おたふくかぜワクチンの定期接種案は1歳と就学前。今の年長の子はどの枠からも外れます

「1歳のお誕生日ですね。MRと水ぼうそうの予約を入れておきます。おたふくかぜは任意接種なので自費になります」。小児科の受付でそう言われて、少し前にニュースで見た「おたふくかぜ、定期接種へ」という見出しを思い出します。上の子は年長で、2回目をどうするかもまだ決めていません。
今お金を払って打つか、公費になるのを待つか。厚生労働省の審議会では2026年の夏から秋にかけて議論が進みましたが、10月12日時点で定期接種化は正式には決まっていません。審議会の資料をもとに、決まったことと案の段階のこと、子どもの年齢ごとの状況を整理します。
おたふくかぜワクチンの定期接種化は、まだ正式決定していません
2026年5月11日、はしか・おたふくかぜ・風しんを1本で防ぐMMRワクチン(製品名ミムリット)が承認されました。日本では1989年にMMRの接種が始まりましたが、接種後の無菌性髄膜炎の発生が問題になり、1993年に見合わせた経緯があります。
承認を受けて、厚労省の専門家によるワクチン評価に関する小委員会が6月と7月に議論し、9月30日に「議論のまとめ」を公表しました。新しいMMRも、1980年代から使われてきた単独のおたふくかぜワクチンも、「定期接種に使用できるようにすることについて、これを妨げる大きな懸念はない」という内容です。
小委員会が確かめたのは、接種する年齢や使うワクチンが科学的に妥当かどうかまでです。定期接種に位置づけるか、いつから始めるか、誰を対象にするかは上部の予防接種基本方針部会で審議することになっています。部会は10月8日にも開かれましたが、議題はHPVワクチンの男性への接種などで、おたふくかぜは取り上げられていません。政令・省令を改正するためのパブリックコメントも、確認できる範囲では見当たりません。
開始時期について、厚労省の資料は2027年度からの定期接種化を「最速で」と書いています。検討中のワクチンをすべて2027年度から定期接種にするとは限らない、という記述もあります。報道では「早ければ2027年度にも」とされていますが、開始日はまだ決まっていません。
案では「1歳」と「小学校入学前の1年間」の2回
小委員会が妥当とした接種年齢は、今のMR(麻しん風しん)ワクチンの定期接種と同じです。第1期は生後12〜24か月、つまり1歳の1年間。第2期は小学校に入学する前の1年間で、保育園や幼稚園の年長の年度にあたります。日本小児科学会も、任意接種として1歳を過ぎたら早めに1回目、就学前の1年間に2回目を受けるよう勧めています。
今のおたふくかぜワクチンは任意接種なので、費用は医療機関によって異なります。自治体によっては助成があります。審議会資料では任意接種の接種率は就学前の子で5〜6割程度とされています。
定期接種で使うワクチンの候補は新しいMMRと単独ワクチンの2種類です。MRと単独ワクチンの2本がMMRの1本にまとまる、という理屈は成り立ちます。ただ、定期接種でどちらを使うのか、家庭が選べるのかは部会が決めることで、今の時点では分かりません。
新しいMMRのおたふくかぜの部分にはRIT 4385株が使われていて、この株を含むMMRワクチンは海外で広く使われています。1〜2歳の子を対象にした国内の試験では、おたふくかぜの抗体ができた割合はMMRで80.6%、単独ワクチンで88.1%でした。試験の基準では、MMRが単独ワクチンに劣らないことは示せていません。国内試験の計679例で接種後の無菌性髄膜炎は報告されていませんが、国内のデータはまだ少ないとされています。
単独ワクチンについては2020年1月〜2023年3月に接種した1歳から就学前の子44,708例を8週間追った調査があります。接種後の無菌性髄膜炎は6例(10万接種あたり13.4)で、6例とも回復しました。
1歳の子、年長の子、小学生の子で状況が違います
ここから先は、案どおり2027年4月に始まったと仮定したときの見通しです。開始時期や対象は部会の審議で変わる可能性があります。
1歳の子
2027年4月の時点でまだ2歳になっていない子、つまり2025年4月ごろより後に生まれた子は、第1期の対象になり得ます。それより前に生まれた子は、2027年4月には2歳を過ぎていて第1期には間に合いません。その場合でも、一度もおたふくかぜワクチンを打っていなければ、キャッチアップ接種(対象年齢を逃した子が後から公費で受ける接種)の対象になり得ます。
キャッチアップの案は「第1期接種の機会を逃し、今までに一度もおたふくかぜワクチンを接種したことのない、第2期接種前の者」が対象です。任意接種で1回目を済ませた子はこの対象から外れます。その子が就学前に受ける2回目が第2期として定期接種の扱いになるかどうかは資料には書かれていません。
MRの第1期はおたふくかぜの結論を待たずに予定どおり受けられます。おたふくかぜの任意接種と同じ日に受けることもでき、生ワクチン同士の同時接種で効果が落ちたり安全性に影響したりするという知見はない、と小委員会のまとめにあります。
年長の子
今の年長の子は、2027年4月に小学校へ入学します。案の第2期もキャッチアップも就学前の子が対象なので、案どおりであれば公費の対象には入らない見込みです。小学校に入った後の子へのキャッチアップは「今後の流行状況に応じて検討」とされているだけです。
そのため年長の子の2回目(まだなら1回目)は、任意接種で受けるかどうかを考えることになります。一方、今の年中の子は2027年度に年長になるので、案どおり2027年度に始まれば第2期の年齢にあたります。1学年違うだけで扱いが分かれる可能性があります。
小学生の子
案では対象に入っていません。助成の対象年齢は自治体ごとに違います。たとえば千葉県柏市は1回2,500円を上限に2回まで助成しています。柏市は全国的なワクチンの供給不足を理由に、2026年度に限って対象を小学2年生まで延ばしました。
供給については、単独ワクチン2製品のうち1製品が品質試験の結果を受けて2025年8月分を最後に出荷を止めていました。メーカーは2026年1月の時点で、2月に出荷を再開し、供給が安定するまでは限定出荷にすると案内しています。今の在庫は接種を受ける医療機関で確かめられます。
待っているあいだの流行と、難聴の調査
おたふくかぜは4〜5年ごとに全国規模で流行してきました。小委員会のまとめによると、直近の数年は過去と比べて報告数が少なく、報告のおよそ7割は7歳以下の子です。審議会では委員から、ムンプス(おたふくかぜ)は長い間隔をおいて再び流行し得るので、最近の報告が少なくても今後流行しないという意味ではない、という発言もありました。
自然にかかった場合の合併症には無菌性髄膜炎や脳炎、難聴があります。思春期以降に初めてかかると、精巣炎・卵巣炎が増えるとされています。
難聴については、日本耳鼻咽喉科学会の全国調査があります。2015〜2016年の2年間に、おたふくかぜによる難聴になった人は少なくとも348人。詳しく分かった336人のうち約8割(274人)に、高度以上の難聴が残りました(2017年発表)。
開始時期が決まっていないため、今1歳の子が公費の接種までどれだけ待つことになるかは、今の時点では分かりません。年長の子は、案どおりなら待っても公費の対象に入らない見込みです。
決める前に、きょうだいの接種歴を並べてみる
母子手帳を開くと、MRは何回、おたふくかぜは何回受けたかが書いてあります。きょうだいで年齢が離れていると、下の子は第1期やキャッチアップを待てる可能性があり、上の子は任意で受けるかどうかを考える、というように対応が分かれます。夫婦のどちらかだけが把握している状態だと、予約のたびに確認し直すことになりがちです。
住んでいる自治体の助成の対象年齢も、ホームページや保健センターで確かめられます。定期接種は市区町村が実施するので、定期接種になったときの案内も自治体から出ることになります。
打つか待つか、打つならいつかは子どもの体調や持病、通っている園の状況でも変わります。最終的には、かかりつけの小児科で母子手帳を見せながら相談して決めてください。次の健診や予防接種の予約で受診するときに、ひとこと聞いてみるだけでも、考える材料はそろってきます。
出典
- 厚生労働省 ワクチン評価に関する小委員会「おたふくかぜワクチンについての議論のまとめ」(2026年9月30日公表、2026年10月12日確認)/PDF
- 厚生労働省 第35回 ワクチン評価に関する小委員会 資料(2026年7月22日開催、2026年10月12日確認)
- 同 資料1-1「おたふくかぜワクチンについて」(2026年7月22日、2026年10月12日確認)
- 同 資料1-3(MMRワクチンの承認日ほか)(2026年7月22日、2026年10月12日確認)
- 同 参考資料1 日本小児科学会 要望書(2026年6月4日付、2026年10月12日確認)
- 厚生労働省 第35回 ワクチン評価に関する小委員会 議事録(2026年10月12日確認)
- 厚生労働省 予防接種基本方針部会 開催一覧(2026年10月12日確認)
- 厚生労働省 第78回 予防接種基本方針部会 資料(2026年10月8日開催、2026年10月12日確認)
- 厚生労働省「麻しん・風しん」(2026年10月12日確認)
- 厚生労働省「予防接種・ワクチン情報」(2026年10月12日確認)
- 日本耳鼻咽喉科学会「2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査」(2017年発表、日本ワクチン学会サイト掲載、2026年10月12日確認)
- 武田薬品工業「乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン『タケダ』出荷再開予定のおしらせ」(2026年1月、船橋市掲載、2026年10月12日確認)
- 柏市「おたふくかぜ予防接種費用の助成」(2026年8月25日更新、2026年10月12日確認)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品副作用被害救済制度」(2026年10月12日確認)
- 共同通信「おたふくかぜ定期接種化を支持 厚労省の専門家小委」(熊本日日新聞掲載)(2026年7月22日配信、2026年10月12日確認)
この記事は2026年10月12日時点で公表されている情報によります。おたふくかぜワクチンの定期接種化の可否、開始時期、対象年齢は、今後の予防接種基本方針部会の審議で決まります。接種の判断は、かかりつけの医師にご相談ください。
よくある質問
- おたふくかぜワクチンの定期接種化は決まったのですか?
- 2026年10月12日時点では決まっていません。厚労省の小委員会が、接種年齢や使うワクチンが科学的に妥当で、定期接種に使うことを妨げる大きな懸念はないとまとめた段階です。定期接種にするかどうかや開始時期は予防接種基本方針部会で審議されます。
- 1回目を任意接種で受けた場合、2回目は無料になりますか?
- まだ公表されていません。案のキャッチアップ接種は、今までに一度もおたふくかぜワクチンを接種したことのない子が対象なので、1回目を済ませた子は対象外です。就学前の2回目が第2期として定期接種になるかどうかは、資料に書かれていません。
- MMRワクチンになれば、注射の本数は減りますか?
- MRと単独のおたふくかぜワクチンの2本が、MMRなら1本で済むという理屈は成り立ちます。ただ、定期接種でMMRと単独ワクチンのどちらを使うのかは部会が決めることで、まだ決まっていません。
- 任意接種で健康被害が出たら、救済制度はありますか?
- 任意接種は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用被害救済制度の対象です。定期接種には別に、予防接種法にもとづく予防接種健康被害救済制度があります。今のおたふくかぜワクチンは任意接種なので、前者の対象になります。
- 今の年長の子は、おたふくかぜワクチンの定期接種の対象になりますか?
- 案どおりなら対象に入らない見込みです。今の年長の子は2027年4月に小学校へ入学しますが、案の第2期とキャッチアップはどちらも入学前の子が対象で、厚労省の資料は開始を「最速で」2027年度としています。入学後の子へのキャッチアップは「今後の流行状況に応じて検討」とされています。
memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。
関連記事
生活/暮らしメールのパスワードが漏れたら? そのアドレスで登録した家族のアカウントまで見直します
メールのパスワードが漏れたときは、そのアドレスを登録先にしている家族のアカウントまで見直します。2026年はプロバイダ向けメール基盤から7,616,173名分のパスワードの漏えいが確認され、総務省が行政指導しました。
生活/暮らしニセ警察詐欺は、実家の固定電話にも子育て世代のスマホにもかかってきます
ニセ警察詐欺は高齢の親だけでなく、子育て世代も電話を受けている詐欺です。警察庁の2026年上半期の暫定値で年代別の認知件数を足すと60歳未満が54%を占め、最初の電話は50代以下なら携帯電話、60代以上なら固定電話が半数以上です。
生活/暮らし父親と友だちの話をする中学生は半数強、10年前の中学生では約4割
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の親子調査では、2024年の小中高校生は10年前の同じ学年より、父親と友だち・社会のニュース・学校の出来事を話す割合が高くなっていました。中学生の友だちの話は42.2%から52.7%です。
生活/暮らし家の前の道に中央線はありますか? 標識も線もない道は、9月から30キロです
標識で速度が指定されておらず、中央線や車線も上下の分離もない一般道路は、2026年9月1日から法定速度が30km/hになりました。改正道路交通法施行令の条件は中央線・車線・上下の分離の有無で、道幅5.5mは警察庁が想定した目安です。