「入学準備」が始まるのは3月ではなく9月? — 9月末に届く封筒に入っているもの

教育・学校memStock編集部(更新: 2026年9月7日
「入学準備」が始まるのは3月ではなく9月? — 9月末に届く封筒に入っているもの

ランドセルは夏のうちに買った。入学の準備は、ひとまず片づいたつもりでいる。来年4月に小学校へ上がる子がいる家庭では、いまごろそういう感覚の方が多いかもしれません。

けれど9月の終わりから10月にかけて、市町村の教育委員会から保護者あてに封筒が届きます。差出人は学校ではありません。中に入っているのは、来年4月のための最初の手続きです。

「新学期」が指している日は、学校ごとに違います

文部科学省が令和7年度に行った教育課程の編成・実施状況調査は、全ての公立小中学校を対象にした悉皆(しっかい)調査でした。回答した小学校等18,332校のうち、一年を二つの学期に区切る二学期制をとっているのは25.2%。中学校等9,172校では22.2%です。およそ4校に1校は、三学期という数え方をしていません。

始業の日そのものも揃っていません。大阪市が公表している令和8年度の日程では、2学期の始業式は8月25日です。しかも同市は「各学校園長の判断により、始業式の1日後ろ倒しや、終業式の1日前倒しができる」と説明しています。同じ市の中でも、学校によって日付が動きます。

9月1日に全国で何かが一斉に始まるわけではない、ということです。ただ、9月に動き出すものがひとつあります。来年4月に入学する子のいる家庭に向けた、就学の手続きです。

9月末に動き出す理由は、条文に書いてあります

市町村の教育委員会は、翌年度に入学する子の名簿をつくります。学齢簿と呼ばれるものです。学校教育法施行規則第31条は、この学齢簿の作成を「十月一日現在において行うものとする」と定めています。作成の期限は学校教育法施行令第2条の「毎学年の初めから五月前までに」で、毎学年の初めは4月1日ですから、10月31日にあたります。

就学時の健康診断は、その学齢簿ができたあとに行われます。学校保健安全法施行令第1条は「学齢簿が作成された後翌学年の初めから四月前……までの間に行うものとする」と定めています。四月前にあたるのは11月30日です。ただし同じ条文には括弧書きがあり、「就学に関する手続の実施に支障がない場合にあつては、三月前」、つまり12月31日までも認められています。

起点が10月、終わりが11月末から12月末。全国の市町村が同じ時期に動いているのは、この二つの日付に挟まれているからです。

そして同じ施行令の第3条は、健診にあたって「あらかじめ、その日時、場所及び実施の要領等を」保護者に通知しなければならないと定めています。9月末の封筒は、任意のお知らせではありません。法令が義務づけた通知です。

届く時期にも、実施の時期にも幅があります

自治体の公式ページを4つ並べると、日程はばらついています。町田市は通知書を9月末に発送する予定で、「10月9日を過ぎても届かない場合は」教育委員会に連絡するよう案内しています。枚方市は10月1日以降に到着する予定、名古屋市は10月初旬から中旬にかけて送付、札幌市は10月15日から発送します。

名古屋市が送付先を「10月1日現在で名古屋市に住民登録のある方」と書いているのは、学齢簿の基準日そのものです。条文の日付が、そのまま封筒の宛名の条件になっています。

実施の時期も、町田市が10月下旬から11月中、名古屋市が10月中旬から11月下旬、札幌市は原則11月から12月です。札幌市が12月まで取れているのは、さきほどの括弧書きの例外にあたります。

平日の午後に、どちらが行くのか

町田市は市内全校の日程表を公開しています。開いてみると、実施日はすべて平日で、受付時間は最も早い学校が13時15分、最も遅い学校の受付終了が14時30分でした。日付は10月23日から11月26日に分散しています。

9月末に届く封筒は、10月から11月にかけての勤務の調整を頼む紙でもある、ということになります。共働きの家庭が封筒を開けて最初に決めるのは、どちらが半日空けるか、です。

欠席したときの扱いは、自治体によってはっきり違います。町田市は近隣の他校での受診や、12月17日に予定されている欠席者健診を案内しています。名古屋市は「指定小学校以外での受診はできません」と明記し、受診できない場合は指定小学校へ連絡したうえで受診方法を問い合わせるよう求めています。行けそうにないと分かった時点で、通知に書かれた連絡先へ電話をすることになります。

健診の内容そのものについては、自治体の案内がいちばん正確です。実施の主体は市町村の教育委員会と法律に定められていて(学校保健安全法第11条)、会場が小学校であることとは別の話になります。

「実施している市町村は87.5%」が数えているもの

封筒の中身は、健診の案内だけとは限りません。枚方市は小学校入学準備金の申請書について、「就学時健康診断通知書を郵送時(10月1日以降到着予定)に同封します」と書いています。就学援助のうち、入学前に支給される分の申請書です。

町田市と札幌市の公式ページには、就学援助や入学準備金の案内を同封するという記載がありません。何が入っているかは、自治体ごとに違います。

この入学前支給について、文部科学省が令和7年7月時点でまとめた調査があります。回答した1,746市町村のうち87.5%が、令和7年度の入学者に入学前支給を実施したと答えました。中学校では、回答した1,761市町村のうち87.7%です。行っておらず検討もしていないと答えたのは、小学校で6.4%(112市町村)でした。

ただし、この割合が数えているのは、その市町村に制度があるかどうかです。申請して受け取れた家庭の数を数えたものではありません。

就学援助は、申請して受け取る仕組みになっています。文部科学省が令和3年度に行った別の調査(回答1,765市町村)で、申請書の提出方法を見てみます。申請の有無にかかわらず全員に提出してもらう設計をとっている市町村は、合わせても2%あまりでした。大半は、希望した人が出す形です。

在校生の家庭には、毎年度の進級時に学校から書類が配られるという道筋があります。まだどの学校にも在籍していない子の家庭には、その道筋がありません。だから就学時健診の場が、紙を手渡せる数少ない機会になっています。

令和3年度の調査では、入学前支給の案内を「就学時健康診断の際に学校で配布」していると答えた市町村が40.9%ありました(複数回答。母数は、入学前支給を実施済みと回答した1,477市町村です)。

金額を決めるのは市町村です。国が令和8年度に定めた要保護世帯向けの補助単価は小学校64,300円・中学校81,000円で、これを目安に額を決める市町村もあります。枚方市の小学校入学準備金は64,300円でした。認定の基準も市町村ごとに違い、文科省自身が「各市町村において制度の詳細は異なりますので、お住まいの市町村にお問い合わせください」と案内しています。

枚方市のページには、こんな一文が置かれています。「迷った時は申請または、ご相談を!」。収入や所得が分からない、基準額と比べて判断がつかない、そういう場合でも「まずは申請書をご提出ください」と書かれています。

4月までに、封筒はあと何通か

次の期限も条文にあります。学校教育法施行令第5条は、入学期日を「翌学年の初めから二月前までに」保護者へ通知しなければならないと定めています。翌学年の初めは4月1日ですから、1月31日にあたります。小学校や中学校が2つ以上ある市町村では、この通知で就学する学校が指定されます。

その先の入学説明会や学用品の案内には、法令の定めがありません。学校ごとに時期が違うので、届いた案内で確かめることになります。

9月末の封筒、10月から12月の健診、1月末までの入学期日の通知。半年をかけて、少しずつ決まっていきます。ランドセルを買った日に片づいたと思っていたものは、まだ途中だった、ということでもあります。

家族向けのコミュニケーションアプリ memStock を作る中でも、同じ場面に何度も行き当たりました。家庭に届く情報が、決まった置き場所を持たないまま流れていくことです。9月から4月にかけて届く書類も、同じ形をしています。

スタートを切る、という言い方をするとき、思い浮かぶのは気持ちの切り替えの方かもしれません。ただ、この9月に実際に始まるのは、日程の相談です。封筒を開けて、健診の日にどちらが行くかを二人で決める。それが済んだころには、来年4月の輪郭は、いまより少しはっきりしているはずです。

本記事の制度・日程は、2026年9月1日時点で公表されている法令および文部科学省・各自治体の資料によります。就学援助の認定基準や支給額、健診の日程・同封物・欠席時の扱いは市町村ごとに異なり、年度によって変わることがあります。詳しくはお住まいの自治体の案内をご確認ください。

よくある質問

就学時健康診断はいつ受けるのか?
学齢簿の基準日は10月1日で、診断は11月末から12月末までに実施されます。全て平日の午後で、自治体ごとに日程が決められます。
9月末に教育委員会から来る封筒は何か?
就学時健康診断の通知です。法令で定められた通知で、診断の日時や場所が書かれています。就学援助の申請書が同封されることもあります。
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