高額療養費の上限額は?共働きの数え方

家計・物価memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
高額療養費の上限額は?共働きの数え方

子どもが入院することになり、病院から手術と入院費用の見積もりを渡された。保険診療でも3割負担なら数十万円になりそうで、家計からすぐに出せるか心配になる。こうしたときに支えになるのが、公的医療保険の高額療養費制度です。

高額療養費は、1か月に医療機関や薬局の窓口で払った額が上限額を超えたとき、超えた分が加入している保険から支給される制度です。上限額は年齢と所得で決まり、2026年8月の診療分から引き上げられました。共働きの家庭では、夫婦がそれぞれ別の健康保険に入っていると、家族の医療費でも別々に計算されます。2026年10月時点の制度を、厚生労働省と全国健康保険協会(協会けんぽ)の資料をもとに整理しました。

1か月の上限額は所得で決まり、2026年8月に上がった

70歳未満の人の上限額は、所得に応じて5つの区分に分かれています。会社員などが入る健康保険では標準報酬月額(毎月の給与をもとに決まる額)で、国民健康保険では所得(旧ただし書き所得)で区分が決まります。2026年8月から2027年7月までの診療分の上限額は次のとおりです。

区分(年収の目安) 健康保険の標準報酬月額 1か月の上限額 多数回該当
約1,160万円〜 83万円以上 270,300円+(医療費−901,000円)×1% 140,100円
約770万〜約1,160万円 53万〜79万円 179,100円+(医療費−597,000円)×1% 93,000円
約370万〜約770万円 28万〜50万円 85,800円+(医療費−286,000円)×1% 44,400円
〜約370万円 26万円以下 61,500円 44,400円
住民税非課税 ― 36,900円 24,600円

ここでの「医療費」は、保険が使える診療費の総額(10割)を指します。2026年7月までの上限額は、年収約370万〜約770万円の区分で「80,100円+(医療費−267,000円)×1%」でした。

年収約370万〜約770万円の区分の人が、1か月に医療費100万円の治療を受けたとします。窓口で3割の30万円を払ったあと、上限額の92,940円を超えた207,060円が支給されます。厚生労働省も、2026年8月からの制度では年収約370万〜約510万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円に抑えられると例示しています。

2027年8月からは、所得区分をさらに細かく分ける見直しが予定されています。この区分は1年後に変わるため、上限額は受診する月の制度で確かめる必要があります。

共働きの夫婦は、加入している保険ごとに計算する

高額療養費でいう「世帯」は、住民票の世帯とは違います。厚生労働省は、自己負担額の合算は同一の医療保険に加入する家族を単位として行い、共働きの夫婦などが別々の健康保険に加入していれば、住所が同じでも合算の対象にならないと説明しています。協会けんぽも、ここでいう世帯を「協会けんぽに加入している被保険者とその被扶養者」としています。

たとえば、夫は勤め先の健康保険、妻は別の勤め先の健康保険に入り、子どもが夫の被扶養者になっている家庭では、計算の単位は「夫と子ども」と「妻」の2つに分かれます。同じ月に子どもが入院し、妻も別の病院に通院した場合、子どもの分と妻の分は合算されません。子どもの分は夫の加入する保険に、妻の分は妻の加入する保険に申請します。

上限額の区分は、被保険者本人の所得で決まります。被扶養者の子どもの上限額は、扶養している親(被保険者)の標準報酬月額で決まるため、子どもがどちらの親の保険に入っているかで上限額が変わることがあります。夫婦がともに会社員などで健康保険に入っている場合、子どもは原則として年間収入が多い方の被扶養者になります。夫婦の年間収入の差が多い方の1割以内であれば、届け出により、主として生計を維持する方の被扶養者にできます。

なお、片方が自営業で国民健康保険に入っている場合も、加入している保険が違うため、もう片方の健康保険とは別に計算されます。

家族の医療費を合算できる条件

同じ保険に入っている家族なら、同じ月の自己負担額を合算し、その合計が上限額を超えた分を受け取れます。1人が複数の病院にかかった場合や、同じ病院で入院と外来の両方を受けた場合も同じです。

ただし70歳未満の人は、1つの医療機関での自己負担額が21,000円以上のものだけが合算の対象です。医療機関ごとの計算では、同じ病院でも医科の入院・外来、歯科の入院・外来をそれぞれ別に数えます。院外の薬局で払った薬代は、処方せんを出した医療機関の分に含めて計算します。

治療が長引いたときの軽減もあります。直近12か月のうちに高額療養費の支給を3か月以上受けると、4か月目から上限額が下がる「多数回該当」になります(年収約370万〜約770万円の区分では44,400円)。この金額は2026年8月の見直しでも据え置かれました。ただし多数回該当は同じ保険者・同じ被保険者で数えるため、転職して保険者が変わったときや、退職して配偶者の被扶養者になったときは、それまでの月数を引き継げません。

2026年8月からは、8月から翌年7月までの1年間の自己負担に「年間上限」も設けられました。年収約370万〜約770万円の区分では53万円で、年間上限による払い戻しの申請は2027年8月から始まります。年間上限の数え方は、次の記事でくわしく扱っています。

窓口の支払いを上限額までにする方法

高額療養費は、窓口でいったん全額の自己負担を払い、あとから払い戻しを受けるのが基本です。最初から窓口の支払いを上限額までに抑えるには、マイナ保険証を使うか、事前に「限度額適用認定証」を手に入れておく必要があります。

従来の健康保険証は2024年12月2日以降は新しく発行されず、有効期限も2025年12月1日で終わりました。期限切れの保険証を持参した人を受け付ける対応も、2026年7月31日で終わっています。今は医療機関でマイナ保険証か資格確認書を出して受診します。

協会けんぽの場合、マイナ保険証を使えば限度額適用認定証の申請は要りません。オンライン資格確認を導入している医療機関では、マイナ保険証での受付を通じて限度額の情報が医療機関に伝わります。一方、資格確認書で受診する人や、オンライン資格確認を導入していない医療機関にかかる人は、事前に限度額適用認定証を申請して窓口に出します。

限度額適用認定証は、申請書を受け付けた月の1日から最長1年間有効で、申請した月より前の月の分は交付されません。協会けんぽでは、2027年8月の所得区分の見直しにあわせて、2026年8月以降に交付する認定証の有効期限を最長で2027年7月31日までとしています。住民税非課税などの低所得の区分の人は、マイナ保険証を使う場合でも「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。

健康保険組合や共済組合、国民健康保険でも認定証の交付を受けられますが、申請の窓口と手続きは加入先ごとに違います。健康保険組合の中には、組合独自の「付加給付」として、国の上限額より低い負担の上限を設けているところもあります。

対象外の費用と、払い戻しの申請

高額療養費の対象は、保険が使える診療の自己負担額です。入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療の技術料などは計算に入りません。入院の見積もりを見るときは、保険診療の部分とそれ以外の部分を分けて確かめます。

払い戻しは、加入している保険に支給申請書を出して受け取ります。審査は医療機関から保険者に届く請求書(レセプト)が確定してから行われるため、支給までには受診した月から少なくとも3か月程度かかります。高額療養費を受け取る権利は、診療を受けた月の翌月の初日から2年で時効になります。窓口で払いすぎた分に気づいたら、2年以内であればさかのぼって申請できます。

医療保険で何が払われ、何が自己負担になるのかを全体から確かめたい場合は、次の記事も参考にしてください。

出典

よくある質問

共働きで子どもが入院したら、どちらの保険に申請しますか?
子どもが被扶養者として入っている親の保険に申請します。上限額も、その親(被保険者)の所得区分で決まります。同じ月にもう一方の親が受診しても、加入している保険が違えば合算されません。
マイナ保険証があれば、限度額適用認定証は要りませんか?
協会けんぽでは、オンライン資格確認を導入している医療機関でマイナ保険証を使えば申請は不要です。資格確認書で受診する場合や、オンライン資格確認のない医療機関にかかる場合は認定証が必要です。住民税非課税などの区分の人は、マイナ保険証を使う場合でも減額認定証の申請が必要です。
入院中の食事代や差額ベッド代も、上限額に含まれますか?
含まれません。高額療養費の対象は保険が使える診療の自己負担額で、入院中の食事代や差額ベッド代、先進医療にかかる費用は計算の外になります。これらは上限額とは別に支払います。
申請を忘れていた高額療養費は、あとから受け取れますか?
診療を受けた月の翌月の初日から2年以内であれば、さかのぼって申請できます。加入している保険によっては、支給対象になったことを知らせてくれたり、自動的に振り込んでくれたりするところもあります。
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この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

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この記事を監修した人

山田 尚貴

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。

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