インデックスファンドの選び方は?

NISAのつみたて投資枠で積立を始めようと証券会社の画面を開くと、「インデックス」と名の付くファンドがずらりと並びます。金融庁の集計では、つみたて投資枠の対象商品は2026年10月8日時点で372本あります。名前が似ていて違いが分かりにくいのですが、比べる場所は多くありません。
確かめるのは、どの指数に連動するか、持っている間にかかるコスト、運用を続けられる規模があるか、の3つです。ここでは、JPX(日本取引所グループ)、金融庁、資産運用業協会(旧・投資信託協会)の公表資料をもとに、選ぶときの確認の順番を整理します。個別のファンド名やおすすめは挙げません。
インデックスファンドは連動する指数で中身が決まる
資産運用業協会の商品分類では、「インデックス型」は各種指数に連動する運用成果を目指す投資信託を指します。指数(インデックス)とは、たくさんの銘柄の株価を一定の計算方法でまとめて数値にしたものです。インデックスファンドは、その指数と同じような値動きになるように株式などを組み入れます。
このため、ファンドを選ぶことは、ほぼ「どの指数を選ぶか」と同じ意味になります。同じ指数に連動するファンドどうしなら、組み入れる銘柄の中身は似通い、違いはコストや規模に出てきます。逆に、指数が違えば、同じ「インデックスファンド」でも投資先の国や銘柄の数がまったく変わります。
金融庁がつみたて投資枠(前身のつみたてNISA)の対象商品を決めたときの報告書では、インデックス投信を「マーケット全体の値動きに忠実に連動することを基本とする商品」と位置づけ、値動きのわかりやすさやコストの低さを挙げています。対象とする指数は、マーケット全体を広くカバーし、市場関係者に浸透しているものを基本とする考え方が示されています。
どの指数に連動するかは、ファンド名のほか、投資信託説明書(目論見書)で確かめられます。目論見書には「商品分類表」と「属性区分表」が載っていて、属性区分の「対象インデックス」の欄で連動先の指数が分かります。
日本株の指数、TOPIXと日経平均株価の違い
日本株のインデックスファンドでよく使われるのが、TOPIX(東証株価指数)と日経平均株価です。どちらも「日本株の値動き」を表しますが、対象の銘柄も計算方法も違います。
TOPIXは、JPXが「日本の株式市場を広範に網羅する」マーケット・ベンチマークと位置づける指数です。1968年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数にしたもので、計算方法は浮動株時価総額加重型です。市場に出回る株式(浮動株)の時価総額が大きい企業ほど、指数への影響も大きくなります。TOPIXに連動するETF・投資信託・年金などの資産は、2026年6月末時点で約160兆円あります。
旧記事のように「TOPIXは東証に上場している全銘柄が対象」と説明されることがありますが、今は当てはまりません。2022年4月の市場区分の再編のあと、TOPIXは同年4月1日時点の構成銘柄を引き継ぎつつ、流通株式時価総額100億円未満の銘柄の比率を2025年1月末まで10段階で引き下げました。さらに第2段階の見直しとして、プライム・スタンダード・グロースの全市場区分を母集団に、流動性の基準で銘柄を入れ替える仕組みに移っています。初回の定期入替は2026年10月、2回目は2028年10月の予定で、入替で外れる銘柄は四半期ごと8段階で比率を下げていきます。TOPIXに連動するファンドの中身も、この見直しに合わせて少しずつ変わります。
日経平均株価は、日本経済新聞社が算出する指数です。東京証券取引所プライム市場に上場している225銘柄の平均株価指数で、「日経225」とも呼ばれます。対象は225銘柄に絞られていて、時価総額で重みを付けるTOPIXとは計算の仕組みが異なります。同じ日でも両者の値動きが一致しないのは、このためです。
全世界・先進国・米国、海外の指数は範囲で比べる
海外株のインデックスファンドは、指数の名前を見ても範囲が分かりにくいものです。金融庁が2025年4月に示した資料では、つみたて投資枠の対象になる単一の株式指数を、地域ごとに次のように分けています。
- 日本: TOPIX、日経平均株価、JPX日経インデックス400、MSCI Japan Index
- グローバル(全世界): MSCI ACWI Index、FTSE Global All Cap Index
- 先進国: MSCI World Index、FTSE Developed Index、S&P 500、CRSP U.S. Total Market Index など
- その他の国・地域: MSCI Emerging Markets Index、FTSE Emerging Index など
S&P 500とCRSP U.S. Total Market Indexは、この表で「先進国のうち米国」として数えられている、米国1か国の指数です。旧記事では、S&P 500を「グローバルな投資を考えている方」向けとしていましたが、投資先は米国に限られます。全世界に分けて投資したいのか、先進国か、米国だけか、日本だけかで、選ぶ指数が変わります。
同じ指数でも、配当を含めるかどうか、為替ヘッジ(為替の変動を抑える取引)の有無、特定の1か国を除くかどうかで別の指数として計算されています。たとえば「日本を除く先進国」の指数は、先進国の指数から日本を外した版です。日本株のファンドと組み合わせるときは、日本が二重に入っていないかを確かめておくと、配分を把握しやすくなります。
なお、つみたて投資枠の対象指数には、2026年4月1日から読売株価指数とJPXプライム150指数が加わりました。
信託報酬などのコストを比べる
投資信託のコストは、払う時期によって分かれます。購入時には販売会社に「購入時手数料」を払いますが、この費用がない「ノーロード」のファンドもあります。持っている間は「運用管理費用(信託報酬)」が保有額に応じて毎日、信託財産から差し引かれます。信託報酬は年率で目論見書に書かれていて、運用会社・販売会社・信託銀行の3者で分けられます。
信託報酬のほかにも、監査報酬や、ファンドが株式を売買するときの売買委託手数料が信託財産から差し引かれます。売買委託手数料は運用の結果として発生するため、事前に金額を示せません。換金時に「信託財産留保額」がかかるファンドもあります。
つみたて投資枠の対象になるインデックスファンドには、金融庁の告示で条件が決められています。信託報酬(税抜)は国内資産を対象とするもので0.5%以下、海外資産を対象とするもので0.75%以下で、購入時手数料はゼロ(ノーロード)、解約手数料と口座管理料もゼロです。実際の水準は上限より低く、金融庁の集計では2026年10月8日時点の信託報酬率の平均が、国内を投資先とする指定インデックス投信で0.27%、内外・海外を投資先とするもので0.34%でした。
同じ指数に連動するファンドなら中身が似ているため、比べやすいのは信託報酬です。差は年率で見ると小さく見えますが、毎年かかり続けます。仮に、毎月3万円を20年間(元本720万円)積み立て、コストを引く前の運用利回りを年3%で一定とし、信託報酬を利回りから差し引いて月複利で計算すると、信託報酬が年0.1%なら約974万円、年0.5%なら約933万円になり、差は約41万円です。実際の運用利回りは毎年変わり、元本を下回ることもあるので、あくまで差の大きさをつかむための試算です。
純資産総額と繰上償還を確かめる
ファンドの規模を表すのが純資産総額です。規模を見る理由の一つに、繰上償還があります。繰上償還とは、信託約款で決められた条件を満たしたときに、信託期間の途中で運用をやめ、投資家にお金を前倒しで返すことです。代表的なケースとして、残存口数が一定規模を下回った場合や、純資産総額が減って運用を続けにくくなった場合があります。
条件があらかじめ信託約款に書かれている場合は、投資家が賛成するかどうかにかかわらず償還できます。2025年6月の内閣府令の改正で、純資産総額が一定の金額を下回ったときなどに解約できる旨を約款に定めるための約款変更と、その約款に基づく解約は、書面による決議がいらなくなりました。長く積み立てるつもりで選んだファンドが途中で終わると、積立の設計をやり直すことになります。
純資産総額が「いくら以上なら安心」という公的な目安はありません。旧記事にあった「100億円以上」「3年以上の運用実績」も、公的な基準ではないため削りました。つみたて投資枠では、指数に連動しない投資信託に「純資産額50億円以上」「信託開始以降5年経過」などの要件がありますが、指定された指数に連動する投資信託にはこの要件がありません。つみたて投資枠の対象であることは、規模の保証にはならないということです。
確かめる方法は、目論見書や運用会社のサイトで純資産総額の推移を見ることと、繰上償還の条件と信託期間を信託約款(請求目論見書)で見ることです。信託期間には期限を設けない「無期限」のファンドもあります。
指数・コスト・規模を確かめたら、どの口座で買うかも決めておきます。NISAでインデックス投資をする利点は、こちらの記事でまとめています。
出典
- TOPIX(東証株価指数、TPX)(日本取引所グループ)https://www.jpx.co.jp/markets/indices/topix/index.html
- TOPIXの見直しの概要(日本取引所グループ)https://www.jpx.co.jp/markets/indices/revisions-indices/index.html
- TOPIXの見直し 第1段階の見直し(日本取引所グループ)https://www.jpx.co.jp/markets/indices/revisions-indices/01.html
- TOPIXの見直し 第2段階の見直し(日本取引所グループ)https://www.jpx.co.jp/markets/indices/revisions-indices/02.html
- 用語集「日経平均株価」(日本取引所グループ)https://www.jpx.co.jp/glossary/na/337.html
- 用語集「株価指数」(日本取引所グループ)https://www.jpx.co.jp/glossary/ka/71.html
- 説明資料(令和7年4月22日 NISA関連会議 資料2)(金融庁)https://www.fsa.go.jp/singi/nisa_kaigi/siryou/20250422/02.pdf
- つみたて投資枠対象商品の分類・信託報酬率の分布(2026年10月8日時点)(金融庁)https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/products/20261008/28.pdf
- つみたて投資枠対象商品(金融庁)https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/target/index.html
- 「非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に関する基準」の一部改正について(金融庁)https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260401-3/20260401.html
- 令和8(2026)年度税制改正について(金融庁)https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20251226-2/01.pdf
- 「投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(案)」に対するパブリックコメントの結果等について(金融庁)https://www.fsa.go.jp/news/r6/shouken/20250624/20250624.html
- 投資信託のコスト(資産運用業協会)https://www.imaj.or.jp/study/investmenttrust/costtax/cost.html
- 運用対象での分類(資産運用業協会)https://www.imaj.or.jp/study/investmenttrust/type/category.html
- 分配金・換金/償還の知識(資産運用業協会)https://www.imaj.or.jp/special/toushin-qa100/dividend_redemption/
よくある質問
- 同じ指数に連動するファンドなら、どれを選んでも同じですか?
- 組み入れる銘柄は似通いますが、信託報酬などのコストと純資産総額はファンドごとに違います。インデックスファンドは指数に連動する運用成果を「目指す」商品で、指数とまったく同じになるとは限りません。コストと規模、繰上償還の条件を比べたうえで選ぶと、違いが分かります。
- TOPIXと日経平均株価は、どちらに連動するファンドがよいですか?
- どちらが優れているという公的な基準はありません。TOPIXは浮動株時価総額加重型で、全市場区分から流動性の基準で銘柄を選ぶ仕組みへ移行中です。日経平均株価はプライム市場の225銘柄の平均株価指数です。日本株全体に広く投資したいのか、代表的な225銘柄に絞るのかで選び方が変わります。
- つみたて投資枠と成長投資枠で、買えるインデックスファンドは違いますか?
- 違います。つみたて投資枠で買える投資信託は、金融庁の告示の要件を満たして届け出た商品に限られ、金融庁のサイトで一覧が公開されています。成長投資枠で買える投資信託の一覧は、資産運用業協会のサイトで確認できます。
- 信託報酬のほかに、かかる費用はありますか?
- あります。保有中は監査報酬や売買委託手数料も信託財産から差し引かれ、換金時に信託財産留保額がかかるファンドもあります。購入時手数料はファンドや販売会社によって異なり、ゼロのものもあります。どの費用がかかるかは目論見書で確認できます。
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カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。
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