夏休み明け、「学校に行きたくない」と言われたら — 共働きのわが家は、まず何を決めるのか

夏休みも残りわずかという夜。片づけを終えてひと息ついたところで、子どもがぽつりと「学校、行きたくないかも」と言う。宿題は進んでいたし、友達とも遊んでいた。だから戸惑います。そして次の瞬間、明日の仕事のことが頭をよぎる。そんな自分に、少し後ろめたさを感じるかもしれません。けれど、その二つが同時に浮かぶのは自然なことです。共働きの家庭にとって、これは子どものことであると同時に、家の回し方の話でもあるからです。
長い休みのあとの数日を、どう受け止めるか
長い休みのあとは気持ちが揺れやすい、とよく言われます。ただ、月ごとの公的な統計があるわけではないので、「9月に増える」と言い切れる根拠が示されているわけではありません。
それでも、手がかりになる調査はあります。文部科学省の令和6年度の調査では、学校が把握した事実として「生活リズムの不調に関する相談があった」が25.0%(88,563人)にのぼりました。長い休みのあとに生活のリズムを戻すこと自体、それなりに難しいということかもしれません。
先に押さえておきたいことがあります。この調査でいう「不登校」とは、年間30日以上欠席した子どものことを指します。心理的・情緒的・身体的、あるいは社会的な要因や背景によって、登校しない、あるいはしたくてもできない状況にある場合が対象で、病気や経済的な理由による欠席は含まれません。つまり、数日休んだからといって、この数字の中に入るわけではありません。
この記事が扱うのは、まず数日をどう乗り切るかです。今夜の一言が、その先の何十日かを決めるわけではありません。
「増え続けている」だけでは、もう語れない数字
同じ調査で、不登校とされた子どもは小中学校で353,970人。12年続けて増え、過去最多です。文部科学省はこの規模を「小学校では、約44人に1人、中学校では、約15人に1人」と説明しています。中学校なら、クラスに2〜3人程度という計算です。
ただ、その先にも数字があります。増加率は小中学校全体で2.2%。前年度の15.9%から大きく下がりました。さらに、その年に新しく計上された人数は153,828人で、前年度の165,300人から減っています。減少は9年ぶりです。
この変化が何によるものかを、文部科学省は明らかにしていません。理由を説明する記述はなく、示されているのは数字だけです。それでも、「毎年同じように増え続けている」という状況ではなくなりつつあることは読み取れます。
欠席の日数にも幅があります。90日以上の子どももいれば、30日から49日という子どもも8万人以上います。休むことと休み続けることは、地続きに見えて別の話です。
だから、休むかどうかを今夜のうちに決めきらなくてかまいません。決めておけることは、もう少し手前にあります。
働き方の側には、制度の空白がある
子どもが家にいる日、仕事をどうするか。ここは、制度が用意している答えが少ない領域です。
育児・介護休業法にもとづく「子の看護等休暇」は、2025年4月から対象が小学3年生修了までに広がりました。ただし取得できる事由は、病気やけがの看護、予防接種・健康診断、感染症にともなう学級閉鎖等、入園式・卒園式・入学式への参列の4つ。子どもが学校に行けない日は、この中に含まれていません。
同じ法律の他の措置も、学齢期の子どもは対象から外れます。育児のためのテレワーク等の導入(努力義務)は3歳未満、柔軟な働き方を実現するための措置は3歳から就学前まで、所定外労働の制限も就学前まで。小学校に上がったあとの子どもについて、法律が確実に用意している手段は、年次有給休暇のほかにほとんどありません。
つまり多くの家庭にとって現実的な選択肢は、有給休暇と、勤務先が独自に設けている在宅勤務や時差出勤、フレックスタイムということになります。これらは会社ごとに条件が異なります。何がどう使えるのかは、就業規則を見るか、社内の窓口で確認しておくと、いざというときに迷わずに済みます。
この構図は、行政も認識しています。文部科学省が2025年11月に事業主・労働者へ向けて出した資料には、子どもが学校に行けなくなった場合「保護者が自宅で子供を見守らざるを得なくなるなど、保護者の就業にも影響が生じ得る」と書かれています。さらに「保護者が離職や休職をせざるを得ない状況に追い込まれてしまうといったケースも指摘されています」とも記されています。同じ資料には、こうした事情による休業制度を独自に設けている企業の事例も紹介されています。
だから、段取りがうまく回らないとしても、それは家庭の工夫が足りないからではありません。制度の側に空白があります。手元の選択肢が少ないと感じるなら、実際に少ないのです。
休んだ日が、そのまま欠席になるとは限らない
もうひとつ、あまり知られていないことがあります。学校を休んでいる間の学習が、条件を満たせば出席扱いになったり、成績評価の対象になったりする場合があります。文部科学省は2026年4月、この仕組みを保護者等向けにも整理した資料を公開しました。
対象になりうるのは、教育支援センターなどの施設で相談・指導を受けている場合と、自宅でICT等を活用した学習活動を行っている場合です。ただし、保護者と学校の連携・協力体制や、訪問等による定期的・継続的な対面指導など、いくつかの要件が定められています。
そして、これは自動的に認められるものではありません。同じ資料には「その判断は学校が行うこととしていますので、在籍する学校やその設置者である教育委員会等にお問い合わせください」と書かれています。文部科学省は別の資料で、この仕組みによって「必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないように留意する必要があります」とも記しています。休みやすくするための制度ではない、ということです。
受け皿の状況にも地域差があります。学校の中に子どもが過ごせる部屋(校内教育支援センター)を設けている公立小中学校は、2025年6月時点で全国平均58.7%。ただし小学校に限ると49.1%と、まだ半数に届きません。都道府県ごとの設置率が公表されるほど地域差があるため、在籍する学校や、お住まいの自治体の教育委員会に確認するのが確実です。
必要になる前に、調べておけること
ここまでの話には共通点があります。どれも、その日の朝になってから調べるには時間がかかる、ということです。
勤務先で使える休暇や在宅勤務の条件は、就業規則を開けば書いてあります。学校のスクールカウンセラーが何曜日に来ているのかも、たいていは配布物のどこかに載っています。
相談先も同じです。文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」は0120-0-78310。通話無料・24時間対応で、子どもだけでなく保護者も相談できます。電話をかけると、その地域の教育委員会の相談機関につながる仕組みです。また文部科学省のサイトには、各都道府県の教育委員会がまとめた地域の相談窓口の一覧が掲載されています。
こうした場所は、必要になってから探すより、何も起きていないうちに一度開いておくほうが役に立ちます。知っているというだけで、選べるものが変わります。
今晩、話せること
「行きたくないかも」という一言は、困りごとの始まりのように聞こえます。同時にそれは、話してくれたということでもあります。言わずに朝を迎えることもできたのに、そうしなかった。
決めなければならないのは、休ませるべきかどうかの是非ではありません。明日の朝、誰がどう動けるのか。学校には何をどう伝えるのか。そして、その子の様子が家族のあいだで同じように見えているのか。動かせるのは、子どもより先に、家の体制のほうかもしれません。
答えは家庭ごとに違います。ただ、夏休みが終わるまでの数日は、まだ手元にあります。就業規則を開いてみる、地域の窓口のページを一度眺めてみる。それだけでも、9月の朝に取れるものは変わってきます。そして何より近い一歩は、今晩その一言について、もう少しだけ話してみることかもしれません。
本記事は2026年8月時点で公表されている情報をもとにしています。出席扱いや成績評価の判断は学校が行うこととされており、支援の体制は自治体によって異なります。詳しくは在籍する学校や、お住まいの自治体の教育委員会にご確認ください。
memStock編集部
memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。



