「夫の家事・育児は1日1時間54分」— 平日は1時間15分、日曜は3時間43分でした

「6歳未満の子どもがいる家庭で、夫の家事・育児は1日1時間54分」。ニュースやSNSでこの一文を見かけて、うちはどのくらいだろう、と頭のなかで数えはじめた人は少なくないと思います。妻は7時間28分、と並んでいることも多いはずです。
ただ、この1時間54分は、誰の、いつの、どんな1日を数えたものなのでしょうか。出どころをたどっていくと、自分の家庭と並べる前に知っておきたいことが、いくつも出てきます。
その1時間54分は、2021年10月の2日間のものです
1時間54分は、総務省統計局の令和3年社会生活基本調査の値です。「調査票A」と呼ばれる調査票の集計結果で、2022年8月31日に公表されました。総務省での呼び名は「家事関連時間」といい、家事、介護・看護、育児、買い物の4つを足したものです。
「6歳未満の子供を持つ、夫婦と子供の世帯」の夫と妻が集計の対象です。祖父母と同居している世帯も、子どもが小学生になった家庭も入っていません。
2021年10月16日から24日までのうち、地域ごとに指定された連続する2日間に生活時間を記録しています。1年を通してならした平均ではありません。
総務省はこの結果に但し書きを付けています。記録された時期が、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が2021年9月末に全ての地域で解除された直後にあたること。「結果をみる上でこの点を留意する必要があります」と書かれています。
生活時間を公的に調べた結果で、これより新しいものはまだありません。1時間54分は、5年近く前の記録です。
同じ時期の同じ条件から、もうひとつの結果が出ています
社会生活基本調査には、2種類の調査票があります。約8万6千世帯に配られた調査票Aと、約5千世帯に配られた調査票B。統計局は「調査票Aと調査票Bは、異なる世帯に調査を実施しています」と明記しています。
同じ2021年10月、同じ「6歳未満の子供を持つ夫婦と子供の世帯」について、調査票Bの結果は夫2時間00分、妻7時間33分です。この2つは、どちらも同じ資料に載っています。
その資料には、揃わない理由も書かれています。調査票Aは、あらかじめ印刷された20種類の行動から選んでもらう形式。調査票Bは、日記のように行動を書いてもらい、集計の段階で90種類に分類する形式です。
分類の中身も違います。調査票Bの「家事」には介護・看護が入り、「育児」には子どもの送迎の移動も入ります。調査票Aでは、それぞれ別の欄に分かれています。同じ名前の欄が、同じものを指していません。
統計局自身がこう書いています。「調査票Aと調査票Bについて、同じ行動分類でも必ずしも数値は一致せず、数値が異なっていることに御留意ください」。どちらかが誤っているのではなく、別の方法で調べれば別の値になることを、作った側が先に断ってあります。
15分ごとに、主な行動をひとつだけ
数え方は調査票の紙面に印刷されています。令和8年調査の調査票Aには、生活時間の欄にこう書かれています。「指定された日の行動について 15分単位で 定規を使って白線の上に記入してください」「いくつかの行動を同時にしていた場合は 主な行動のみ記入してください」
令和3年の結果概要にも、同じ説明があります。1日の行動を20種類に分類し、15分単位で、同時に2種類以上の行動をした場合は主なもの一つ。
洗濯物をたたみながら子どもの相手をしていた15分は、家事か育児のどちらか一方の欄に入ります。両方には入りません。
これは時間を短く見せる方向にも、長く見せる方向にも働きます。育児と書かれた15分に洗い物が混ざっていれば、育児の側が多めに出ます。調査票Bは同時行動も集計していますが、結果の概要に夫と妻を分けた表はありません。
誰を平均に入れるかでも、値は変わります。1時間54分は「総平均時間」といって、その日に家事も育児もしなかった人の0分を含んだ、全員の平均です。同じデータから、その日に育児を記録した夫だけの平均を出すと、2時間32分になります。
調査の日に、主な行動として育児が書かれた夫は40.4%でした。妻も81.3%で、100%ではありません。15分の枠に主な行動をひとつだけ書く記録の、10月の指定された日の割合です。やっている・やっていないを測ったものではありません。
平日と日曜を足して、7で割った1日
記録が集まったあとにも、もうひとつ手が加わります。この値は「週全体平均」といい、定義は(月曜日平均+……+日曜日平均)÷7です。
総務省がe-Statで公開している曜日別の表では、夫の家事関連時間は平日1時間15分、土曜3時間17分、日曜3時間43分でした。平日5日分に土曜と日曜を足して7で割ると、およそ1時間54分になります。
妻は平日7時間26分、土曜7時間28分、日曜7時間31分でした。どの曜日もほとんど動きません。
夫の側は曜日で3倍近く開き、妻の側は開きません。その2本を1本にまとめる計算が、週全体平均です。1時間54分という1日は、平日でも土曜でも日曜でもありません。
同じ調査でも、どの世帯を集めたかで変わります
同じ対象を共働きかどうかで分けた表もあります。2021年の夫の家事関連時間は、共働き世帯が1時間55分、夫が有業で妻が無業の世帯が1時間47分でした。
内訳を並べると、夫の家事は34分と20分。夫の育児は1時間03分と1時間06分で、統計局は「ほぼ同じ」と書いています。夫について2種類の世帯を並べたとき、差が出たのは家事の側でした。
妻については別の姿になります。家事は2時間37分と3時間44分、育児は3時間24分と4時間56分。家事関連時間の合計は6時間33分と9時間24分で、2時間51分の開きがあります。
流通している「夫は1時間54分」は、性格の違うこれらの世帯をまとめた平均です。どの家庭の姿でもありません。
公的な文書どうしでも、母集団の切り方は揃いません。内閣府の男女共同参画白書は、同じ2021年の同じ調査票Aを引きながら、祖父母などと同居する世帯を含む「子供のいる世帯」で集計しています。共働き世帯の夫は114分、妻は391分で、先に見た1時間55分・6時間33分とは1分から2分ずれます。白書も、同じ調査を使った別の年版の図の備考に「子供がいる世帯には祖父母等がいる場合を含み、夫婦と子供の世帯に限定されていない」と書いています。
白書はこの値から、家事関連時間のうち妻が担う割合を、妻が無業の世帯で84.0%、共働きで77.4%と計算しています。式は(妻の家事関連時間)÷(妻と夫の合計時間)×100だと備考欄にあります。
次の数字は、この10月につくられます
令和8年社会生活基本調査は、2026年10月20日を期日に実施されます。生活時間の配分については、10月17日から25日までの9日間のうち、調査区ごとに指定された連続する2日間が記録の対象です。
今回は約9万5千世帯、10歳以上の世帯員で約19万4千人が対象になります。全国の世帯数は令和7年国勢調査の速報値で5,712万5千世帯ですから、およそ600世帯に1世帯にあたります。
統計法にもとづく基幹統計調査で、対象になった世帯には回答する義務があります。1976年から5年ごとに続いていて、今回が11回目です。
結果が出るまでには時間がかかります。統計局は「集計の完了したものから順次」公表するとしています。設計を検討した研究会の資料には、調査票Aが令和9年9月末まで、調査票Bが同年12月末までという予定が書かれています。
それまでのあいだ、1時間54分は引用され続けます。2025年公表の白書が2021年の値を使っているのも、そのためです。
1時間54分は、対象の世帯を選び、10月の2日間だけを記録し、15分ごとに主な行動をひとつ書かせ、曜日をならして割る、という手順を順に通した結果です。手順をひとつ通るごとに、この値が指すものは少しずつ変わります。
この手順は隠されていません。どこで何をどう数えたかは、すべて公開されています。数え方が固定されているから、2016年の1時間23分と2021年の1時間54分を同じ物差しで並べられます。5年前と今を比べるための値であって、隣の家や自分の家と比べるためのものではありませんでした。
家族向けのアプリをつくっていると、何を数えるか、どの箱に入れるかを決める場面に何度も行き当たります。同じ出来事でも、置く場所が変われば見え方が変わる。総務省が調査票の欄を20に分け、記録の単位を15分と決めるのも、たぶん似た種類の作業です。
10月17日から25日までの2日間、約9万5千世帯が同じ手順で記録をつけます。そこから出てくる次の値も、やはり、家庭どうしを比べるためのものではありません。
本記事の数値は、2026年9月2日時点で公表されている総務省統計局・内閣府の資料によります。生活時間の数値はいずれも2021年10月時点のもので、次回の更新は令和9年(2027年)以降の予定です。令和8年調査の結果公表時期は研究会資料に記された予定であり、全国の世帯数は国勢調査の速報値です。
よくある質問
- 『夫の家事育児1時間54分』は毎日のことなのか?
- いいえ、平日は1時間15分で、土日は3時間台です。週全体平均が1時間54分で、実際の日々は大きく変動しています。
- 共働きと専業主婦世帯で夫の家事育児時間は変わるのか?
- ほとんど変わりません。共働き1時間55分、専業主婦世帯1時間47分です。妻の家事関連時間は大きく変わります。
memStock編集部
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