子どもを休ませて旅行?変わりゆく学校の常識とラーケーションとは

家族の旅行のために子どもを休ませることについて、考えたことはありますか?かつてはあまり一般的ではなかったこの選択肢ですが、近年は教育に対する考え方や親の働き方の変化により、徐々に受け入れられるようになってきています。今回は、子どもを休ませることの是非や各地で広がる「ラーケーション」制度など、変わりゆく学校の常識について考えてみましょう。
1週間休ませたら先生に「え、1週間も?」と言われて
山田:より良い家族の暮らしを考える、memStock podcast。こんにちは、4人家族の山田です。
小林:こんにちは、一人家族の小林です。今回は、「家族都合で学校を休む」というテーマで、より良い家族の暮らしについて考えていきます。
山田:家族都合で学校を休んでいいのかどうかという話なんですけど、なぜこの話をしようと思ったかというと、もうすぐゴールデンウィークじゃないですか。今年はカレンダーが飛び石連休になっていて、その間の平日を休んでいいのかどうかということを考えてみました。実はずっとこのことが気になっていたんです。休ませていいのかどうかという点で。
私は現在、上の子が6年生になりました。3年生か2年生ぐらいの時にアメリカに行こうということになって、1週間ほど学校を休ませたことがあります。その時に先生から「え、1週間も?」という顔をされて、休ませることについて疑問を持ちました。家庭によって考え方が違うと思うので、この辺りをディスカッションしていければと思います。
小林:私たちが子どもの頃は、そもそも家族都合で休むといったら、忌引ぐらいでしたよね。旅行に行くから休むというのはほとんどなく、もしあったとしても病欠という理由で休んでいたはずです。
山田:確かにそうですね。当時で言えば「ずる休み」的な感じでしたね。それも含めて「ずるい」のかどうかという話でもあるんですよね。
小林:そこが難しいところで、高校や大学になると比較的自由です。単位が取れればいいという考え方になりますが、義務教育で税金が使われているものをどう考えるかという問題がありますね。
山田:そうなんです。私もいろいろ考えて、山田家としては「いいんじゃないか」という結論になりました。理由としては、学校での授業も大事ですが、旅行で得られる経験は小さい頃にしか味わえないものがあります。また、休みが土日や冬休みだけだと、親の休みの都合もあって長く旅行に行けないことがあります。特に海外旅行は費用も高く、ゴールデンウィークなどに休みを取って行くと旅行代金が高くなります。共働きで休める日も限られていますし、特に妻は会社員なので仕事を休めるタイミングが限られています。それも含めて、学校を休ませてもいいのではないかというスタンスでいます。これまでは「申し訳ないけど休みます」という態度でしたが、今は「うちとしてはこういう理由で休みます」という、もう少し自信を持った姿勢に変わりました。
子どもに聞いたら「全然気にしてない」らしい
小林:クラスメイトたちの反応はどうでしたか?
山田:子どもに聞いたところ、全然気にしていないようでした。友達も多いですし、お土産を買って行ったら喜ばれるそうです。子ども自身が行きたいと言っているのも後押しした要因になっています。
小林:学校を休んだ後に戻ってくるという状況についてはどうですか?
山田:授業についていけなくなるかどうかも気になって聞いてみましたが、1週間程度なら大きく変わらないようです。クラスメイトたちの空気感も、全然戻りづらくないと言っていました。
小林:そうなんですね。それは時代が変わったのでしょうか。
山田:そうかもしれません。周りの友達の中にも長期で旅行に行ったり休んだりする子がいるという話もあるので、その感覚が自由になってきているのかもしれませんね。昔はインフルエンザで数日休むだけでも戻りづらさがありましたが、そこも変わってきているのかなという感じです。
小林:特に部活動をやっていると、学校を休むということは部活も休むことになります。そうすると復帰する時になんとなく居心地の悪さを感じることがあったりしますよね。
山田:そうですね。昔は部活動もそうですし、体育なども、例えば3週間かけて何かを練習したり、運動会に向けて準備をするタイミングで休むと戻りにくかったりしました。戻った時に「これは何をするんだろう?」と思ったり、周りの人も教えてくれなかったりしましたが、その点も先生がケアするようになったのかもしれません。昔は水も飲ませないようなスパルタ教育が当たり前でしたが、最近は子どものケアを重視する傾向が強くなってきているので、そこも変化の一因かもしれませんね。
小林:ちなみにお子さんは公立の学校ですか?
山田:はい、公立です。
小林:公立でもそれほど問題ないのですね。
オランダでは学校を休ませると法律違反になる
山田:それで気になったのが、他の人たちはどうなんだろうということです。特に海外では小学生を休ませることが自由なイメージがありますが、実際はどうなのかなと思いました。
小林:日本の調査では、2023年7月のいこーよ総研のユーザーアンケート[1]によると、56%の親がおでかけや旅行のために幼稚園・保育園、学校を休ませた経験があると回答しています。半数以上がそういう経験をしているということで、昔の感覚よりはかなり一般的になってきているようです。では、海外はどうでしょうか。
山田:海外について調べてみたのですが、もともと気になったのが、先ほど言ったアメリカ旅行の時のことです。アメリカに行った時に税関で「子どもは学校ではないのか?」と言われました。「日本では子どもは学校を休ませていいのか?」と聞かれて驚きました。アメリカは自由なイメージがあったので意外でしたが、調べてみると州によって違うようです。ただ、全般的に子どもを学校から休ませて家族の事情を優先させることはあまり良しとされていないようです。
オランダに住んでいる友人に聞いたところ、オランダでは子どもは学校を休ませてはダメだそうです。法律違反になるほど厳しいらしいです。調べてみると、忌引などの特別な理由以外での休暇は認められていない[2]ようです。オランダに住んでいる日本人が日本に帰国するためでも、基本的にはダメとされています。親の事情だからという理由は通用しません。オランダでは「休暇は平等に与えられるべき」という考え方があり、子どもによって違いがあってはダメだという理念があります。教育を受ける権利を保障するという考え方が強いからでしょう。
ただ、ヨーロッパ全体としてはそこまで厳しくなく、休みたい時に休めばいいという国もあります。国によって違いはありますが、大半はあまり子どもを学校から休ませない傾向にあるようです。
完全な先入観だったんですが、海外は何でもありだと思っていましたが、そうではありませんでした。意外と、子どもはしっかり学校に通って、決められた休みの時だけ休むというのが基本のようです。
小林:おそらく子どもの学ぶ権利を尊重しているのだと思います。せっかく学校が開かれていて行ける状態なのに、その機会を失わせるのはよくないという考え方でしょう。休みが設定されているのだから、その時期に家族が合わせて海外旅行などの経験を積ませればいいという発想だと思います。
ただ、それは休みの取りやすさも関係してそうですね。先ほど奥さんが会社員で休みの調整が難しいという話がありましたが、海外では休みを取りやすいという面もあるのでしょう。フランスなどでは長期間まとめて休暇を取ったりしますよね。
山田:日本はその点、有給休暇もしっかり取れないという状況があります。最近は徐々に改善されてきていますが、「有給を取ると他の人に迷惑をかける」という空気感がまだ強いですからね。
小林:もしかしたらこれは良くない傾向かもしれませんね。子どもの学校を休ませることが受け入れられてきているのは、親が休みを取れないという社会的な問題があるからかもしれません。本来なら親が自由に休みを取れるような社会にしていくべきなのに、それが現実的に難しい状況だから、学校を休ませてもいいのではないかという方向に流れているのかもしれません。
山田:そうですね。二つの軸があって、一つは親の休暇の問題と、もう一つは旅行代金が安い時期に行きたいという経済的な問題です。
小林:経済的な問題も給与に関係しているかもしれませんね。給与が十分でないから安い時期を選ぶということになります。
山田:それもあるかもしれませんね。
小林:JTB発表の今年のゴールデンウィークの旅行動向[3]によると、総旅行者数は前年比93.1%と減少する一方で、消費額は増加する予測です。これは平均費用が上がるから控えようという人が増えてきている状況で、ゴールデンウィークのような繁忙期を避けてずらそうという傾向も出てきているようです。
山田:確かに経済的な要素は大きいですね。
子どもの性格によって休ませるかどうかの判断も変わる
小林:山田さんは今年のゴールデンウィーク期間中の平日、お子さんを休ませますか?
山田:今年はカレンダー通りにします。子どもが6年生で中学受験に向けて塾もあるので、旅行に行けそうにないので。基本的に学校を休ませるのは旅行に行く時だけです。ディズニーランドなど近場なら週末でも十分ですが、遠くに長期で行く場合は休ませるという感じです。
先ほどクラスで目立つことや罪悪感の話がありましたが、日本では「他の人に迷惑をかけない方がいい」という意識や、「出る杭になりたくない」という気持ちがあります。日本人は目立ちたくないという傾向がありますよね。それも影響していると思います。クラスの中で旅行によく行く子は「家庭が豊かだから」と見られて、「お金持ち」というレッテルを貼られることもあるようです。特に、経済状況がさまざまな家庭が混在する地域ではそういう問題も出てくるかもしれません。うちの子どもは気にしていないようですが、SNSを見ると休ませたくない理由としてはそういう話もあるようです。経済的な要素と日本の文化的な特性が絡んでいるのかなと思います。
小林:出る杭的な話ではなくても、どうしても目立ちますからね。
山田:目立ったらダメという感覚もあまり良くないのかもしれませんね。
小林:ダメというより、目立った状態で子ども側のメンタルがどう対応できるかという問題です。まだメンタルが未熟な時期に、嫌味を言われたときにどう反応するか。
山田:過剰に反応してしまったりすることもありますね。
小林:適切に反応できる、あまりマイナスの感情を受けずに対応できるお子さんであれば大丈夫でしょうが、そうでない可能性もあります。だから難しい問題です。
山田:確かに。子どもの性格もしっかり見た上での判断が必要かもしれませんね。
小林:日本全体の傾向以上に、お子さん自身が大丈夫かどうかという点が重要です。その見極めは難しいですね。本人が大丈夫だと言っていても、実際はそうでないこともあり得ます。
山田:確かにそうですね。自己肯定感の問題もあります。「悪いことをしている」という罪悪感に苦しむこともあるかもしれません。日本では自己肯定感を高めることが難しいという社会問題もありますしね。うちの子どもは自己肯定感が非常に高いので気にしないのかもしれませんが、それは家庭やお子さんによって異なるでしょうね。一概に「休んだ方がいい」とは言えませんね。
小林:休めるのであれば休んでも良いとは思いますが、その辺りの配慮は必要ですね。風潮よりも、お子さんの資質や性格が最も重要だと思います。
山田:そういう意味では、家族内でしっかり話し合い、自分の子どもの性格や特徴をきちんと把握した上で判断することが大切で、親の都合だけで決めるのは良くないということですね。
小林:それは本当に良くないですね。
山田:本当にそうですね。
川崎市には年に1日好きな時に休める制度がある
小林:大分県の別府市では平日に家族と市外へ旅行する場合は年5日まで欠席扱いにしないという制度「『たびスタ』休暇」を導入しているようです。その欠席扱いにしない制度が山田さんのところにもあるということですが。
山田:あります。私は神奈川県の川崎市に住んでいるのですが、「かわさきホリデー・アンド・スタディ」という制度があります。2025年度(令和7年度)から年に1日、親の都合で休みたい時に休ませてもいいという制度があります。これはいつでも利用可能です。申請制で、利用する1週間前までに連絡して、利用日と活動内容を入力する必要があります。
小林:活動内容も必要なんですね。
山田:活動する必要があるようですが、旅行など何でも良いようです。始業式や終業式など特定の行事がある日以外であれば、基本的にいつでも大丈夫みたいです。
山田:そういう制度も増えてきているのかもしれません。こういう日を設けることで、親が休みやすくなるというメリットがあります。子どもにとっても「ホリスタ」(ホリデー・アンド・スタディの略称)を使ったという理由があれば休みやすくなりますね。「自分はまだ使ってないな」といった会話も生まれるかもしれません。ただ、これも親だけが気にしていることかもしれませんね。
小林:でも子どもにこういう制度があることを伝えておくと、先ほど話した性格の問題でも、自己主張が強くない子にとっても「学校に認められている制度だ」と周りに言えるだけで違いが出ると思います。「勝手に休んでいるわけではなく、ちゃんと仕組みがあって休んでいる」ということが言えるのは大きいです。
山田:そうですね、伝えた方が良いですね。
申請方法は2種類あって、1週間前に申請用紙を先生に提出するか、アプリで前日までに申請するかを選べるようです。
小林:アプリだと前日までで良いんですね。こういう制度も増えてきていて、川崎も今年からなんですね。
山田:そうです。去年までもこの「かわさきホリデー・アンド・スタディ」はあったのですが、自由に選べませんでした。10月のスポーツの日を含む3連休に付けて、4連休にするという形でした。でも自由に選べる方が親としてはありがたいです。
小林:ただ、そうなると親同士の間で影響があるかもしれませんね。「あの家の子はその休みを使っていい所に行ったらしいけど、うちもそうした方がいいのかな」という心配事が生まれるかもしれません。
山田:なるほど。子ども同士でも「○○ちゃんはホリスタを使ってこんなことをしたけど、うちはどこかに行かないの?」みたいな会話が出てくるかもしれませんね。確かにそういう面もありそうです。
小林:「うちは近場のあそこだったらちょっと微妙じゃない?」といった具合に。
山田:それは嫌ですね。そんな競争は望ましくないです。
小林:でもこういう制度が出てきたということは、今後家を買うときなどに、「この自治体は子どもの活動に力を入れている」という指標になるかもしれませんね。
山田:確かにそうですね。「うちの市はこういうことをやっています」という形でアピールするようになるかもしれません。ふるさと納税の競争のような形になっていく可能性もありますね。
小林:その可能性はありますね。学校も子どもの数が減ってきて統廃合が進んでいるので、子育て世帯を呼びたいという自治体も増えるでしょう。そういう情報も仕入れておく必要があるかもしれません。
山田:確かにそうですね。今まで気にしていませんでしたが、そういう面もありそうです。自治体の良し悪しの判断材料になるかもしれません。川崎市は7月1日が市の創立記念日で休みなので、ホリスタと合わせて年に2日休みがあるということか。市によって違いがあるのは面白いですね。
「ラーケーション」が全国で広がっている
小林:ここ数年「ラーケーション」というものを見かけるようになりました。ワーケーション(仕事と休暇を組み合わせた働き方)みたいな感じで、先ほどの川崎市のホリデー・アンド・スタディのことを、おそらく「ラーケーション」と呼んでいるのではないかと思います。
山田:何の「ラー」ですか?
小林:「ラーニング」です。「ラーニング」と「バケーション」を組み合わせた言葉です。子どもが休みながらも、学校外で何かしらの活動をしているという意味です。
山田:出席扱いになるということですね。
小林:そうです。愛知県では「ラーケーションの日」と呼んでいたと思います。それが各地で導入されているようですが、各自治体で独自の名前をつけているんですね。ここまでの話から、川崎市や別府市の制度もラーケーションの一種だと理解できました。
山田:「ラーケーション」で検索すれば、多くの情報が得られるかもしれませんね。
小林:今調べてみましょうか?かなり情報が出てきますね。愛知県は年間3日、茨城県は中学・高校でも導入されていて年5日のようです。
山田:5日もあるんですね。多いですね。
小林:静岡県磐田市でも実証実験をしているようです。
山田:本当にいろいろな自治体で導入が進んでいるんですね。申請手順も自治体によって違いがありそうですね。学校によってはアプリを導入していたり、紙での申請しかできなかったりと、申請のしやすさによって利用率も変わってきそうです。こういうのはなるべくアプリやオンラインでできる方が便利ですね。
小林:こういう制度はみんなが使わないと廃止されてしまう可能性もあります。ただ、現実的に利用できない家庭もあると思います。親が働き詰めだったり、経済的に厳しい状況だったりする場合は難しいでしょう。子どもを学校に行かせた方がいいという家庭もあるでしょうし。
山田:確かにそうですね。「なぜ休みにするんだ」という考え方もあります。春休みなどの長期休暇になると、給食がないので昼食を用意しなければならないという負担もありますしね。使わない家庭も当然あるでしょう。
それに、子どもが旅行に行きたくない、親と一緒に行動したくないという逆のケースもあるかもしれませんね。特に高学年になってくると。
小林:この制度は有給休暇のように翌年に繰り越せるといいですね。社会に出たときの有給休暇の感覚を学べるかもしれませんね。最近は学校で社会に即した内容があまり教えられていないという意見もありますよね。経済の教育などが不足しているという。
山田:お金の教育などですね。
小林:そうした中で、有給休暇の使い方を学べる機会になるかもしれません。
そろそろ話が脱線してきたのでこの辺で。また次回お会いしましょう。ありがとうございました。
山田:ありがとうございました。
子どもを休ませる選択は、家族との時間や旅行などの経験を通じて得られる学びも大切にする考え方の表れといえるでしょう。特に共働き家庭では休暇の調整が難しく、経済的な面からも旅行シーズンを避ける必要があるという現実的な事情もあります。親の休暇事情や子どもの性格、学校の制度など、さまざまな要素を考慮した上で家族で十分に話し合い、最適な判断をすることが大切です。全国各地で導入が進む「ラーケーション」のような新しい制度も活用しながら、子どもたちにとって学校での学びと家族との体験、どちらも豊かなものになるよう工夫していきたいですね。
[出典]
memstock編集部
memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。
山田 尚貴
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。



