住宅ローンの優遇金利、仕組みと条件

住宅ローンの広告や事前審査の結果で「店頭金利から年○%引下げ」「当初5年間は優遇幅拡大」といった表示を見て、実際に払う金利がいくらになるのか分からなくなることがあります。優遇金利は、金融機関が決めた店頭金利から一定の幅を差し引いた金利で、引下げの期間の決め方によって、数年後の返済額が変わります。
日本銀行は2026年9月に政策金利を1.25%程度に引き上げました。金利が上がる局面では、借りるときの金利の低さだけでなく、引下げがいつまで続くのかも確かめておく必要があります。優遇金利の仕組みと、子育て世帯が使える公的な引下げ制度を順に見ていきます。
優遇金利は店頭金利からの引下げ
優遇金利とは、店頭金利から一定の幅を差し引いた、実際に適用される金利のことです。住宅金融支援機構は、店頭金利を「通常、借り入れに適用される基準となる金利」と説明し、そこから一定期間または全期間、一定の幅で金利を引き下げるプランを「金利の引下げ」と呼んでいます。
引下げのプランは、大きく次の2つに分かれます。
| プラン | 引下げ幅の決まり方 |
|---|---|
| 当初期間の引下げ幅が大きいプラン | 当初期間の引下げ幅が、その後から返済終了までの引下げ幅より大きい |
| 全期間の引下げ幅が同じプラン | 借入当初から返済終了まで、店頭金利から一律に引き下げる |
当初期間の引下げ幅が大きいプランでは、当初期間が終わった後の扱いが金融機関によって異なります。どちらのプランも、引下げを受けるには金融機関が定める条件を満たす必要があり、その条件も金融機関ごとに違います。
住宅ローンを借りられるかどうかは、金融機関の審査で決まります。国土交通省が民間金融機関に行った調査(2025年度)では、融資の審査項目として「完済時年齢」を98.4%、「健康状態」を96.1%、「年収」を94.2%、「勤続年数」を93.9%、「返済負担率」を90.9%の機関が挙げていました。年収や職業でいくら引き下がるかといった全国共通の基準はなく、引下げ幅は金融機関から示される条件で確かめることになります。
変動金利型の場合、引下げ幅が変わらなくても、もとになる店頭金利(基準金利)は動きます。変動金利型の基準金利は短期プライムレートに連動するのが一般的で、日銀の利上げにあわせて引き上げられてきました。優遇幅は「店頭金利からの差」であって、適用金利そのものを固定するものではありません。
引下げの型で返済額はどう変わるか
当初期間の引下げ幅が大きいプランは、当初期間が終わると引下げ幅が縮み、返済額が上がります。住宅金融支援機構が示している例の数字(店頭金利3.3%、当初5年間は1.7%引下げ・6年目以降は1.0%引下げ、全期間型は1.2%引下げ)を使って、3,000万円を35年、元利均等返済で借りた場合を計算しました。店頭金利が35年間3.3%のまま変わらないと仮定した、型の違いを比べるための試算です。
| 当初5年間の毎月返済額 | 6年目以降の毎月返済額 | 総返済額 | |
|---|---|---|---|
| 当初期間の引下げ幅が大きいプラン(年1.6%→年2.3%) | 9万3,332円 | 10万2,630円 | 約4,255万円 |
| 全期間の引下げ幅が同じプラン(年2.1%) | 10万925円 | 10万925円 | 約4,239万円 |
| 引下げなし(年3.3%) | 12万536円 | 12万536円 | 約5,063万円 |
当初期間の引下げ幅が大きいプランは、最初の5年間の返済額が月7,600円ほど少なく済みます。一方で6年目からは月9,300円ほど上がり、全期間型より高くなります。この前提では、35年間の総返済額は全期間型のほうが16万円ほど少なくなりました。
6年目以降の返済額の上がり方は、そのときの店頭金利と引下げ幅で決まります。子どもの進学で教育費が増える時期と、引下げ幅が縮む時期が重ならないかを、返済予定表で確かめておくと家計の見通しが立てやすくなります。
金融機関が設ける優遇の種類
金融機関の優遇には、住宅の性能や家族構成などを条件にした商品があります。国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」(2025年度)では、回答した金融機関のうち、次の割合が金利優遇の商品を取り扱っていました。
| 金利優遇の種類 | 取り扱っている機関の割合 |
|---|---|
| 環境配慮型 | 21.4% |
| 住宅の質誘導型(耐震、省エネ、バリアフリー誘導等) | 20.5% |
| 少子化対策型 | 14.3% |
| 預金残高連動型 | 1.8% |
預金残高連動型は、住宅ローン残高から普通預金残高を差し引いた金額に金利がかかる商品です。同じ調査では、金利ではなく返済条件の優遇として、「産休・育休期間返済緩和型」を17.7%の機関が取り扱っていました。
どの種類も、取り扱っているのは一部の金融機関で、条件と引下げ幅は商品ごとに決まっています。特定の銀行に特定の商品があるかどうかは、その金融機関の商品概要説明書で確かめてください。
フラット35の金利引下げと子育てプラス
全期間固定金利のフラット35には、条件に応じて当初の一定期間の金利を下げる公的な制度があります。2024年2月13日以降の資金受取分からポイント制になり、家族構成、住宅性能、維持管理、地域連携の4つのカテゴリーのメニューを組み合わせ、1ポイントにつき当初5年間、年0.25%金利が下がります。
家族構成のメニューが「フラット35子育てプラス」です。借入申込年度の4月1日時点で18歳未満の子ども(胎児を含む)がいる世帯と、夫婦のいずれかが同じ時点で40歳未満の若年夫婦世帯が対象です。若年夫婦世帯または子ども1人なら当初5年間年0.25%、2人なら年0.5%、3人なら年0.75%下がります。住宅性能のメニューにはフラット35Sがあり、ZEHなら当初5年間年0.75%の引下げです。
2026年10月の最頻金利(融資率9割以下・新機構団信付き、借入期間21年以上35年以下)は年3.83%でした。この金利で3,000万円を35年借りた場合、子ども2人の世帯は当初5年間の毎月返済額が12万9,791円から12万1,050円になり、月8,700円ほど少なくなります。
子育てプラスやフラット35Sには予算があり、予算金額に達する見込みになると受付が終わります。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内などで新築住宅を建てる・買う場合は、子育てプラスを使えません。
住宅の性能は住宅ローン減税にも関わる
金利の引下げとは別に、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)でも住宅の性能と家族構成が控除額に影響します。年末のローン残高の0.7%を、所得税(一部は翌年の住民税)から最大13年間差し引く制度で、令和8年度税制改正で2030年12月31日までの入居分に延長されました。
2026年以降に入居する新築住宅の借入限度額は次のとおりです。19歳未満の扶養親族がいる子育て世帯と、夫婦のいずれかが40歳未満の若者夫婦世帯には上乗せがあります。
| 住宅の種類(新築) | 借入限度額 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 |
省エネ基準適合住宅は、2028年以降に建築確認を受けるものは対象外になります。住宅の性能は、フラット35Sや金融機関の住宅の質誘導型の優遇とも重なるので、物件を選ぶ段階で性能の証明書類がそろうかを確かめておくと、金利と減税の両方の手続きが進めやすくなります。
金利タイプの違いや金利が決まる仕組みは、こちらの記事で解説しています。
フラット35の利用条件や試算は、こちらの記事でくわしく取り上げています。
出典
- 金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf
- 金利の引下げとは?(【フラット35】住宅ローンの基礎知識、住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/loan/atoz/02.html
- 令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(国土交通省住宅局)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf
- 前回検討会における質問事項について(2010年2月、国土交通省住宅局)https://www.mlit.go.jp/common/000109268.pdf
- 長・短期プライムレート(主要行)の推移(日本銀行)https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm
- 【フラット35】(住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35/index.html
- 長期固定金利住宅ローン【フラット35】トップページ(住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/index.html
- 子育て世帯を応援する【フラット35】子育てプラス 2024年2月13日スタート!(住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/topics/20231110.html
- 【フラット35】子育てプラス(住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35kosodate-plus/index.html
- 【フラット35】S(住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35s/index.html
- 住宅ローン減税(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html
- 住宅を新築したとき・建築後使用されたことのない住宅(分譲住宅、建売住宅)を取得したとき(住宅ローン減税、国土交通省)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000325.html
よくある質問
- 優遇金利の条件は、どの金融機関でも同じですか?
- 同じではありません。店頭金利からの引下げを受けるための条件は金融機関が定めており、金融機関ごとに異なります。実際の引下げ幅と条件は、事前審査の結果や商品概要説明書で確かめてください。
- 変動金利型で優遇幅が決まっていれば、金利は上がりませんか?
- 上がることがあります。優遇幅は店頭金利(基準金利)からの差なので、基準金利が上がれば適用金利も上がります。変動金利型の基準金利は短期プライムレートに連動するのが一般的です。
- フラット35子育てプラスの「子ども」に、おなかの中の子は含まれますか?
- 含まれます。借入申込年度の4月1日時点で18歳未満の子どもが対象で、胎児も数えます。子どもがいなくても、夫婦のいずれかが40歳未満なら若年夫婦世帯として当初5年間年0.25%の引下げを受けられます。
- 住宅ローン減税を受けるには、何が必要ですか?
- 入居した年分の確定申告が必要です。給与所得者は、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。
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カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。
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