子どもだけのタクシー、安全と見守り

塾が終わるのは夜の8時過ぎ。迎えに行きたくても、仕事が終わらない日があります。そんなとき、子どもだけでタクシーに乗せて帰らせる家庭もあります。配車アプリには、子どもの乗車状況を親のスマホで確かめられる機能も出てきました。
ただ、タクシーの中の安全には法律の決まりがあり、家庭の車とは扱いが違うところがあります。この記事では、道路交通法と国土交通省の標準運送約款、内閣府の交通安全白書をもとに、子どもだけでタクシーに乗るときのルールと、家族で決めておきたいことを整理します。法令と資料の内容は2026年10月時点で確認したものです。
子どもだけでタクシーに乗ることは禁止されていない
タクシーは、道路運送法では「一般乗用旅客自動車運送事業」にあたり、営むには国土交通大臣の許可が要ります。運送の基本ルールは、国交省が定めて公示した「一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款」に書かれており、事業者がこれと同じ約款を定めると、国の認可を受けたものとみなされます。この標準約款には、運転者が運送を断れる場合が並んでいます。行き先を告げられないほど泥酔しているとき、付添人を伴わない重病者であるとき、といった事情です。この一覧に、年齢や子どもだけでの乗車についての定めはありません。標準約款と違う独自の約款を国の認可を受けて使っている事業者もあり得るため、気になるときは利用するタクシー会社に確かめます。
一方で、道路交通法は保護者の責任も定めています。第14条第3項は、6歳未満の幼児を保護する責任のある人は、交通のひんぱんな道路などで、付き添わないで幼児を歩かせてはならないとしています。タクシーに一人で乗れても、乗る場所や降りた先で一人で道を歩くことになるなら、未就学の子どもには付き添いが要ります。
同じ条文で、6歳以上13歳未満の子どもは「児童」と定義されています。小学生が一人で乗る場面が多いとすれば、次に見るのは車内の安全装置の決まりです。
タクシーではチャイルドシートの義務が免除される
道路交通法第71条の3第3項は、チャイルドシート(幼児用補助装置)を使わない6歳未満の幼児を乗せて運転してはならないと定めています。ただし、道路交通法施行令第26条の3の2第3項に、使わなくてもよい場合が8つ挙がっています。その第6号が、タクシーやバスなどの一般旅客自動車運送事業の車の運転者が、その事業の旅客である幼児を乗せる場合です。
| 決まり | 家族の車 | タクシー |
|---|---|---|
| 6歳未満のチャイルドシート | 運転者に使用させる義務(道路交通法第71条の3第3項) | 施行令の第6号で義務が免除 |
| 同乗者のシートベルト | 運転者に装着させる義務(同条第2項) | 同じく義務。タクシーを除く定めは施行令にない |
警察庁とJAFが2026年5月に行った全国調査では、6歳未満のチャイルドシートの使用率は84.0%でしたが、5歳に限ると65.7%で、ほかの年齢より低くなっています。小学校に上がる前後は、家族の車でもチャイルドシートから離れやすい時期です。
免除は、運転者を義務違反に問わないという意味で、タクシーの中なら安全になるという意味ではありません。警察庁は、6歳未満の子どもや、6歳以上でも体格などの事情でシートベルトを適切に着けられない子どもには、チャイルドシートを使わせるよう呼びかけています。未就学の子どもを乗せるときは大人が付き添い、チャイルドシートを使えるかを事前にタクシー会社へ問い合わせておくと安心です。
小学生はシートベルトを必ず締める
シートベルトには、タクシーを特別扱いする定めがありません。道路交通法第71条の3第2項は、運転者に、シートベルトを着けていない人を運転者席以外の座席に乗せて運転してはならないと定めています。施行令が挙げる例外は、座席の数を超えて乗せる場合や、負傷・障害で着けるのが療養上適当でない場合などで、タクシーの乗客という理由は入っていません。
警察庁は、後部座席でのシートベルトの着用は全ての道路で義務だとしています。シートベルトを着けずに事故に遭うと、被害者であっても損害賠償などで十分な補償を受けられなくなる場合があるとも説明しています。警察庁によると、後部座席でシートベルトを着けていなかったときの致死率(死傷者に占める死者の割合)は、着けていたときと比べて、一般道路で約2.8倍、高速道路で約13.9倍です。それでも、2025年の警察庁とJAFの調査では、後部座席の同乗者の着用率は一般道路で45.8%にとどまり、運転席と助手席の96%超を大きく下回っています。
子どもだけで乗るときは、運転者が声をかけてくれるとは限りません。乗ったらまずベルトを締める、と家で決めておきます。
乗る前と降りた後の道路にも目を向ける
タクシーを降りた後の数十メートルも、子どもにとっては交通事故の起きる場所です。2026年の交通安全白書によると、2016年から2025年までの合計で、交通事故で亡くなったり重傷を負ったりした小学生は、歩行中が最も多くなっています。2021年から2025年の合計では、歩行中に事故に遭った未就学児と小学生の3割以上が、飛び出しに当たる行動をしていました。
降車の場所は、子どもが道路を渡らずに建物に入れる側を選ぶと安心です。流しのタクシーに乗るときに備えて、運転者に伝える行き先を、子どもが言える形で紙やスマホに書いておくと迷いません。
乗せる前に家族で決めておくこと
子どもだけでタクシーに乗せる日は、前もって決めておくことがいくつかあります。誰が配車するのか、支払いは現金かアプリか、どこで降りて、着いたら誰にどう知らせるのか。運転者に何か聞かれたときに、子どもが自分の名前と行き先、保護者の連絡先を伝えられるかも確かめておきます。
車内で気分が悪くなった、降りる場所を間違えた、といったときに電話できる大人を一人決めておくと、子どもも運転者も動きやすくなります。迎えに行けない日が続く家庭では、こうした約束を紙に書いて、子どもの持ち物に入れておく方法もあります。
配車アプリの見守り機能はどこまで分かるか
タクシーアプリ「GO」は、2025年5月20日から家族向けの「あんしん見守り」を提供しています。2026年10月時点の公式ページでは、親などの管理者のアカウントに家族のアカウントを連携すると、家族がタクシーを呼んだときに、配車依頼から降車完了までの状況を管理者のアプリ画面でリアルタイムに確かめられると案内されています。支払いは管理者がまとめて管理でき、利用例として子どもの塾や習い事への移動が挙げられています。2025年5月の発表では、管理者1人に最大5人のメンバーを連携でき、子どもが道やのりばで流しのタクシーに乗った場合も、後部座席のタブレットで「GO Pay」を使えば管理者が乗車状況を確認できるとされていました。
この種の機能で確かめられる範囲は、車の位置と、乗車・降車が終わったかどうかです。降りた後に子どもが建物に入ったか、車内でベルトを締めたかまでは分かりません。降車の後は、子どもが持つ見守りGPSや携帯電話で、着いたことを知らせてもらう方法もあります。端末の種類や料金は、別の記事で比べています。
家族の車でのチャイルドシートの卒業の目安も、あわせて確かめておくと判断しやすくなります。
出典
- 一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/common/001378357.pdf
- 道路交通法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/335AC0000000105
- 道路交通法施行令(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/335CO0000000270
- 道路運送法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/326AC0000000183
- 子供を守るチャイルドシート(警察庁) https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/childseat.html
- 全ての座席でシートベルトを着用しましょう(警察庁) https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/seatbelt.html
- 令和8年交通安全白書 第3節 こどもの交通事故の傾向(内閣府) https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r08kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_2_3.html
- あんしん見守り(GO株式会社) https://go.goinc.jp/mimamori
- No.1タクシーアプリ『GO』が家族向け新機能「あんしん見守り」を開始(GO株式会社) https://goinc.jp/news/pr/2025/05/20/f9bmveiaoog3xrgmvn26k/
よくある質問
- タクシーに子どもを乗せるとき、チャイルドシートは必要ですか
- 道路交通法施行令により、タクシーやバスの運転者が旅客として6歳未満の幼児を乗せる場合は、チャイルドシートの使用義務が免除されています。ただし免除は義務違反に問わないという意味で、警察庁は6歳未満の子どもにはチャイルドシートを使わせるよう呼びかけています。
- 小学生だけでタクシーに乗せてもよいのですか
- 国交省の標準運送約款が定める運送を断れる場合の一覧には、年齢や子どもだけでの乗車についての定めはありません。ただし6歳未満の幼児については、交通のひんぱんな道路で付き添わずに歩かせることが道路交通法で禁じられています。
- タクシーの後部座席でもシートベルトは義務ですか
- 義務です。道路交通法第71条の3第2項は運転者に同乗者のシートベルトの装着を求めており、施行令の例外にタクシーの乗客は入っていません。警察庁も、後部座席の着用は全ての道路で義務としています。
- GOの「あんしん見守り」は今も使えますか
- 2026年10月時点で、GOの公式ページに機能の案内と設定方法が掲載されています。GOシャトルでは利用できないと書かれています。
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