孫世代が心のケア?京大発「まごとも」が高齢者介護に新風

私たちの親世代、あるいは将来の自分たちにも関わるかもしれない「高齢者の心のケア」。この重要なテーマについて、京都大学発のスタートアップである株式会社whicker(ウィッカー)が2024年5月29日に発表したプレスリリース[1]を元に考えていきましょう。
介護保険だけでは届かない「心の充実」へ
介護保険のサービスは、多くの方にとって頼りになる存在です。しかし、それだけではカバーしきれない部分、特に「心の充実」といった側面があると感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。まさに、そうした「かゆいところに手が届く」ようなサポートを目指しつつ、さらに深い価値を提供しようという新しい動きが生まれています。
今回取り上げる「まごとも」は、例えるなら「お孫さんと過ごすような楽しい時間」を高齢者の方に届けたい、という温かい想いから生まれたサービスです。このサービスがユニークなのは、従来の身体的なケアが中心だったサービスとは一線を画し、むしろ精神的な充実感や社会とのつながりを重視している点です。
プレスリリースによると、この「まごとも」を利用するのは、やはり高齢の親御さんを持つご家族が多いようです。「親に元気を取り戻してほしい」「もっと自分らしい人生を楽しんでほしい」といった切実な願いが、その背景にはあるのでしょう。私たち自身も、いつか同じように感じる日が来るかもしれません。
なぜ今、「心のケア」に特化したサービスが求められるのか
では、なぜ今、こうした心のケアに特化したサービスが必要とされているのでしょうか。
その背景には、社会の変化があります。かつては、身体的なケアは家政婦さんや介護サービスが、そして精神的なケアは家族が担う、といった役割分担がなんとなく成り立っていました。しかし、核家族化や共働きの進展により、家族だけで十分な心のケアをするのが難しくなってきているのが現状です。その結果、高齢者の支援がどうしても身体的なケアに偏りがちだった、という課題が存在していました。
そこで注目されているのが、大学生がいわば「孫世代のパワー」として、これまで家族が担ってきた「心のケア」の部分を補おうという試みです。
「それは単なる気休めやその場しのぎではないのか?」と思われるかもしれません。しかし、実はそうとも言い切れないのです。世代間の交流がもたらす効果は、科学的にも裏付けられつつあります。プレスリリースによれば、若者との交流が高齢者の方のうつ病リスクを約80%も下げ、孤独感を40%も軽減するという研究データもあるとのことです。80%という数字は驚くべきものであり、これは単なる触れ合い以上に、もっと深い意味がある可能性を示唆しています。
実際、このような取り組みは、経済産業省が推進する高齢者ケアの新しい形を応援する「OPEN CARE PROJECT」で受賞するなど、社会的な意義も認められ始めています。
アプリで手軽に、そして安心して利用できる仕組み
この度リリースされた「まごとも」のアプリでは、学生を探し、依頼し、サービス終了後には報告が届き、支払いまで全てアプリ一つで完結できるという手軽さも魅力の一つです。
もちろん、人と人との繋がりを提供するサービスですから、安全性は非常に重要です。その点についても運営側は十分な配慮をしているようで、例えば損害保険への加入はもちろんのこと、学生には身分証の提出を義務付けたり、アプリ内で研修を受けられる仕組みを整えたりしています。さらに、利用者と学生がお互いに評価し合う制度や、万が一問題行為があった場合のペナルティ規定なども設け、安心して利用できる環境作りに努めていることがうかがえます。
また、サービス利用後にはレポートを通じて親御さんの様子を知ることができるのも、家族にとっては大きな安心材料の一つと言えるでしょう。
高齢者と学生、双方にとってのメリットと社会への広がり
この「まごとも」は、高齢者の方だけでなく、実は学生にとっても大きなメリットがあると考えられます。普段なかなか接する機会のない世代の方との交流は、学生たちの視野を広げる貴重な経験になるのではないでしょうか。まさに、高齢者と学生、双方のウェルビーイング(心身ともに健康で満たされた状態)の向上を目指しているという点も、このサービスの大きな特徴です。
「介護」と聞くと、特に若い世代は少し身構えてしまうかもしれません。しかし、「交流」や「友達のような関係」という形であれば、より自然に関わりを持つことができるのではないでしょうか。人手不足が深刻な課題となっている介護分野において、こうした新しい関わり方が新しい風を吹き込み、課題解決の一助となる可能性も秘めていると言えるでしょう。
事実、京都市のふるさと納税の返礼品に選ばれたり、市の事業として認定されたりしていることは、このサービスに対する公的な信頼の証と言えます。
「まごとも」が目指す、本質的な心のケアとその可能性
つまり、「まごとも」というサービスは、単なるお手伝い派遣にとどまらない価値を提供しようとしています。高齢者の方の「心の元気」や「社会とのつながり」といった、非常に本質的な部分にアプローチしようとしているのです。
これは、親御さんの介護に関わっている方にとって、負担が軽減されるだけでなく、親御さんの生活の質そのものを豊かにするための、有力な選択肢の一つとなり得るのではないでしょうか。
最後に、非常に興味深い動きとして注目されるのが、京都大学などと共同で、この世代間交流がもたらす効果を、より科学的に検証していこうという研究も進められているという点です。
こうした感情的なつながりや精神的な充足感が、具体的にどのくらい人の心身の健康や幸福度に影響を与えるのか。もし、心のケアの効果がもっと客観的に、例えば数字で示されるようになれば、将来的には私たちの高齢者ケアに対する考え方や、社会保障のあり方そのものに影響を与えていく可能性も否定できません。
memstock編集部
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