵を与える働きがあると説明しています。その一方で、所有者や境界が分からない森林の増加や、林業の担い手の不足が大きな課題になっています。林野庁と総務省のパンフレットによると、日本の森林は国土の約7割を占め、日本のCO2吸収量の9割以上を森林が吸収しています。
こうした状況を受けて、2018年5月に森林経営管理法が成立し、市町村が私有林の経営管理を受託する「森林経営管理制度」が2019年度に始まりました。その財源を安定して確保するため、2019年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立しています。パリ協定のもとでの温室効果ガスの排出削減目標の達成や、災害の防止も目的に挙げられています。
集めた税は森林環境譲与税として配られる
森林環境税の流れは、納税者が市区町村に納め、都道府県を通じて国に払い込まれ、国から森林環境譲与税として都道府県と市区町村に配られる、という順です。森林整備が喫緊の課題であることから、譲与税は課税開始より前の2019年度から配られていました。
配分の割合は、市町村9割、都道府県1割です。各自治体への配分は、私有林人工林面積、林業就業者数、人口の3つの基準で決まります。2024年度の税制改正で、森林整備をさらに進めるため、私有林人工林面積の割合が引き上げられ、人口の割合が引き下げられました。
| 譲与基準 | 2023年度分まで | 2024年度分から |
|---|---|---|
| 私有林人工林面積 | 50% | 55% |
| 林業就業者数 | 20% | 20% |
| 人口 | 30% | 25% |
私有林人工林面積は、林野率が85%以上の市町村では1.5倍、75%以上85%未満では1.3倍に割り増して計算します。2024年度の譲与額は総額629億円(市町村566億円、都道府県63億円)で、市町村1つあたりの平均は3,251万円でした。私有林人工林が1,000ha以上の市町村の平均は4,861万円、1,000ha未満の市町村の平均は1,193万円で、森林の多い自治体ほど多く配られています。
| 都道府県(2024年度) | 譲与額の合計(都道府県分と市区町村分) |
|---|---|
| 北海道 | 約48.96億円 |
| 高知県 | 約22.66億円 |
| 東京都 | 約20.45億円 |
| 大阪府 | 約12.96億円 |
| 香川県 | 約2.29億円 |
人口の多い東京都にも人口の基準で配られますが、譲与額の合計は高知県が東京都を上回っています。
何に使われたかは市区町村で確かめられる
森林環境譲与税の使い道は、法律で決まっています。市町村は間伐などの森林の整備と、人材の育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発などの森林整備の促進に、都道府県は森林整備を行う市町村の支援などに充てます。
総務省と林野庁のまとめでは、2024年度に使われた額は市町村と都道府県を合わせて520億円で、約6割が間伐などの森林整備関係でした。間伐などの森林整備は約6.4万haで、2019年度の10倍以上です。使い道の内訳は次のとおりです。
| 使い道(2024年度、市町村と都道府県の合計) | 活用額 | 取り組んだ市町村の割合 |
|---|---|---|
| 間伐などの森林整備関係 | 317億円 | 82% |
| 人材の育成・担い手の確保 | 78億円 | 41% |
| 木材利用・普及啓発 | 126億円 | 63% |
一方で、譲与税をその年度に使わず全額を基金に積み立てるなどした市町村も、全体の7%ありました。2019年度の38%からは減っていますが、私有林人工林が1,000ha未満の市町村に限ると15%です。
使い道は住民が確かめられます。法律により、市町村と都道府県は決算を議会の認定に付したとき、譲与税の使い道をインターネットなどで公表しなければなりません。林野庁は全国の自治体の公表ページの一覧を載せています。森林の少ない都市部では、横浜市のように学校や公園などの施設で国産木材を使う費用に充てている例もあります。
住民税の通知書のほかの欄の読み方と、夫婦で見比べたい項目は、こちらの記事にまとめています。
出典
- 森林環境税及び森林環境譲与税について(総務省) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/04000067.html
- 個人住民税(総務省) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
- 森林環境税及び森林環境譲与税(林野庁) https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html
- 令和6年度における森林環境譲与税の取組状況について(総務省・林野庁) https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/attach/pdf/kankyouzei_jouyozei-23.pdf
- 令和6年度 税制改正事項(林野関係)の概要(林野庁) https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/kinyu/attach/pdf/index-13.pdf
- 森林を活かすしくみ(林野庁・総務省) https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/attach/pdf/sinrinkeieikanriseido-16.pdf
- 個人住民税の税額通知書の様式(市町村民税・道府県民税・森林環境税決定の明細)(総務省) https://www.soumu.go.jp/main_content/000873870.pdf
- 令和6年度から森林環境税の課税が始まります(横浜市) https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/kojin-shiminzei-kenminzei/kojin-shiminzei-shosai/default202310132114.html
よくある質問
- 森林環境税は、住民税とは別に納付書が届くのですか
- 別には届きません。森林環境税は国税ですが、市区町村が個人住民税の均等割と併せて課税し、住民税と一緒に納めます。決定通知書では、市町村民税や道府県民税と並んで森林環境税の欄に1,000円と書かれます。
- 住民税が非課税の人も森林環境税を払いますか
- 払いません。横浜市は、森林環境税の非課税基準は個人住民税の均等割の非課税基準と同じだと案内しています。均等割が非課税なら、森林環境税もかかりません。
- 2024年度から住民税が1,000円上がったのですか
- 多くの地域では、合計額は変わっていません。2014年度から2023年度まで、防災施策の財源として均等割が合わせて1,000円引き上げられていました。その引き上げが終わり、同じ額の森林環境税が始まったためです。横浜市の例では、2023年度までも2024年度からも1人6,200円です。
- 法人も森林環境税を払いますか
- 課税の対象は、国内に住所を有する個人です。総務省の説明でも、森林環境税は国内に住所を有する個人に課される国税と説明されており、法人は対象に含まれていません。
memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。
関連記事
お金の話給食費の月5,200円は、家庭に配られる額ではない
国が示した月5,200円は、家庭に配られるお金ではなく、自治体への支援の上限額です。2026年4月に始まった学校給食費の抜本的な負担軽減について、集金の額が家ごとに分かれる仕組みと、令和7年度調査の全国平均5,196円を整理します。
働き方・扶養と税ふるさと納税の「9月末まで」は、誰へのルール?
ふるさと納税のポータルサイトに「2026年9月30日まで」の文字が並んでいます。ただ、この日付は税の締切ではありません。自治体が総務大臣の指定を受ける対象期間の区切りです。総務省の一次資料をたどると、寄付する側のルールは何も変わっていないことが分かります。
教育・学校部活動の地域展開、どこまで学校に残る?
2026年度から6年間の「改革実行期間」が始まり、休日の部活動の「地域展開」が動いています。何が全国共通で決まっていて、何がお住まいの地域によって違うのか。どこが担うのかの配分と、確認先を整理します。
教育・学校「入学準備」が始まるのは3月ではなく9月? — 9月末に届く封筒に入っているもの
来年4月に入学する子のいる家庭には、9月末から10月にかけて市町村の教育委員会から封筒が届きます。就学時健康診断は平日の午後に指定され、封筒の中身も日程も自治体ごとに違います。学齢簿の基準日10月1日から入学期日の通知まで、条文と一次資料で日程を並べました。