医療保険の保険料控除と給付金の税金

働き方・扶養と税memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
医療保険の保険料控除と給付金の税金

秋になると、勤務先から年末調整の書類が配られ、保険会社からは控除証明書が届きます。家族の医療保険の保険料はどの欄に書くのか、子どもの分も入れてよいのか、今年受け取った入院給付金は申告しなければならないのか。書類を前に手が止まる人は少なくありません。

医療保険と税金の関係は、払った保険料が所得から差し引かれる「生命保険料控除」と、受け取った給付金に税金がかかるかどうかの2つに分かれます。どちらも国税庁のタックスアンサーと所得税基本通達に取り扱いが書かれています。この記事では、その内容に沿って順に整理します。

医療保険の保険料は「介護医療保険料控除」に入る

生命保険料控除には、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つの区分があります。2012年(平成24年)1月1日以後に結んだ契約(新契約)では、医療保険やがん保険の保険料は、主契約や特約の保障内容に応じて「介護医療保険料」の区分に入ります。保険会社から届く控除証明書に区分が書かれているので、まずそれを確認します。

新契約の控除額は、年間の支払保険料が2万円以下なら全額、2万円超4万円以下なら「保険料×1/2+1万円」、4万円超8万円以下なら「保険料×1/4+2万円」、8万円超なら一律4万円です。3つの区分を合計した控除額の上限は12万円です。ここでいう支払保険料は、その年に払った金額から、受け取った剰余金や割戻金を差し引いた残りです。

2011年(平成23年)12月31日以前に結んだ契約(旧契約)は扱いが違います。旧契約の医療保険や介護保険の保険料は「旧生命保険料」の区分に入り、控除額の上限は5万円です。医療保険を新旧どちらの時期に契約したかで、書く欄も上限も変わります。

また、保険期間が5年未満の契約の中には、控除の対象にならないものがあります。

23歳未満の子がいる世帯の2026年分の変更

2026年(令和8年)分の所得税から、23歳未満の扶養親族がいる人は、新契約の一般の生命保険料(死亡保障の保険など)の控除額が、上限6万円の計算式に変わりました。年間の新生命保険料が3万円以下なら全額、3万円超6万円以下なら「保険料×1/2+1万5千円」、6万円超12万円以下なら「保険料×1/4+3万円」、12万円超なら一律6万円です。

この特例はもともと2026年分だけの措置でしたが、令和8年度の税制改正で適用期限が2027年(令和9年)分まで延長されました。3区分の合計の上限は、改正前と同じ12万円のままです。2026年分の年末調整から、この新しい計算方法で控除額を出します。

医療保険が入る介護医療保険料の区分はこの特例の対象外で、23歳未満の扶養親族がいても上限4万円のままです。

計算例で確かめます。23歳未満の扶養親族がいる人が、2026年に新契約の定期保険に年10万円、新契約の医療保険に年6万円を払ったとします。一般の生命保険料の控除額は10万円×1/4+3万円=5万5千円、介護医療保険料の控除額は6万円×1/4+2万円=3万5千円で、生命保険料控除は合計9万円です。特例がなければ一般の生命保険料の控除額は4万円なので、合計7万5千円でした。

特例の詳しい計算や、旧契約と新契約の両方がある場合の扱いは、次の記事にまとめています。

控除を受けるのは保険料を払った人

生命保険料控除は、その保険料を実際に払った人が受けます。対象になる契約の要件は、保険金や給付金の受取人の全員が、保険料を払う本人か、その配偶者や親族であることです。国税庁は、契約者が誰であるかは要件とされていないと示しています。妻が契約者の保険の保険料を夫が払っていれば、夫の控除の対象です。

そのため、「扶養に入っている家族の保険料だけ合算できる」という理解は正しくありません。たとえば親が保険料を払っている子どもの医療保険は、受取人が子ども本人であれば、子どもが扶養に入っているかどうかにかかわらず、払った親の控除の対象です。反対に、就職した子どもが自分の口座から保険料を払っているなら、子ども本人の控除になります。親が肩代わりしていない保険料を、親の申告に入れることはできません。

会社員は、勤務先に「保険料控除申告書」と控除証明書を出せば、年末調整で控除が反映されます。年末調整で出し忘れた場合でも、確定申告(還付申告)で取り戻せます。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。

前納した保険料はその年の分だけ

保険料の控除は、その年に実際に払った金額が対象です。払込期日が来ていても、まだ払っていない保険料は入りません。

まとめて先払いした場合は、払い方によって扱いが分かれます。翌年以後に払込期日が来る保険料を一括で払い込んだ「前納保険料」は、払った年に全額を控除するのではありません。「前納保険料の総額×その年中に来る払込期日の回数÷前納保険料の払込期日の総回数」で計算した金額だけが、その年に払った保険料になります。前納で割引を受けた場合、総額は割引後の金額です。

たとえば、2026年12月に2027年1月から12月までの12回分を前納した場合、2026年中に払込期日が来る回は0回なので、2026年分の控除の対象は0円です。この保険料は、2027年分以後に払込期日の回数に応じて控除の対象になります。

入院給付金も診断一時金も原則は非課税

医療保険から受け取る給付金は、原則として所得税がかかりません。所得税法施行令第30条第1号は、身体の傷害に基因して支払を受ける保険金や給付金を非課税としています。所得税基本通達9-21は、病気で重度障害の状態になったことなどで受け取る高度障害保険金や入院費給付金などもこれに当たるとし、一時金で受け取る場合も年金形式で受け取る場合も含めています。

がんと診断されたときの一時金も同じ考え方です。東京国税局の文書回答では、がん診断給付金は通達9-21により「身体の傷害に基因して支払われるもの」に当たり、所得税の課税関係は生じないと整理されています。国税庁の質疑応答事例でも、がん保険の健康回復給付金を非課税所得として扱ってよいとしています。病気を理由に支払われる給付金を「一時所得として課税される」と考えて申告する必要はありません。非課税所得は所得金額の計算から除かれるので、非課税の扱いを受けるための手続も原則として不要です。

受け取る人が本人でない場合も、配偶者や直系血族(親子など)、生計を一にする親族であれば非課税です。親が子どもの入院給付金を受け取るケースもこれに当たります。

ただし、死亡保険金は「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に当たりません。医療保険に付いた死亡保険金を受け取ったときは、被保険者、保険料を払った人、受取人の組み合わせによって、所得税、相続税、贈与税のいずれかの対象になります。

医療費控除では給付金を差し引く

給付金そのものは非課税でも、医療費控除を受けるときには関係してきます。医療費控除の金額は、「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)」で計算し、上限は200万円です。補てんされる金額の例として、国税庁は生命保険契約などで支給される入院費給付金や、健康保険の高額療養費・家族療養費・出産育児一時金を挙げています。

差し引く額は、その給付の目的になった医療費の金額が上限です。引ききれない分が出ても、ほかの医療費からは差し引きません。

例として、入院で自己負担30万円、別の病気の通院で5万円を払い、その入院について入院給付金10万円を受け取った人を考えます。医療費控除の金額は(35万円-10万円)-10万円=15万円です。入院の自己負担が8万円で入院給付金が12万円だった場合は、差し引くのは8万円までで、残りの4万円を通院の5万円から引くことはしません。

高額療養費の仕組みと、払い戻しまでの流れは次の記事で解説しています。

出典

よくある質問

医療保険の入院給付金を受け取ったら、確定申告が必要ですか
本人や配偶者、親子などが受け取る入院給付金は、身体の傷害に基因して支払を受けるものとして非課税です。非課税所得は所得金額の計算から除かれるので、給付金のために確定申告をする必要はありません。医療費控除を受ける場合は、その給付金を医療費から差し引きます。
がんと診断されたときの一時金は一時所得になりますか
なりません。東京国税局の文書回答で、がん診断給付金は所得税基本通達9-21により「身体の傷害に基因して支払われるもの」に当たるとされ、所得税の課税関係は生じないと整理されています。
扶養に入っていない子どもの医療保険料も、親の控除に入れられますか
親が実際にその保険料を払っていて、受取人の全員が親本人か配偶者、親族であれば、親の控除の対象です。扶養に入っているかどうかは要件ではありません。反対に、子どもが自分で払っている保険料は親の控除には入りません。
23歳未満の子がいると、医療保険の控除額も増えますか
増えません。2026年分と2027年分の上限6万円の特例は、新契約の一般の生命保険料の区分だけが対象で、医療保険が入る介護医療保険料の区分は上限4万円のままです。旧契約の医療保険は旧生命保険料の区分に入ります。
年末調整で医療保険の控除証明書を出し忘れました
確定申告で控除を受けられます。所得税を納め過ぎていれば還付申告になり、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
m
この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

山
この記事を監修した人

山田 尚貴

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。

関連記事