金利が上がったのに、返済額が変わらないのはなぜ? — 住宅ローンの「見えない変化」

お金の話memStock編集部
金利が上がったのに、返済額が変わらないのはなぜ? — 住宅ローンの「見えない変化」

政策金利が上がったというニュースを見て、口座アプリを開いてみる。けれど毎月の引き落とし額は、先月と同じだった。あるいは逆に、金額が変わっていて驚いた方もいるかもしれません。どちらも起こりうることで、どちらかが異常というわけではありません。違いは、契約の中にあります。そして返済額が変わっていない場合でも、何も動いていないわけではありません。変動金利型の住宅ローンで、いま何が変わっていて、何が変わっていないのか。順に見ていきます。

金利が上がった、というところまでは知っている

日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コールレートの誘導目標)を1.0%程度に引き上げることを決めました。それまでは0.75%程度で、こちらは2025年12月19日の決定によるものです。7月31日の会合では据え置かれ、2026年8月時点でも1.0%程度となっています。

日銀は同じ公表文の中で「政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持される」と説明しています。今後についても引き上げていく方針は示していますが、そのタイミングやペースは今後検討するとしており、この先どうなるかが決まっているわけではありません。

借りている側の状況を示す調査もあります。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査」(2026年1月調査、回答1,237件)によると、住宅ローンを借りた人のうち変動型を選んだ人は75.0%。最も多い選択です。固定期間選択型は14.9%、全期間固定型は10.1%でした。

同じ調査に、もうひとつの数字があります。金利が上がったときに返済額がどれくらい増えるかについて、「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と答えた人の合計が52.0%。半数以上の人が、はっきりとは分からないままでいる、ということです。

分かっていないのが少数派だという話ではありません。

「5年ルール」は、金融機関ごとの決まり

変動金利型の住宅ローンには、返済額の変わり方を定めた仕組みがあります。「5年ルール」「125%ルール」と呼ばれるものです。

ある金融機関の案内では、5年ルールは「返済額は5年ごとに見直しします。金利が変更になっても、次回の見直しまで返済額は変わりません(元金と利息の内訳は変わります)」と説明されています。125%ルールのほうは「新返済額は前回までの返済額の125%を超えることはありません」というものです。

ここで押さえておきたいのは、この扱いが金融機関ごとに違う、ということです。住宅金融支援機構が金融機関に直接聞いた「住宅ローン貸出動向調査」(2025年度/299社を対象に298社が回答、2025年6月末現在)では、適用金利が上昇した場合の返済額の見直しについて、いわゆる「5年・125%ルール」が最も多いとされています。最も多い、であってすべてではありません。実際、自行の住宅ローンには5年ルールも125%ルールもないと公式サイトに明記している銀行もあります。そうした契約では、金利が上がれば、その分が返済額に反映されます。

金利の見直し時期も契約によります。同じ調査では、返済中の適用金利のもとになる基準金利を見直す時期は「半期毎(4月、10月)」が最も多く、毎月の利息額が変更となるのは基準金利を見直した月の「3か月後から」が最も多いとされています。調査に挙げられている例では、4月1日に基準金利を見直した場合、6月に適用金利が見直され、7月に利息額が変わります。なお基準金利の見直しにあたって主に参照する金利は「短期プライムレート」が最も多い、とも報告されています。いずれも「最も多い」であって、金融機関によって異なります。

そして5年ルールがある契約では、金利が見直されても、返済額そのものは次の見直しまで変わりません。全国銀行協会も「変動金利住宅ローンの金利は、経済情勢などに応じて通常半年ごとに見直されますが、元利均等返済の返済額の見直しは、通常5年毎です」と説明しています。金利が動く周期と、返済額が動く周期が、そもそも別々になっているということです。

変わっていないのは、返済額のほう

5年ルールがある契約で、金利が上がったあとに何が起きているのか。先ほどの案内にあったとおり、変わるのは元金と利息の内訳です。

毎月の返済額は、元金を返す分と、利息を払う分に分かれています。金利が上がると、同じ返済額の中で利息に回る分が増え、その分だけ元金に充てられる分が減ります。結果として、元本の減るペースが遅くなります。引き落とされる金額が同じでも、返済の進み方のほうは変わっている、ということです。

5年ルールと125%ルールは、返済額が急に跳ね上がることを防ぐ仕組みです。ただし、返済そのものを軽くする仕組みではありません。金融機関の説明の中には、金利上昇の局面では元本の返済ペースが遅くなって総返済額が増え、最後の返済が高額になる可能性がある、としているものもあります。

なお、金利が急激に上がった場合には、利息が返済額そのものを上回り、元金がまったく減らなくなる「未払利息」が生じることがあるとされています(全国銀行協会)。返済額に反映されなかった利息は、なくなるわけではなく、支払われていない利息として蓄積していくとされています。これは大きく上昇した場合に起こりうるという話で、条件は借入残高や残りの期間によっても変わります。

自分の契約は、どこを見れば分かるのか

ここまでの話は、どれも「契約による」で終わっています。5年ルールがあるかどうかも、金利の見直し時期も、返済額に反映される時期も、契約している金融機関によって違います。答えは、手元の契約の中にあります。返済額が変わっていない人にとっても、すでに変わった人にとっても、見る場所は同じです。

多くの金融機関では、インターネットバンキングにログインすると、いま適用されている金利と返済額を確認できます。返済予定表には、毎回の返済額のうちいくらが元金に充てられ、いくらが利息なのかが書かれています。変動金利の場合、この予定表を定期的に送っている金融機関もあります。金利や返済額が変わるときには、メールや書面で案内が届くのが一般的です。

ただし、様式も案内の方法も金融機関によって異なります。書類が見当たらなければ、契約している金融機関のサイトを開くか、直接問い合わせるのが確実です。

問い合わせることをためらう必要も、あまりないようです。先ほどの貸出動向調査では、1年前と比べて住宅ローン金利の見直しに関する照会が「増えている」または「多少増えている」と答えた金融機関が60.8%にのぼりました。対応として新たに取り組んだことは「面談を通じた案内の開始、充実」が最も多いとされています。同じことを聞いている人は、増えています。金利見直し時の説明方法は「書面による通知(郵送文書)」が最も多いとされているので、まずは届いた封筒を開けてみる、というところからでも構いません。

見るとしたら、たとえば、5年ルールと125%ルールが自分の契約にあるのかどうか。適用されている金利が、基準となる金利からどれだけ引き下げられているか。次の見直しがいつなのか。いずれも、金融機関に聞けば分かることです。

分かったところで、何かを決めなくてもいい

契約の内容が分かったからといって、そこから何かを決めなければいけないわけではありません。どうするのが良いかは家庭ごとの事情によって変わりますし、この記事はそこには踏み込みません。

変動を選んだことにも、固定を選んだことにも、そのときの理由があったはずです。いま確認する価値があるのは、その判断が正しかったかどうかではなく、いま自分の返済がどう進んでいるか、のほうです。

引き落とし額だけを見ていると、その部分は見えません。見えていないことが、そのまま問題だというわけでもありません。ただ、いつか考える必要が出てきたときに、手元に材料があるかどうかは変わってきます。返済予定表を一度開いてみるくらいのことなら、今日のうちにできます。

本記事は2026年8月時点で公表されている情報をもとにしています。政策金利は日本銀行の2026年6月16日および7月31日の公表文によります。5年ルール・125%ルールの有無や内容、金利の見直し時期、返済額への反映時期は金融機関によって異なります。ご自身の契約内容については、契約している金融機関にご確認ください。

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