高額療養費の年間上限、超えた分はいつ戻る? — 協会けんぽは2027年8月から申請受付

お金の話memStock編集部
高額療養費の年間上限、超えた分はいつ戻る? — 協会けんぽは2027年8月から申請受付

会社の健康保険組合や協会けんぽから、「高額療養費制度が見直されました」というお知らせが届いている時期です。子どもの手術や出産、親の入院の予定がある家庭では、医療費が月にいくらまでで済むのかが、そのまま家計の見通しにかかわります。

2026年8月診療分から、高額療養費の月の上限が引き上げられ、新たに「年間上限」ができました。年間上限の1年は、8月から翌年7月までです。厚生労働省と協会けんぽ、健康保険組合の案内をもとに、共働き・子育て世帯の目線で何が変わったのかを整理しました。

8月診療分から、月の上限が上がりました

高額療養費は、1か月に病院や薬局の窓口で払った自己負担が上限を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。制度の基本は2024年12月の記事で紹介しています(見直し前の内容です)。

今回の見直しで、70歳未満の月の上限はすべての区分で上がりました。一方、直近12か月に3回以上上限に達すると4回目から下がる「多数回該当」の額は据え置かれています。たとえば年収約370万〜約770万円の区分で、1か月の医療費が100万円(3割負担なら窓口で30万円)かかった場合、月の上限は見直し前の87,430円から92,940円になります。

年収の目安 見直し前の月の上限 2026年8月からの月の上限 多数回該当 年間上限
約1,160万円〜 252,600円+(医療費−842,000円)×1% 270,300円+(医療費−901,000円)×1% 140,100円 168万円
約770万〜約1,160万円 167,400円+(医療費−558,000円)×1% 179,100円+(医療費−597,000円)×1% 93,000円 111万円
約370万〜約770万円 80,100円+(医療費−267,000円)×1% 85,800円+(医療費−286,000円)×1% 44,400円 53万円
〜約370万円 57,600円 61,500円 44,400円 53万円(※)
住民税非課税 35,400円 36,900円 24,600円 29万円

※年収約200万円未満であることが確認できた人は41万円。

区分は年収そのもので決まるわけではありません。会社員が入る健康保険では「標準報酬月額」(毎月の給与をもとに決まる、保険料計算の基準額)、国民健康保険では前年の所得で決まり、表の年収は目安です。共働きの夫婦はそれぞれの給与で区分が決まるので、夫と妻で区分が違うこともあります。自分の区分は、マイナポータルや限度額適用認定証、区分が記載された資格確認書で確かめられます。

健康保険組合の中には「付加給付」という独自の上乗せ給付があり、見直し後も自己負担は原則変わらないと案内している組合もあります。健保組合に入っている人は、組合のお知らせで実際の負担を確かめられます。

年間上限は、世帯の12か月分の自己負担にかかります

年間上限は、8月から翌年7月までの12か月に払った自己負担の合計に対する上限です。合計が上限に達すると、それ以上の分は保険者(加入している健康保険の運営元)から払い戻しを受けられます。最初の1年は2026年8月から2027年7月までです。

合計する単位は、個人ではなく世帯です。ここでいう世帯は、同じ健康保険に入っている被保険者(本人)と被扶養者(扶養に入っている家族)を指します。

月の上限に届かなかった月の分も合計に入ります。厚労省の試算では、年収約370万〜約770万円の区分で多数回該当にならず、毎月7〜8万円の自己負担が続く人は、年間の負担が見直し前の76.7万円から53.0万円に下がるとされています。月の上限は上がりますが、治療が長く続く人は負担が軽くなる場合がある、というのが厚労省の説明です。

ただし、70歳未満の人は払った医療費をすべて足せるわけではありません。合計に入るのは、医療機関ごと・1か月ごとに21,000円以上になった自己負担だけです。入院と外来、医科と歯科は分けて見て、院外処方の薬局で払った分は処方せんを出した医療機関の分と合わせます。

子どもの小児科に何度か通って1か月数千円という支払いは、同じ医療機関で21,000円に届かなければ合計に入りません。差額ベッド代や入院中の食事代も、これまでどおり対象外です。

払い戻しは、いったん窓口で払ったあとです

年間上限を超えても、病院の窓口での支払いがその場で止まるわけではありません。厚労省は、超えた分をいったん窓口で負担し、あとで保険者から払い戻す「償還払い」と案内しています。

協会けんぽ(主に中小企業の会社員と家族が入る健康保険)は、年間上限の申請を2027年8月から受け付けるとしています。申請書はまだ掲載されていません。健康保険組合は請求方法を「決まり次第案内」とする段階で、国民健康保険は市区町村ごとに扱いが違う場合があります。

検討段階の厚労省資料では、年間上限は「まずは患者本人からの申出を前提とした運用で開始」する方針が示されていました。申請しなくても振り込まれるのかどうかは、現時点では示されていません。加入先から届く案内を待つことになります。

協会けんぽに入っている家庭なら、2026年8月以降の医療費で年間上限を超えた分は、申請が始まる2027年8月以降に戻ってくることになります。年収約200万円未満の人の41万円の年間上限も、2026年8月診療分から対象で、払い戻しは2027年8月以降と厚労省の表に書かれています。長い治療が見込まれるときは、1年近く立て替える前提で手元のお金を見ておくと慌てずにすみます。

見直しの背景についての質問は、厚労省のコールセンター(0120-617-111、2027年3月まで)が受け付けています。自分の区分や払い戻しの相談は、加入している健康保険に問い合わせます。

共働きの夫婦は、それぞれの健康保険で別々に合計します

夫婦が別々の会社で働き、それぞれの健康保険に入っている場合を考えます。年間上限の「世帯」は同じ健康保険の被保険者と被扶養者なので、この定義に沿うと、夫の医療費は夫の健康保険で、妻の医療費は妻の健康保険で、別々に合計することになります。同じ家で暮らしていても、家族全員の医療費をひとつの上限に当てはめるわけではありません。

子どもの分は、扶養に入っている側の健康保険で合計します。子どもが夫の扶養に入っていれば、子どもの自己負担は夫の分と合わせて数えます。

年の途中で転職したり、退職して配偶者の扶養に入ったりすると、月の上限の「多数回該当」の回数は引き継がれません。年間上限を前の保険の分と通算できるかどうかは、今のところ厚労省や協会けんぽの資料では示されていないので、加入先に確かめてください。

自治体の子ども医療費助成で窓口負担がゼロや少額になっている分を、年間上限の合計でどう扱うかも、公的な資料では確認できませんでした。気になる場合は、加入先や自治体に確かめてください。

医療費控除の「1年」は1月から12月です

確定申告の医療費控除は、1月1日から12月31日までに払った医療費が対象です。高額療養費の年間上限(8月から翌年7月)とは、区切りが5か月ずれています。

医療費控除では、高額療養費で戻ってきたお金を「補てんされる金額」として医療費から差し引きます。2026年分の確定申告は2027年2〜3月で、その時点では協会けんぽの年間上限の申請はまだ始まっていません。国税庁は、補てん額が申告時に決まっていない場合は見積額で差し引き、あとで金額が違えばさかのぼって訂正すると説明しています。年間上限の払い戻しをどう見積もるかは、税務署に確かめてから申告すると安心です。

医療費控除の明細書を出した場合、申告期限から5年間は税務署から領収書の提示を求められることがあります。家族の医療費の領収書を、1月から12月でも8月から翌年7月でも見返せるように日付順にまとめておくと、どちらの手続きにも使えます。

2027年8月に、月の上限がもう一度変わります

2027年8月には所得区分が細かく分かれ、月の上限がもう一度変わります。たとえば今の「年収約370万〜約770万円」の区分は3つに分かれ、年収約510万円以上の2つの区分では月の上限が上がります。年間上限の額(53万円など)は変わりません。年収約200万円未満の人の多数回該当は、44,400円から34,500円に下がります。

年間上限ができたことで、家族の医療費を1年単位で見る区切りが制度の側にもできました。ただ、共働きの家庭では夫婦で加入先が違い、払い戻しの窓口も申請の時期も一つにはならないことがあります。夫と妻の医療費を、それぞれ誰がどこに記録しておくのか。次に家族の誰かの入院や手術の予定を聞いたとき、夫婦の区分と子どもの扶養先を一緒に確かめておくと、申請の案内が届いたときに落ち着いて動けます。

この記事は2026年9月26日時点の厚生労働省・協会けんぽ・健康保険組合の公表資料をもとにしています。

出典

よくある質問

年間上限を超えた分は、申請しないと戻りませんか?
厚労省は、年間上限を超えた分はいったん窓口で払い、あとで保険者から払い戻す「償還払い」と案内しています。協会けんぽは2027年8月から申請を受け付けるとしており、健康保険組合や国民健康保険の手続きは加入先ごとに案内される予定です。申請しなくても振り込まれるかどうかは、現時点では示されていません。
夫婦で別々の健康保険に入っています。2人の医療費を合わせて年間上限にできますか?
年間上限を合計する「世帯」は、同じ健康保険の被保険者と被扶養者です。この定義に沿うと、夫婦がそれぞれ別の健康保険の被保険者であれば、医療費はそれぞれの健康保険で別々に合計することになります。子どもの分は、扶養に入っている側の健康保険で合計します。
子どもの通院で払った医療費も、年間上限の合計に入りますか?
70歳未満の人は、医療機関ごと・1か月ごとに21,000円以上になった自己負担だけが合計に入ります。1か月数千円の通院は、同じ医療機関で21,000円に届かなければ入りません。自治体の子ども医療費助成を受けた分の扱いは公的な資料で確認できていないため、加入先や自治体に確かめてください。
年収約200万円未満の場合、年間上限はいくらですか?
年収約200万円未満の区分に当たることが確認できた人は、年間上限が41万円になります。2026年8月診療分から対象で、払い戻しは2027年8月以降とされています。それ以外の年収約370万円以下の課税世帯の年間上限は53万円です。
2027年8月に年間上限の額も上がりますか?
年間上限の額は変わりません。2027年8月には所得区分が細かく分かれて月の上限が見直され、たとえば年収約510万〜約770万円の人は月の上限が上がります。
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