家族旅行は子どもの成長に役立つ?

教育・学校memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
家族旅行は子どもの成長に役立つ?

旅行先で、いつもは慎重な子どもが自分から川に入っていく。そんな姿を見ると、旅行は子どもの成長に効くのではないかと考えたくなります。

国の調査で確かめられるのは、旅行そのものの効果ではありません。今回確認した文部科学省と国立青少年教育振興機構の調査は、キャンプや海水浴、博物館見学といった「体験」を測っていて、そうした体験が多い子どもほど自尊感情や自己肯定感が高いという結果が出ています。旅行は、こうした体験をまとめて経験できる機会の一つと考えるのが、データに沿った見方です。

国の調査が測っているのは「旅行」ではなく「体験」

観光庁は休暇の取得を勧める理由として、休暇を使って旅に出て、見知らぬ地域や人々の暮らし、歴史・文化に触れることは、健康の維持に加え、創造力や柔軟な視点を養うことにつながると説明しています。これは政策の考え方を示したもので、効果を測った調査の結果ではありません。

効果を測った国の調査で、家族旅行そのものを項目にしたものは、今回の確認の範囲では見つかりませんでした。代わりに、旅行先で家族がよく行う活動が「体験活動」として調べられています。文部科学省の21世紀出生児縦断調査は、小学生の頃の体験を次の9項目で尋ねています。

分類 調査項目
自然体験 キャンプ、登山、川遊び、釣り/海水浴、マリンスポーツ/ウインタースポーツ/農業体験
社会体験 職業体験/ボランティア
文化的体験 動植物園・水族館・博物館・美術館見学/音楽・演劇・古典芸能鑑賞又は体験/スポーツ観戦

回答の選択肢は「まったくない」「1~2回」「3回以上」です。国立青少年教育振興機構の調査も、「海や川で泳いだこと」「夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと」「チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと」などを自然体験として尋ねています。旅行の目的地でできることの多くが、この表に入っています。

小学6年生の体験と、20歳までの自尊感情

文部科学省は2023年3月、2001年(平成13年)に生まれた子どもとその保護者に約20年にわたって回答してもらった21世紀出生児縦断調査を使い、特別報告をまとめました。小学6年生の時点の体験と、その後の非認知能力等との関係を分析しています。

結果は、小学6年生の時点で自然体験や文化的体験を経験していた子どもは、20歳までの時点の「自尊感情」「精神的回復力」「がまん強さ」「精神的健康」のいずれにもプラスの効果が見られた、というものです。社会体験も、精神的回復力、がまん強さ、精神的健康にプラスの効果が見られました(自尊感情は20歳の時点のみ)。

分析には、体験した子としなかった子の家庭環境などの違いをそろえて比べる「傾向スコア」という手法が使われています。それでも報告書の結論は、体験の機会を意図的・計画的に充実させることで非認知能力等を高められる「可能性がある」という書き方です。旅行に行けば自尊感情が上がる、と言い切れる結果ではありません。

報告書は、家庭主導では体験の機会が相対的に少ない子どもについても、小学校高学年で体験の機会を充実させれば非認知能力等を高められる可能性があるとしています。体験は幼児期だけのものではない、という点は家庭にとっても参考になります。

体験が多い子どもほど、自己肯定感が高い傾向

国立青少年教育振興機構の令和元年度調査(2020年1月〜4月実施)も、同じ方向の結果です。自然体験や生活体験、文化芸術体験が豊富な子ども、お手伝いを多くしている子どもほど、自己肯定感が高く、自立的な行動習慣や探究力が身についている傾向がありました。

小学4年生から高校2年生までの回答では、自然体験が「多い」子どものうち自己肯定感が「高い」のは29.9%で、「少ない」子どもでは6.9%でした。調査は、世帯年収や主観的な経済状況の違いに関わらず、自然体験が多い子どもほど自己肯定感が高い傾向があるとも報告しています。

ただし、これは一時点の調査で見た「傾向」です。自己肯定感が高い子どもが体験に積極的なのか、体験が自己肯定感を高めたのかは、この集計だけでは区別できません。

大人を対象にした調査もあります。国立青少年教育振興機構が20代から60代を対象に行った調査(2010年10月公表)では、子どもの頃に自然体験やお手伝い、友達との遊び、地域での活動が豊富だった人ほど、大人になってからの人間関係能力や自尊感情、意欲・関心が高い傾向が見られました。子どもの頃の自然体験が「多い」人で人間関係能力が「高い」のは47.8%、「少ない」人では22.8%です。この調査の自然体験には「海や川で貝を採ったり、魚を釣ったりしたこと」などが含まれます。

同じ調査では、世帯年収が大きいほど子どもの自然体験が多い傾向も出ています。公的機関や民間団体などが行う自然体験の行事への小学生の参加率は50.0%で、参加しなかった理由は、世帯年収400万円未満の家庭では経済的・時間的な余裕のなさに関わるものが多く、年収1,000万円以上の家庭では子どもに参加する時間がないという回答が多くみられました。

親の体験が、子どもの体験につながる

体験の多さは、親子で受け継がれやすい傾向があります。文部科学白書2016は、国立青少年教育振興機構の調査をもとに、子どもの頃の体験が豊富な保護者ほど、その子どもも体験が豊かな傾向が見られると紹介しています。同じ白書は、幼い頃から家族や地域、自然の中で体験を発達段階に応じて続けていくことが、いっそう効果的だと述べています。

家族旅行は、親が子どもと一緒に体験を選び、同じ場所で過ごせる機会です。観光庁が平成22年度から25年度に行った「家族の時間づくりプロジェクト」では、学校休業日を設定した地域で保護者にアンケートをとり、47.2%が休業日になってよかったこととして「家族の思い出ができた」を選びました。体験の機会を家庭の中でつくる一つの形として、旅行を位置づけることができます。

旅行を体験の機会にするために

調査の項目を手がかりにすると、旅行の中身を考えやすくなります。行き先で、自然体験(川遊び、海水浴、星を見るなど)、文化的体験(動植物園や博物館、音楽・芸能の鑑賞など)のどれができるかを、子どもと一緒に選んでみてください。遠くへ行かなくても、近くの水族館や博物館で文化的体験の項目に当てはまります。

費用を抑えたいときは、国立青少年教育振興機構の国立青少年交流の家・自然の家が使えます。利用目的に「ご家族での自然体験活動」が挙がっていて、施設使用料は1泊あたり幼児(年少以上)300円、小学生から高校生600円、大人2,500円です。食費は中学生以上で3食2,000円程度が別にかかります。大人2人と小学生2人なら、施設使用料は1泊6,200円です。

平日に保護者と校外で学ぶ日を欠席にしない「ラーケーション」を設ける自治体もあり、旅行の日程を組みやすくなっています。制度の中身は次の記事で、旅行の計画や子どもの安全は同時に公開した計画の記事で整理しています。

出典

よくある質問

家族旅行に行くと、子どもの自己肯定感は上がりますか
旅行そのものの効果を測った国の調査は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。自然体験や文化的体験が多い子どもほど自尊感情や自己肯定感が高いという結果はありますが、旅行で必ず上がるとまでは言えません。
遠くへ行かないと意味がありませんか
文部科学省の調査が「体験」として数えている項目には、動植物園・水族館・博物館・美術館の見学やスポーツ観戦が入っています。近くの施設でも、項目に当てはまる体験はできます。
小学校高学年になってからの体験にも意味はありますか
文部科学省の特別報告は、小学6年生の時点の体験に注目し、その時期の体験が20歳までの自尊感情などにプラスの効果を持っていたと報告しています。幼児期だけでなく、小学校高学年でも体験の機会を増やす意味があるという結論です。
費用をかけずに自然体験をさせる方法はありますか
国立青少年交流の家・自然の家は家族での自然体験活動にも使え、施設使用料は小学生から高校生で1泊600円、大人2,500円です(食費は別)。自治体や公的機関が行う自然体験の行事もあります。
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