株式持ち合いの基礎知識と最新動向

資産形成・投資memStock編集部(更新: 2026年10月16日)
株式持ち合いの基礎知識と最新動向

保有している株や、これから買おうとしている会社のニュースで「政策保有株式の売却」「持ち合い解消」という言葉を見かけ、意味を調べている方に向けて基本をまとめます。株式持ち合いとは、企業同士が取引関係の維持などを目的に、互いの株式を長く持ち合うことです。

持ち合いは長い期間をかけて減ってきました。東京証券取引所などの「2025年度株式分布状況調査」(2026年7月公表)では、事業法人等の株式保有比率は17.7%で、調査開始以来の最低です。仕組みとメリット・デメリット、解消の背景にあるルールの変化、そして個人投資家が自分で確かめられることを順に整理します。

株式持ち合いとは

株式持ち合いは、A社がB社の株式を持ち、同時にB社もA社の株式を持つように、企業同士が互いの株式を長期に保有し合う関係です。売買で利益を得るためではなく、取引関係の維持や経営の安定を目的とする点が、ふつうの投資と違います。

形は大きく分けて2種類です。A社とB社が直接持ち合う「直接持ち合い」と、A社が関連会社C社を通じてB社の株式を持つような「間接持ち合い」です。

上場企業の開示やコーポレートガバナンス・コードでは、こうした株式を「政策保有株式」と呼びます。有価証券報告書の言葉では、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式のことです。持ち合いは、政策保有株式のうち相手も自社株を持っている状態と考えると分かりやすくなります。

持ち合い株式にも議決権が付くため、株主総会で互いの経営に影響を与えられます。ただし会社法第308条により、ある会社が相手の総株主の議決権の4分の1以上を持つなど、実質的に経営を支配できる関係にある場合、支配されている側の会社が持つ株式には議決権がありません。持ち合いの比率が高いと、議決権が使えなくなる場面があるということです。

株式持ち合いのメリットとデメリット

持ち合いには、企業にとって経営を安定させる面と、株主から見て経営への規律が弱まる面の両方があります。

企業にとってのメリット

経営の安定:互いに株を持ち合う安定株主がいると、敵対的買収を受けにくくなり、経営者は長期的な計画を立てやすくなります。

長期的な取引関係:株式を通じたつながりが、取引先との長い協力関係を支える面があります。

株主構成の安定:持ち合い株式は市場で売られにくいため、株主の顔ぶれが急に変わりにくくなります。

株主から見たデメリット

経営への規律が弱まる:持ち合い先は株主総会で互いの経営陣を支持しやすいため、経営者に対するチェックが働きにくくなります。

資金が寝てしまう:持ち合い株式に使われている資金は、本業への投資や株主還元には回りません。保有に見合う利益が出ているかが問われます。

売却時の需給への影響:持ち合いが一度に解消されると、まとまった株式が市場に出て、株価の下押し要因になることがあります。

コーポレートガバナンス・コードが政策保有株式について、保有の便益やリスクが資本コストに見合っているかを毎年検証するよう求めているのは、こうしたデメリットがあるためです。

持ち合いはどこまで減ったか

上場企業の株式を誰が持っているかは、東京証券取引所など全国4証券取引所の「株式分布状況調査」で毎年公表されています。持ち合いの比率そのものは公的な統計にありませんが、持ち合いの主な担い手である事業法人等と銀行・保険会社の保有比率の推移から、流れをつかめます。

投資部門(金額ベースの保有比率) 1990年度 2025年度
事業法人等 30.1% 17.7%(過去最低)
都銀・地銀等 15.7% 1.7%(過去最低)
生命保険会社 12.0% 2.7%(過去最低)
損害保険会社 3.9% 0.5%(過去最低)
外国法人等 4.7% 34.7%(過去最高)

事業法人等の保有比率は1987年度の30.3%が最高で、2025年度は17.7%と、2024年度の18.7%からさらに1.0ポイント下がりました。都銀・地銀等は1985年度の20.9%が最高でしたが、2025年度は1.7%です。一方、外国法人等は34.7%と過去最高を更新し、1990年度から30.0ポイント増えています。

数字を読むときは2点に注意が必要です。1点目は、事業法人等の保有には持ち合い以外の株式(子会社株や自己株式)も含まれることです。2025年度の自己株式は保有比率4.42%で、その大部分は事業法人等に数えられています。2点目は、比率が株価の影響を受けることです。2025年度は事業法人等の保有金額そのものは21.2%増えましたが、全体の増加率28.0%を下回ったため、比率が下がりました。

解消を促してきたルールの変化

持ち合い解消の背景には、投資家と企業の双方に向けたルールの整備があります。

ルール 主な内容
スチュワードシップ・コード(金融庁) 機関投資家向け。2014年2月策定、2017年5月・2020年3月改訂、2025年6月26日に第三次改訂
コーポレートガバナンス・コード(東証) 上場企業向け。2015年に適用開始、2026年7月21日改訂。原則1-4で政策保有株式を扱う
有価証券報告書の開示(開示府令) 2019年1月の改正で保有の合理性の検証方法などの開示を求め、個別開示の銘柄数を30から60に拡大。2025年1月の改正で、純投資目的に変えた株式の開示を追加

2026年7月21日に改訂されたコーポレートガバナンス・コードの原則1-4は、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方を開示し、毎年、取締役会で個別銘柄ごとに保有目的や資本コストとの見合いを検証して、その内容を開示するよう求めています。あわせて、議決権行使の具体的な基準を定めて開示すること、自社株を持つ相手から売却の意向が示されたときに取引の縮減をほのめかすなどして売却を妨げないこと、経済合理性を検証しないまま取引を続けないことも定めています。

2025年1月の開示府令の改正は、政策保有株式を「純投資目的」に看板だけ掛け替える例への対応です。金融庁は有価証券報告書のレビューで、保有目的を変えた株式が実質的には政策保有株式を持ち続けているのと変わらない状態になっている課題を見つけ、最近5事業年度以内に保有目的を変えた株式の銘柄や変更理由、その後の保有・売却方針の開示を求めました。2025年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用されています。

個人投資家が確かめられること

持ち合いの状況は、会社のニュースだけでなく、自分で一次資料を見て確かめられます。有価証券報告書は金融庁のEDINET(電子開示)で閲覧でき、「株式の保有状況」の欄に政策保有株式の情報がまとまっています。

確かめたいのは次のような点です。

  • 縮減の方針:政策保有株式をどう減らしていくか、方針や目標が書かれているか
  • 銘柄ごとの保有目的:「取引関係の維持・強化」のような一言だけでなく、具体的な取引内容が書かれているか
  • 検証の中身:取締役会でどのように保有の適否を確かめたか
  • 保有目的の変更:政策保有から純投資目的に変えた株式があれば、その理由と今後の方針

金融庁の2026年3月のレビュー結果でも、銘柄ごとの保有目的が具体的に書かれていない、保有目的が安定株主の確保にあるのにそれが書かれていない、取締役会での検証についての開示と実態に食い違いがある、といった課題が挙げられています。開示が具体的かどうかは、会社の姿勢を見る手がかりになります。

持ち合い解消のニュースを見たときは、売却で得た資金を何に使うのか(成長投資、借入金の返済、自社株買い・配当など)も確かめておきましょう。売却そのものは一時的な需給の悪化につながることがある一方、使い道によっては資本効率の改善につながります。株式投資は元本が保証されないため、持ち合いの状況は業績や財務と並ぶ判断材料の一つとして見ておくと安心です。

株主総会での議決権の仕組みや、株式投資そのものの基本は、次の記事で整理しています。

出典

よくある質問

株式持ち合いとはどういう仕組みですか?
企業同士が互いの株式を長期に保有し合う関係です。取引関係の維持や経営の安定、敵対的買収を受けにくくすることが主な目的です。持ち合い株式にも議決権が付きますが、会社法第308条により、相手の総株主の議決権の4分の1以上を持たれているなど、実質的に経営を支配されている側の会社が持つ株式には議決権がありません。
持ち合いが多いと、株主にとってどんな問題がありますか?
持ち合い先が互いの経営陣を支持しやすいため、経営へのチェックが弱まりやすくなります。また、持ち合い株式に資金が使われる分、本業への投資や株主還元に回るお金が減ります。こうした理由から、コーポレートガバナンス・コードは保有の便益が資本コストに見合っているかを毎年検証し、開示するよう求めています。
持ち合いは今どのくらい減っていますか?
持ち合い比率そのものの公的な統計はありませんが、東京証券取引所などの「2025年度株式分布状況調査」では、事業法人等の株式保有比率が17.7%、都銀・地銀等が1.7%と、どちらも調査開始以来の最低でした。事業法人等の保有には子会社株や自己株式も含まれる点に注意が必要です。
持ち合いの状況はどこで確かめられますか?
会社の有価証券報告書の「株式の保有状況」の欄です。金融庁のEDINETで閲覧できます。政策保有株式の縮減方針、銘柄ごとの保有目的、取締役会での検証の内容、純投資目的に変更した株式の理由と今後の方針などが記載されています。
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この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

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この記事を監修した人

山田 尚貴

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。

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