「9月末まで」と言われているのは、誰へのルールなのでしょうか — ふるさと納税、2026年10月の改正

八月の終わりに、ふるさと納税のポータルサイトからメールが届きます。件名に「2026年9月30日まで」とあり、去年の秋にも似た通知を見た記憶がよみがえる家庭は、少なくないはずです。
制度が変わるらしい、という話は届いています。ただ、何がどう変わるのかは、はっきりしません。控除が減るのか、返礼品が消えるのか、それとも別の話なのか。
結論から書くと、9月30日は寄付の締切ではありません。それでも、9月中に見ておくと役に立つ家庭はあります。今年は寄付をしないと決めている家庭にとっても、制度がどこへ向かっているのかが見える改正です。
「9月30日」は、誰にとっての区切りなのでしょうか
ふるさと納税には「指定制度」という仕組みがあります。自治体が総務大臣から「ふるさと納税の対象団体」として指定を受けて、はじめて、その自治体への寄付が控除の対象になるというものです。
この指定は原則として1年単位で行われ、対象となる期間は毎年10月1日から翌年9月30日までと決まっています(令和8年6月26日付け総税市第71号)。いま動いているのは、2025年10月1日から2026年9月30日までの令和7年指定対象期間です。
そして今回の改正は、次の令和8年指定対象期間、2026年10月1日から2027年9月30日までに適用されます。つまり9月30日という日付は、自治体が受けている指定の区切りであって、寄付する人の税の期限ではありません。
現在掲載されている返礼品のラインナップが有効な最終日。それが9月30日の実体です。
変わるのは、寄付する側のルールではありません
今回変わるのは「指定基準」、つまり自治体が総務大臣の指定を受けるために満たすべき条件であって、寄付する側に課されるルールではありません。
寄付する人に関わる部分は据え置かれています。返礼品は寄付額の3割以下という上限は変更なし。自己負担2,000円も、控除の計算方法も、ワンストップ特例の仕組みも変わりません。総務省が2026年7月31日に公表した現況調査の資料にも、返礼品の上限3割については図の中に「変更なし」と書かれています。
総務省が自治体向けに出しているQ&Aは、2026年9月30日までに適用される版が32問、10月1日以降に適用される版が47問あります。増えた分も含めて全問を通しても、寄付する人に何かを求める記述は一箇所もありません。「ワンストップ特例」という言葉すら、自治体が負担する事務費用の一項目として一度出てくるだけです。
なお、2026年10月1日に効き始めるのは、ひとつの改正ではありません。2025年6月の告示改正(令和7年総務省告示第220号)と、2026年3月成立の地方税法改正(令和8年法律第2号・令和8年総務省告示第145号)という、成立時期の異なる2つが同じ日に適用されます。
52.5%は、自治体の手元に残る額の下限です
今回の改正の柱のひとつが、地方税法に新しく設けられた基準です。「寄附金活用可能額」、つまり寄付金のうち自治体が財源として使える額が、寄付金全体の52.5%以上でなければならない、というものです。
ここは向きを取り違えやすいところです。52.5%は募集にかけてよい費用の上限ではありません。自治体の手元に残さなければならない額の下限です。裏返せば募集にかけられるのは47.5%までということになりますが、この言い換えは編集部によるもので、総務省の資料は「52.5%以上」と書いています。
しかもこれは初年度の水準です。法律の附則により、2027年10月からの期間は55%、2028年10月からは57.5%、2029年10月以降は60%と段階的に引き上げられます。
この数字の重みは、実績と並べると見えてきます。令和7年度の受入額は全国で1兆3,314億円。うち募集に要した費用が6,382億円で47.9%、自治体の財源として残ったのが52.1%でした。総務省はこの52.1%と新基準の52.5%を同じ資料の図に並べており、全国平均が初年度の水準をわずかに下回っていることが分かります。
だから返礼品の見直しや、ポータルサイトへの手数料の再交渉が、いま各地で起きています。総務省自身も2026年5月22日に、大手ポータルサイト運営事業者が参加する業界団体の会員企業に対して、手数料の引下げに取り組むよう要請しています。
制度が向かっている方向は、通知の文面に書かれています。募集に要する費用を抑えつつ、できる限り住民サービスの充実や地域振興のために活用されることが重要である、というのが総務省の説明です。
姿を消すかもしれない返礼品には、共通点があります
もうひとつの柱が、地場産品基準の見直しです。区域内で作られたと言えるかどうかの判定が、より厳密になります。
Q&Aが挙げている「認められないと考えられる例」のリストは、改正の前後で一字も変わっていません。区域外で作られたビールに自治体オリジナルのシールを貼ったもの、区域外から仕入れたブロック肉を区域内で切ってパック詰めした精肉。こうした例は、以前から認められないものとして示されていました。
変わったのは、リストではなく判定の物差しです。これまでは「工程のうち主要な部分」「相応の付加価値」という言葉で判断されていたものが、価格をもとに算出した値が0.5を超えているかどうかという数値の判定になります。そのうえで、製造事業者が証明書を出し、自治体が返礼品の提供開始日までにその内容を一覧で公表することが求められます。
自治体のロゴやキャッチコピーを付けたグッズについても、別の壁ができました。自治体自身が広報の目的で調達し、配布または販売した実績が直近1年間にあり、返礼品として出す数量がその実績を超えないこと、という条件です。返礼品としてだけ大量に出ているグッズは、提供数が絞られる可能性があります。
ただし、どの品がどうなるかは総務省の資料からは分かりません。自治体ごとに新基準への適合を確認し、公表するかどうかで決まります。「基準を満たしにくいものがある」というところまでが、いま言えることです。
ポータル事業者の告知にも、9月中に受付を終了する品が出てくることも予想される、と書かれています。毎年決まって頼んでいる返礼品がある家庭には、9月のうちに掲載状況を一度見ておく実益があります。逆に、その年に出ているものから選ぶという家庭には、制度のうえでの締切はありません。
似た話が3つあり、時期も対象も違います
ふるさと納税をめぐっては、性質の違う話が同時期に流れています。適用時期と対象で並べ直すと、混ざりにくくなります。
ひとつめは、2025年10月1日から適用されているポイント付与の禁止です。根拠は令和6年総務省告示第203号で、今回の改正とは告示番号も適用日も別のものです。これは寄付する人の体感に直接ひびいた変更でした。
ふたつめが、今回の2026年10月1日からの指定基準改正です。自治体と返礼品事業者に課される基準であり、寄付する人の手続きは変わりません。
みっつめが、193万円という数字です。これは個人住民税の「特例控除額の控除限度額」に定額の上限を設ける改正で、所得割額の20%相当額と193万円(道府県民税と市町村民税を合わせた額)の低いほうが限度になります。適用は2027年中の寄付分から、2028年度分の個人住民税からです。控除の上限額が一律に193万円まで下がるという話ではなく、所得割額の20%が193万円を超える人でなければ、そもそも作動しません。
なお総務省は、令和8年度においても制度の見直しに向けた検討を行っていく予定である、と通知に記しています。ここに書いた内容は2026年8月時点のものです。
秋に、夫婦で話しておきたいこと
ふるさと納税には、家庭でつまずきやすい構造があります。返礼品は家族で使うものですが、控除は個人単位で計算されるという点です。
住民税の特例分は、その人の所得割額の20%が限度です。共働きの世帯なら、夫婦それぞれの上限額を別々に把握する必要があります。ところが実際には、片方が申し込みを担当していて、もう片方は自分の枠を知らない、ということが起こりがちです。誰の名義で、いくらまで、何を頼むのか。家族の中で共有されにくい情報の典型と言えます。
家族のやりとりが集まる場所を作っていると、こうした一年に一度だけ必要になることほど、どこにも残らないまま消えていくのだと感じます。
今年の秋にできることは、そう多くありません。9月末に慌てて何かを済ませる必要は、制度のうえではないからです。毎年届くのを楽しみにしている品があるなら、掲載が続いているかを一度見ておけば足ります。あとは夫婦それぞれの枠を、どこかの夜に一度だけ話しておければ十分です。
制度が動くのは10月1日ですが、家庭の側で動かすものは、その前後どちらでも構いません。届いたメールの「9月30日」が誰への区切りだったのかが分かっていれば、あとは自分たちのペースで決められます。
本記事は2026年8月時点の総務省・国税庁の公表資料によります。制度の見直しが続く可能性があるため、最新の情報は総務省「ふるさと納税ポータルサイト」でご確認ください。
memStock編集部
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