給食費の月5,200円は、家庭に配られる額ではありません — 減る分は、市町村に届いた支援額で決まります

お金の話memStock編集部
給食費の月5,200円は、家庭に配られる額ではありません — 減る分は、市町村に届いた支援額で決まります

9月に入って学校から配られた集金の通知に、給食費の欄があります。金額がゼロになっている家庭もあれば、去年より少し下がっただけの家庭も、変わらないままの家庭もあります。

この違いが生まれたのは、この秋ではありません。ニュースが「給食費の無償化」と呼んでいた取り組みは、2026年4月に始まっています。家によって集金の額が分かれる理由は、その取り組みの正式な名前と、国が決めた月5,200円の性格にあります。

「無償化」ではなく「抜本的な負担軽減」と呼ばれています

文部科学省がこの取り組みに付けている名前は、「学校給食費の抜本的な負担軽減」です。同省の保護者向けページには、「これまで使われていた『いわゆる給食費無償化』との表現については、制度趣旨をより的確に表現できるよう」名称を改めた、と書かれています。

呼び方を変えた理由も、同じページに説明があります。「給食無償化」という言い方が完全無償のイメージにつながると、給食の質を独自に上げたい自治体の財政負担が増えたり、逆に財政負担を抑えたい自治体で質の低下を招いたりすることが懸念される、というものです。

中身はこうです。公立小学校の児童(義務教育学校前期課程と特別支援学校小学部を含みます)の学校給食に必要な食材費について、国が地方自治体に交付金を出す仕組みです。国立・私立の小学校に通う児童は対象外、給食を実施していない学校も対象外です。

保護者の手続きは要りません。個人に給食費を給付する仕組みではなく、自治体が給食の食材を買うための経費を国が支えるかたちだからです。申請書を書く場面はなく、通帳に振り込まれるものでもありません。

国が決めた月5,200円と、あとから出てきた5,196円

国が示した基準額は、公立小学校の完全給食(主食とミルクとおかずがそろう給食)で児童1人あたり月5,200円です。補食給食は4,800円、ミルク給食は1,200円。特別支援学校小学部はそれぞれ6,200円、5,800円、1,200円と定められています。

この5,200円がどう決まったかは、2026年1月の文部科学省の資料に注記があります。令和5年度の学校給食費調査で出ていた公立小学校の全国平均4,688円に、近年の物価動向(1年あたり5%の上昇)を加味して設定した、というものです。2年分の上昇を見込んで100円単位に丸めると、5,200円になります。

制度が始まったあと、2026年7月30日に文部科学省が令和7年度学校給食実施状況等調査の結果を公表しました。令和7年5月1日現在で、公立小学校の学校給食費の平均月額は5,196円。国が見込んだ額と、あとから出た実測の平均の差は4円でした。

ただし、この2つは同じものさしで出たものではありません。令和7年度の調査から、全国平均の出し方が都道府県ごとの単純平均から、都道府県別の学校数を反映した加重平均に変わりました。5,200円の根拠になった4,688円は従来の方法によるもので、同じ令和5年度の平均を新しい方法で計算し直すと4,655円になります。

4円の差は、同じ方法で測った2つを並べた結果ではなく、別々の出し方をした見込みと実測が近い位置に来たものです。それでも、物価を見込んで引いた線と、あとから測った実態は、ほぼ重なりました。

算出方法が変わった理由も公表されています。負担軽減の基準額を毎年の給食費調査に基づいて設定することになったため、全国ベースの指標として使えるよう加重平均に改めた、というものです。家庭の集金額を決める制度が、統計の作り方そのものを動かしました。

5,200円は上限で、いくら届くかは都道府県と市町村が決めます

5,200円が全国どこでも配られるわけではありません。自治体向けのQ&Aは、都道府県が国に申請する支援基準額について「国の支援の基準額を上限としてください」と書いています。国の支援額は、5月1日時点の給食実施校の在籍児童数に、都道府県が申請する額と11か月と2分の1を掛けて算定されます。残る2分の1は都道府県が負担する前提です。

都道府県から市町村へ配るときも同じで、市町村が都道府県の定めた基準額を下回る額で申請することもありえます。自分の家の給食費を左右するのは、国の5,200円ではなく、住んでいる市町村に届いた支援額のほうです。

支援は年11か月分で、給食の実施回数によって基準額に差は付きません。年間の給食回数は都道府県によって173回から199回まで開きがありますが、回数が多い地域も少ない地域も同じ額で算定されます。

そして、食材費が支援額を超えた分は、これまでどおり保護者から徴収できます。文部科学省の保護者向けページには、「基準額を超える部分については、学校給食法に基づき、引き続き保護者から学校給食費を徴収することが可能です」とあります。同じページのQ&Aは「無償ではないの?」という問いに、「地方自治体によります」と答えています。

いったん集めた給食費をあとから返す運用は想定されていません。自治体向けのQ&Aは、支援を使って保護者に返還するかたちを明確に否定し、徴収する額そのものから交付金で充てられる部分を除くよう求めています。集金袋の金額が下がるか、集金そのものがなくなるかであって、返金の通知を待つ話ではありません。

減額の幅がいくらになるのか、何月の引き落としから反映されるのかは、自治体ごとに違います。国の資料には書かれていません。ここは通学先の学校を設置する市町村からの通知を見るしかない部分です。

平均の後ろに、1,391円の開きがあります

令和7年度調査は、都道府県別の平均月額も載せています。公立小学校で最も高いのは新潟県の6,069円、最も低いのは愛媛県の4,678円。差は1,391円です。5,200円を上回る都道府県は47のうち24ありました。東京都は5,643円で、基準額を443円上回っています。

ただし文部科学省は、この表に注記を付けています。各都道府県の平均額に高低があるのは給食内容や年間実施回数が異なるためであり、これを単純に比べることはできない、というものです。給食回数だけを見ても173回から199回まで26回の幅があります。金額の高い県が家庭に厳しい県だ、とは読めません。

中学生のきょうだいは、対象に入っていません

自治体向けのQ&Aに、「給食費負担軽減交付金を、中学校の給食費への支援に充てることはできるか」という問いがあります。答えは「できません」の一行です。保護者向けページも、対象は公立小学校とだけ書いています。

公立中学校の学校給食費の平均月額は、令和7年5月1日現在で6,013円でした。これは実測の平均であって、小学校の5,200円のような国が示す上限額ではありません。性格の違う金額ですが、小学生と中学生のきょうだいがいる家庭では、同じ食卓に座る2人の子で扱いが分かれることになります。

今後については、2025年12月の三党合意に基づく文部科学省・総務省・財務省の文書に記載があります。制度の開始後に事業の進め方や課題を地方団体を交えて検証し、「中学校給食についても、小中学校の給食実施状況の違い等も含めた課題の整理を行った上で検討」する、というものです。検討するとは書かれていますが、時期も実施も決まっていません。

2026年8月28日に公表された令和9年度の概算要求は、この取り組みに1,656億円(前年度予算額1,649億円)を要求しています。対象は小学校段階のみで、中学校への拡大は入っていません。同じ資料には令和9年度の月額基準額の案として完全給食5,400円も載っていますが、食料の消費者物価指数の伸び約3.4%を加味した要求段階の案です。予算が成立するまで確定した額ではありません。

給食費は消えたわけではなく、持つ人が変わりました

集金の額が変わっても、子どもが食べている給食の食材費そのものが消えたわけではありません。誰がどこまで持つかが変わりました。国が2分の1、都道府県が2分の1を持ち、それが基準額という上限の内側で動きます。上限を超えた分は、これまでどおり家庭が持ちます。

だから、自分の家の給食費がいくらになったのかは、全国平均の5,196円でも国の基準額の5,200円でもなく、通学先の市町村から届く通知にしか書かれていません。文部科学省も「詳しくは通学先の学校を設置する市町村から提供される情報を御確認ください」と案内しています。制度の全体像は、同省の特設ページ「学校給食費の抜本的な負担軽減」と、1枚もののデジタルチラシで読めます。

学校からの通知は、たいてい一人が受け取り、金額だけ確かめて終わります。家族間のコミュニケーションをテーマにしたサービスを作っていると、この種の紙は受け取った人の手元で止まりやすいと感じます。

中学生のきょうだいがいる家庭なら、来年度の見通しも含めて、その紙を前に一度話しておくといいかもしれません。

本記事は2026年9月時点で公表されている情報によります。令和9年度の基準額5,400円は概算要求段階の案であり、予算編成の過程で変わる可能性があります。金額や反映の時期は、通学先の市町村からの通知でご確認ください。

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