iDeCoの上限引き上げは12月分から — 掛金を増やす手続きは3通り

年末調整の書類がそろい始める10月下旬、iDeCoの払込証明書のハガキが届きます。今年はそれより先に、加入している金融機関から「掛金額変更」の案内を受け取った人もいるでしょう。夫婦で封筒を開けると、「上限が上がるなら、うちも増やしたほうがいいの?」という話も出てきます。
2026年12月1日、iDeCoの拠出限度額が引き上げられます。企業年金のない会社員なら、月2.3万円から6.2万円へ。ただし、いま払っている掛金は何もしなければそのままです。
国民年金基金連合会(iDeCoの実施主体)の案内には、掛金額の変更を希望する場合は「お手続きが必要」と書かれています。厚生労働省と連合会の資料、国税庁の説明をもとに、何が変わり、何をいつまでに決めればよいかを整理しました。
12月分から、上限は働き方によって変わります
新しい上限が適用されるのは、2026年12月分(2027年1月26日引き落とし分)の掛金からです。区分ごとの月額は次のとおりです。
| 働き方 | 2026年11月分まで | 2026年12月分から |
|---|---|---|
| 会社員(企業年金なし) | 2.3万円 | 6.2万円 |
| 会社員(企業型DC・DBなどあり) | 2.0万円 | 6.2万円から会社の掛金を引いた額 |
| 国家・地方公務員 | 2.0万円 | 5.4万円 |
| 自営業・フリーランスなど | 6.8万円(国民年金基金等と合算) | 7.5万円(同) |
| 専業主婦・主夫(第3号被保険者) | 2.3万円 | 2.3万円(変更なし) |
企業年金のない会社員は、上限が約2.7倍になります。厚生労働省の図解では「3.9万円増額」と表記されています。約2.7倍はこの区分に限った数字で、ほかの働き方には当てはまりません。
企業型DCやDB(確定給付企業年金)がある会社員は、これまでの「iDeCoは2.0万円まで」という頭打ちがなくなります。新しい上限は、6.2万円から企業型DCの会社掛金と、DBなどの「他制度掛金相当額」を引いた額です。厚生労働省はこの区分を「最大4.2万円増額」と表しており、実際の上限は勤め先の掛金によって一人ひとり違います。
たとえば企業型DCだけに加入していて、会社の掛金が月2万円なら、iDeCoは月4.2万円まで出せます。DBにも加入している場合は、そこからさらに他制度掛金相当額を引きます。
公務員の5.4万円は、6.2万円から共済の掛金相当額を引いた額です。連合会の2026年8月の案内でも、国家・地方公務員が旧上限を超えて増やす場合の掛金は「21,000円以上54,000円以下」と示されています。
会社の掛金は、企業型DCの加入者向けWebサイトで確認できます。DBだけがある人や公務員は、勤め先の人事・総務に尋ねる形になります。iDeCoの掛金は5,000円以上・1,000円単位なので、引き算の結果が5,000円未満だと掛金を出せません。
掛金は、自分で届け出ないと変わりません
増やす方法は、手続きする時期によって、書面の事前受付、e-iDeCo、通常の変更届に分かれます。
ひとつは書面の事前受付です。加入先の金融機関から専用の「加入者掛金額変更届【令和8年12月施行事前受付専用】」を取り寄せて提出します。連合会の案内は「2026年9月頃からの受付を予定」と書くだけで、締切日は各金融機関が決めています。auのiDeCoやりそな銀行などは2026年9月1日から10月30日(必着)と案内していますが、加入先によって異なる可能性があるため、自分の加入先の案内で確かめてください。
ふたつめはe-iDeCoです。2026年12月1日(火)から12月24日(木)までに手続きすれば、原則として12月分から反映されます。ただし連合会は、ほかの手続きとの兼ね合いで間に合わず、2027年1月分以降の反映になる場合があるとしています。マイナポータルと連携するためマイナンバーカードが必要で、e-iDeCoを使えない金融機関もあります。
初めてe-iDeCoを使う人は、先に利用申込(アカウント登録)を済ませる必要があります。りそな銀行は、12月上旬は申込が集中して登録完了まで数日以上かかることがあるとして、事前の登録を勧めています。
どちらにも間に合わなかった場合も、通常の変更届で2027年1月分以降の掛金を増やせます。10月30日を過ぎても、増額の機会がなくなるわけではありません。
書面とe-iDeCoの両方で出すと、重複届出として無効になるとりそな銀行は案内しています。事前受付は取り下げや出し直しもできず、連合会から結果の連絡もないため、2027年1月26日の引き落とし額で確認することになります。また、いま年単位(払う月と金額を指定する方法)で払っている人は、加入先に扱いを確認してください。
今年すでに掛金を変えた人でも、12月からの増額には特例があります。掛金の変更は通常「1年に1回」ですが、2026年12月1日から2027年11月30日まで(金融機関での受付日が基準)に、旧上限を超える額へ初めて増額する1回は、この回数に数えません。企業年金のない会社員なら、変更後の額が24,000〜62,000円であれば対象です。旧上限以下での変更や、2回目以降の変更には通常のルールが当てはまります。
なお、同じ2026年12月分(2027年1月26日引き落とし分)の掛金から、連合会に払う加入中の手数料が105円から月120円(税込)に変わります。こちらは手続き不要です。
増やした分の控除は、2027年分から
iDeCoの掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれます。国税庁の説明では、控除の対象は「その年に支払った掛金」です。ここでは自分の口座から引き落とされる払い方を前提にしています。給与天引きで払っている場合の扱いは、勤務先に確認してください。
掛金は翌月26日に口座から引き落とされるため、運営管理機関の案内によると、ある年の控除に入るのは前年12月分から当年11月分までです。2026年12月分は2027年1月26日に引き落とされるので、2027年分の控除になります。12月に掛金を増やしても、2026年の年末調整で出す払込証明書の金額は増えません。増額の効果が税金に表れるのは、2027年の年末調整からです。
会社の掛金が上がると、iDeCoの枠は縮みます
12月には企業型DCの上限も、DBがない場合で月5.5万円から6.2万円に上がります。会社が企業型DCの掛金を引き上げると、6.2万円から引く額が大きくなり、iDeCoに使える枠はそのぶん小さくなります。
iDeCoと企業年金の掛金の合計が上限を超えると、iDeCoの掛金は自動で減額されます。減額後が5,000円未満になると、iDeCoの拠出は一時停止します。止まった月の掛金は、あとから追納できません。
上限いっぱいまで増やした人ほど、この影響を受けやすくなります。会社から企業年金の掛金を変えるお知らせが届いたら、iDeCoの掛金も合わせて見直す時期です。
上限まで入れる前に、家族で話しておきたいこと
上限の広がり方は、世帯の働き方で変わります。夫婦ともに企業年金のない会社員なら、2人の上限の合計は月4.6万円から12.4万円になります。一方が専業主婦・主夫(第3号被保険者)なら、その人の枠は2.3万円のままで、事前受付の対象にもなりません。同じ12月の改正でも、夫婦で届く案内の中身が違うことがあります。
iDeCoの資産は、原則60歳まで引き出せません(障害や死亡などの例外があります)。上限の6.2万円は「ここまで入れてよい額」で、「入れるべき額」ではありません。大学進学期の教育費や住宅ローンの繰上げ返済など、60歳より前に要るお金を先に見積もり、残りをiDeCoに回す額の目安にする考え方もあります。教育資金の積み立て方はこどもNISAの記事で、iDeCoの掛金の考え方は【iDeCo】掛金の決め方3つのポイントで取り上げています。
受け取るときの税金の扱いも、2026年に一度変わっています。iDeCoなどの一時金を先に受け取り、あとで会社の退職金を受け取る場合、退職所得控除の重複を調整する対象が、退職金を受け取る年の「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に受け取った一時金に広がりました(2026年1月1日以後に受け取る一時金が対象)。「5年ルールが10年ルールに」と呼ばれることもある改正です。受け取り方を決める時期が近づいたら、その時点の制度を確認してください。
12月の引き上げは、今の掛金が家計に合っているかを見直す機会にもなります。月いくらなら60歳まで置いておけるかを夫婦で数字にしておくと、書面の事前受付で出すか、12月にe-iDeCoで出すか、来年に回すかは、その数字から決められます。
2026年9月26日時点の情報です。事前受付の締切やe-iDeCoの利用可否は加入先の金融機関によって異なるため、最新の案内を確認してください。
出典
- 厚生労働省「2025年の制度改正(企業型DC・iDeCo)」(2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール」(2025年12月時点)(2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「iDeCo拠出限度額の引き上げ」(2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「国民年金基金令等の一部を改正する政令」(令和7年政令第442号)新旧対照(2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「確定拠出年金Q&Aの改正について」(令和8年7月13日付け事務連絡)(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「iDeCoの拠出限度額の引き上げにあわせてiDeCo掛金額変更をご希望の方へ、お手続きのご案内」(2026年8月)(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「拠出限度額の引き上げによる加入者掛金額変更(増額)の特例のご案内」(2026年8月)(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「iDeCoの手数料見直しについて」リーフレット(2026年4月)(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「企業年金等の掛金額変更によるiDeCo掛金一時停止のお知らせ」通知書見本(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「小規模企業共済等掛金払込証明書に関するFAQ」(令和7年版)(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「厚生年金被保険者の皆さまへ」(加入状況の確認方法)(2026年9月26日確認)
- 国民年金基金連合会「e-iDeCo」のご案内(2026年9月26日確認)
- iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」(2026年9月26日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1135 小規模企業共済等掛金控除(2026年9月26日確認)
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(2026年9月26日確認)
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」税制改正等の内容(2026年9月26日確認)
- auのiDeCo(auアセットマネジメント)「【制度改正:2026年12月】加入可能年齢の拡大と掛金拠出限度額の引き上げ」(2026年9月26日確認)
- りそな銀行 iDeCo「掛金額変更・事前受付」(2026年9月26日確認)
- SBIベネフィット・システムズ FAQ「何月から何月までの掛金が今年の所得控除の対象ですか?」(2026年9月26日確認)
よくある質問
- 今年すでに掛金を変更しました。12月から増やすことはできますか?
- できます。2026年12月1日から2027年11月30日まで(金融機関での受付日が基準)に、旧上限を超える額へ初めて増額する変更は、「年1回」の回数に数えない特例の対象です。特例が使えるのは1回だけで、旧上限以下への変更は通常のルールになります。
- 書面の事前受付とe-iDeCoの両方で出しておけば安心ですか?
- 両方で出すと、重複届出として無効になるとりそな銀行は案内しています。どちらか一方で手続きしてください。事前受付の書類を出したあとは、取り下げや出し直しもできません。
- 12月に増額すると、今年の年末調整で控除が増えますか?
- 増えません。所得控除の対象はその年に支払った掛金で、12月分の掛金は2027年1月26日に引き落とされるため、2027年分の控除になります。
- 配偶者は専業主婦(主夫)です。上限は変わりますか?
- 第3号被保険者の上限は月2.3万円のままで、今回の事前受付の対象外です。会社員・公務員や自営業などの区分は、上限が上がります。
- 事前受付で出した増額が反映されたかは、どう確認しますか?
- りそな銀行の案内では、事前受付の結果は連合会から連絡がないため、2027年1月26日の引き落とし額で確認します。e-iDeCoで手続きした場合は、2027年1月中旬に登録したメールアドレスへ結果が届くとされています。
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