短期プライムレートと変動金利の関係

変動金利型の住宅ローンの資料を読むと、「短期プライムレート」という言葉が出てきます。返済中の人には、金融機関から届く金利変更のお知らせでなじみのある言葉です。名前は聞いても、それが何で、なぜ自分の返済額に関係するのかは見えにくい金利です。
短期プライムレートは、2009年から約15年間、同じ水準のままでした。2024年に日本銀行がマイナス金利政策を解除してからは、利上げのたびに引き上げられています。仕組みと推移、返済額への影響を順に見ていきます。
短期プライムレートとは
日本銀行の説明では、短期プライムレートは、金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利のことです。もともとは企業向けの金利で、住宅ローンのための金利ではありません。名前の似た長期プライムレートは、優良企業向けの1年以上の貸出に適用する最優遇金利で、こちらとは別の金利です。
各銀行が自分で決める金利なので、銀行ごとに違うこともあります。日銀が公表している「長・短期プライムレート(主要行)」の統計は、都市銀行が決めた短期プライムレートのうち、最も多くの銀行が採用している金利(最頻値)と、最高・最低の金利を載せています。1989年1月以降は、銀行の総合的な資金調達コストなどをもとに決める方式です。
「最優遇」という名前ですが、政策金利より低い金利ではありません。2026年9月11日現在の最頻値は2.375%で、同じ時期の政策金利(1.0%程度)を1.375%上回っていました。
約15年ぶりに動き出した短期プライムレート
日銀の統計で最頻値の推移を見ると、2009年1月13日に1.475%になってから、2024年9月まで変わりませんでした。その後は、日銀の利上げのあとを追うように引き上げられています。
| 日銀の決定 | 政策金利の誘導目標 | 短期プライムレート(最頻値) |
|---|---|---|
| 2024年3月19日 | 0〜0.1%程度 | 1.475%(据え置き) |
| 2024年7月31日 | 0.25%程度 | 2024年9月2日から1.625% |
| 2025年1月24日 | 0.5%程度 | 2025年3月3日から1.875% |
| 2025年12月19日 | 0.75%程度 | 2026年2月2日から2.125% |
| 2026年6月16日 | 1.0%程度 | 2026年8月3日から2.375% |
| 2026年9月18日 | 1.25%程度 | 9月11日現在の統計には未反映 |
政策金利の引き上げから1〜2か月ほどで、短期プライムレートも動いています。2025年以降は、政策金利と同じ0.25%ずつの引き上げでした。日銀は2026年9月の会合で政策金利を1.25%程度に引き上げ、9月24日から適用しています。この利上げを受けた動きは、統計の次の更新で確かめられます。
変動金利型の住宅ローン金利とのつながり
国土交通省の資料では、民間の変動金利型住宅ローンは短期プライムレートを基準に、年2回適用金利が変わる仕組みが業界の標準として紹介されています。住宅金融支援機構も、変動金利型の適用金利は日銀の政策金利の影響を受け、見直しは半年に1回が一般的だと説明しています。
つまり、日銀が政策金利を上げると、まず短期プライムレートが上がり、それに連動して各金融機関の変動金利型の基準金利が上がり、次の見直しで返済中の人の適用金利が変わる、という順番です。自分の契約の基準金利が何に連動し、いつ見直されるかは、契約書や商品説明書に書かれています。
なお、全期間固定金利型の金利は10年物国債の利回り(長期金利)の影響を受けるもので、短期プライムレートとは別の動きをします。
短期プライムレートが上がると、返済額はいくら増えるか
3,000万円を35年(420回)・元利均等返済で借り、適用金利が年1.5%から上がった場合を計算しました(ボーナス払いなし、金利が上がった後の返済額で借り始めた場合の比較です)。
| 適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 年1.5% | 9万1,855円 | 約3,858万円 |
| 年1.75%(0.25%上昇) | 9万5,573円 | 約4,014万円 |
| 年2.0%(0.5%上昇) | 9万9,379円 | 約4,174万円 |
| 年2.5%(1.0%上昇) | 10万7,249円 | 約4,504万円 |
短期プライムレートが0.25%上がり、適用金利も同じだけ上がると、毎月の返済額は約3,700円増えます。1.0%上がれば約1万5,400円、総返済額では約646万円の差です。金利が0.1%違うだけでも、1.5%と1.6%の比較で総返済額は約62万円変わります。
すでに返済中の人は、すぐにこの額だけ引き落としが増えるとは限りません。毎月の返済額を5年ごとに見直し、増える幅を1.25倍までとする「5年ルール」「125%ルール」のある契約では、金利が上がっても5年間は返済額が変わらず、その間は返済額のうち利息に回る分が増えます。返済額が据え置かれている間にも、利息は増えています。残高が3,000万円あるとき、年1.5%の利息は1か月あたり3万7,500円、年1.75%なら4万3,750円です。0.25%の上昇で、毎月6,250円が利息に回る分として増え、その分だけ元金の減りが遅くなります。引き落とし額が同じでも、返済は確実に重くなっています。
この2つのルールは金融機関が商品ごとに定めるもので、すべての商品にあるわけではありません。返済額が変わらない間の備え方は、別の記事で試算とともに紹介しています。
短期プライムレートの動きを追うには
短期プライムレートの推移は、日銀の「長・短期プライムレート(主要行)の推移」で、2001年以降の実施日ごとに確かめられます。データは月1回をめどに更新されますが、毎月必ず変わるわけではありません。個別の銀行の金利は、各行のホームページに載っています。
政策金利を決める日銀の金融政策決定会合の結果は、日銀のホームページに公表文として掲載されます。利上げが決まってから短期プライムレートや住宅ローンの基準金利が動くまでには時間差があるので、会合の結果を見た時点で、自分の返済額が次にいつ見直されるかを確かめておくと、家計の準備が早めに始められます。
住宅ローン金利の種類や返済方法の違いは、こちらで解説しています。
出典
- 長・短期プライムレート(主要行)の推移(日本銀行)https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm
- 「長期プライムレート」、「短期プライムレート」はどのようなものですか?(教えて!にちぎん、日本銀行)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/statistics/h09.htm
- 金融政策の枠組みの見直しについて(2024年3月19日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2024/k240319a.htm
- 金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について(2024年7月31日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2024/k240731a.htm
- 金融市場調節方針の変更について(2025年1月24日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2025/k250124a.htm
- 金融市場調節方針の変更について(2025年12月19日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2025/k251219a.htm
- 金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260616a.pdf
- 金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日、日本銀行)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf
- "金利のある世界"でどう変わる?これからの住宅ローン選びを考えよう(住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/lp/kinri/index.html
- 金利のタイプとは?(【フラット35】、住宅金融支援機構)https://www.flat35.com/hajimete/atoz/01.html
- 金利上昇を経験した主要国の住宅ローン利用者の状況(季報「住宅金融」職員レポート、住宅金融支援機構)https://www.jhf.go.jp/files/topics/8468_ext_99_5.pdf
- 前回検討会における質問事項について(2010年2月、国土交通省住宅局)https://www.mlit.go.jp/common/000109268.pdf
よくある質問
- 短期プライムレートは誰が決めているのですか?
- 各銀行が自分で決めています。日銀が決める金利ではありません。日銀の統計は、都市銀行が決めた金利のうち最も多くの銀行が採用している金利と、最高・最低の金利を集めたものです。
- 短期プライムレートは、市場金利より低いのですか?
- 低くありません。日銀の統計では、短期プライムレートは政策金利を上回る水準で推移しています。2026年9月11日現在の最頻値は2.375%で、政策金利(1.0%程度)を上回っていました。
- 短期プライムレートが上がると、変動金利型の金利はすぐ上がりますか?
- すぐではありません。変動金利型の金利の見直しは半年に1回が一般的で、見直しの時期は契約で決まっています。さらに5年ルールのある契約では、毎月の返済額は5年ごとにしか見直されません。
- 今の短期プライムレートはどこで確認できますか?
- 日銀の「長・短期プライムレート(主要行)の推移」のページで、最頻値と最高・最低の金利を確認できます。
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カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。
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