出産費用の無償化はいつから? 2027年の出産は今の一時金になる見込み

お金の話memStock編集部
出産費用の無償化はいつから? 2027年の出産は今の一時金になる見込み

出産予定は来年の春で、産院で費用の説明を受けたばかり。そこへ「出産費用が無償に」というニュースが流れ、実家の親からは「無料になるなら助かるね」と連絡が来る。自分の出産がその「無償」に入るのか、すぐには答えられません。

2026年6月5日に公布された改正健康保険法(令和8年法律第31号)には、出産にかかる給付を組み替える内容が入っています。いつから始まるのか、今の出産育児一時金50万円はどうなるのか、どこまでが自己負担なしになるのか。厚生労働省の資料と法律の条文をもとに、2026年10月9日時点でわかっていることと、まだ決まっていないことを分けて整理します。

新しい給付が始まるのは、2028年6月までの「政令で定める日」

出産給付の見直しが始まる日は、法律で「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。公布が2026年6月5日なので、遅くとも2028年6月までには始まります。ただ、具体的な日付を決める政令は、2026年10月9日時点でまだ出ていません。

改正法の概要資料の施行期日の欄には、まず「令和9年(2027年)4月1日」と書かれています。これは法律全体の施行日で、出産給付と妊婦健診の見直しは、ただし書きで「公布後2年以内に政令で定める日」と別に定められています。2027年4月から出産費用が無償になる、という意味ではありません。

施行日より前の出産には、改正前の出産育児一時金の規定がそのまま使われます。報道では新しい給付は「2028年6月ごろまでに始まる見込み」と伝えられていて、法律上の期限と合わせると、2027年中の出産は今の一時金の方式になる見込みです。政令で2027年中の日付が定められる可能性がまったくないとは言えないため、あくまで現時点の法律の定めと報道から読み取れる見通しです。

出産育児一時金50万円は、2つの給付に分かれる

今は健康保険から、子ども1人につき原則50万円の出産育児一時金が出ています(本人への支給分48.8万円と、産科医療補償制度の掛金分1.2万円)。一時金を産院への支払いに直接充てる「直接支払制度」を使うと、施設の窓口で払うのは、費用の総額から一時金を差し引いた残りの額です。費用が一時金より少なければ、加入している健康保険から差額を受け取れます。

新しい制度では、この一時金が2つの給付に置き換わります。ひとつは「分娩費」という新しい給付です。出産の標準的な費用について、国が全国同じ水準の基本単価を決め、施設の体制や役割に応じた加算をつけます。お金は健康保険から産院へ直接支払われ、標準的な部分に妊婦の自己負担はかかりません。

もうひとつは「出産時一時金」で、出産したすべての人に出る定額の現金給付です。厚労省の一般向け資料では、手術などが必要になった場合の追加費用や、入院の準備にかかる費用に充てられるものと説明されています。この給付は法律ですでに創設が決まっていて、未定なのは金額です。

報道では「正常分娩の保険適用」と表現されることがあります。ただ、病気の治療と同じ3割負担の保険診療に組み込まれるわけではありません。新しく分娩費という給付を作り、標準的な部分は自己負担なしにする設計です。

新しい制度が始まった後も、すべての産院が一斉に切り替わるわけではありません。厚生労働大臣に届け出た施設(特例分娩取扱施設)では、「当分の間」、今の出産育児一時金の方式が続きます。厚労省の資料は「準備の整った施設から順次、移行します」と説明していて、参議院厚生労働委員会の附帯決議は「できる限り多くの分娩施設が新たな給付体系を選択するよう促す」ことを求めています。

自己負担がなくなるのは「出産の標準的な費用」

厚労省の一般向け資料は、新しい制度の目的を「出産の標準的な費用(手術などが必要になった場合の追加負担や希望により選択するサービスを除く)に自己負担がかからないようにする」と書いています。かっこの中にあるとおり、出産にかかるお金は3つに分かれます。

  • 保険診療以外の、分娩への対応にかかる標準的な費用…分娩費で支払われ、自己負担なし
  • 帝王切開など、医療が必要になった部分…今と同じ保険診療。3割などの自己負担に高額療養費制度が適用される
  • お祝い膳などのアメニティ、希望で選ぶサービス…自己負担

帝王切開や吸引分娩などは、今も健康保険の保険診療として扱われていて、新しい制度でも「従来どおり」とされています。窓口での負担は3割などの自己負担割合で、所得に応じた高額療養費制度の上限がかかります(高額療養費の見直しについては高額療養費の年間上限の記事で解説しています)。出産時一時金は、この自己負担に充てることもできると説明されています。

協会けんぽの加入者で、令和7年度に出産して出産育児一時金などの請求があった約28.6万件のうち、80.7%にあたる約23.1万件で、分娩のときに保険診療(診療報酬)の算定がありました。出産のときに何らかの保険診療が含まれるのは、めずらしいことではありません。帝王切開の場合に、保険診療以外の部分へ分娩費がどう支払われるのかといった細かい扱いは、これから決まります。

お祝い膳などのサービスは自己負担のままです。その代わり、施設には提供するサービスの内容や費用について情報提供が義務づけられ、妊婦が納得して選べるようにするとされています。

個室代や無痛分娩、立ち会い出産、入院日数、新生児の管理にかかる費用が標準的な費用に含まれるかどうかは、まだ決まっていません。「無痛分娩は対象外」「入院費も全部含まれる」といった情報を見かけることがありますが、2026年10月時点で国が示した内容ではありません。

平均52.0万円、都道府県で24万円の開き

厚労省の集計では、室料差額や産科医療補償制度の掛金、お祝い膳などを除いた平均出産費用は、令和6年度(2024年度)に全国で52.0万円でした。平成24年度(2012年度)は41.7万円だったので、12年で約10万円上がっています。

都道府県別では、最も高い東京都が64.8万円、最も低い熊本県が40.4万円で、24万円あまりの差があります。今の一時金は全国一律で原則50万円なので、住んでいる地域や産院によって、一時金の範囲で収まることもあれば、自分で払う額が出ることもあります。

新しい分娩費は、基本単価を全国同じ水準にしたうえで、施設の体制などによる加算をつける設計です。地域ごとの費用の違いが新しい制度でどう扱われるのかは、単価が決まるまでわかりません。

まだ決まっていないこと

決まっていないことの中心は、金額です。分娩費の単価は国の告示、出産時一時金の額は政令で定めることになっていて、どちらもまだ示されていません。今の50万円がそのまま引き継がれると書いた国の資料もありません。

2026年10月1日には、厚生労働省の「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」の初会合が開かれました。月1〜2回のペースで、出産時の診療やケアの内容、施設の体制などを話し合い、12月ごろにとりまとめる予定です。

この検討会は論点を整理する場で、新しい給付の評価や単価は、その後に中央社会保険医療協議会(中医協。診療報酬を話し合う国の会議)などで検討される流れです。12月のとりまとめで金額まで決まるとは限りません。

同じ改正では、妊婦健診についても、国が健診費用の「標準額」を定め、費用の情報を集めて公表することになりました。こちらも施行は公布から2年以内です。妊婦健診の公費助成は自治体によって差があり、2025年4月時点で妊婦1人あたり全国平均11.4万円、最も低いところで8.6万円、最も高いところで14.1万円でした。

制度の変わり目に、家族で話しておけること

制度の切り替わりが近づくと、「始まるまで待ったほうがいいのでは」という声が身近から聞こえてくるかもしれません。けれども、新しい制度がいつ始まり、分娩費や出産時一時金がいくらになるのかは、まだ決まっていません。今わかっている情報だけでは、新旧どちらの制度が家計にとって有利かを比べることはできません。出産の時期は、体のことや仕事、家族の事情で決まっていくものです。

いま妊娠中で、出産が2027年中になりそうなら、今の出産育児一時金を前提に準備を進めることになります。厚生労働省の「出産なび」では、全国の産院の出産費用やサービスの内容を調べられます。かかっている産院の費用が一時金とどのくらい違うのかを知っておくと、窓口で払う額の見通しが立ちます。具体的な給付や手続きは加入している健康保険の窓口に、出産の医療面のことは主治医や助産師に相談してください。

新しい制度の対象になるかもしれない時期の出産については、12月の検討会のとりまとめと、その後の単価や一時金の額の決定が次の節目です。親から「無料になるんでしょう」と聞かれたら、「始まる日も金額もまだ決まっていなくて、2027年の出産は今の一時金になりそう」と伝えられます。続きは、金額が発表されたときに家族で一緒に確かめれば十分です。

本記事は2026年10月9日時点の法律・厚生労働省資料にもとづいています。施行日の政令、分娩費の単価、出産時一時金の額が決まった時点で内容が変わる可能性があります。

出典

よくある質問

2027年に出産予定です。出産費用の無償化の対象になりますか?
新しい給付(分娩費・出産時一時金)が始まる日は、2028年6月までの政令で定める日で、まだ決まっていません。施行日より前の出産は、今の出産育児一時金(原則50万円)の対象です。報道では2028年6月ごろまでに始まる見込みとされていて、現時点の法律の定めからは、2027年中の出産は今の一時金の方式になる見込みです。
新しい制度が始まると、出産育児一時金はもらえなくなりますか?
新しい制度では、標準的な出産費用は「分娩費」として健康保険から産院へ直接支払われ、それとは別に「出産時一時金」という定額の現金給付が、出産したすべての人に支給されます。出産時一時金の金額は政令で決まる予定で、まだ示されていません。また、届出をした産院では当分の間、今の出産育児一時金の方式が続きます。
帝王切開になった場合、費用はどうなりますか?
帝王切開など医療が必要になった部分は、今と同じく健康保険の保険診療です。3割などの自己負担に、所得に応じた高額療養費制度の上限が適用されます。新しい制度では、この自己負担に出産時一時金を充てることもできます。保険診療以外の部分の扱いなど、細かい点はこれから決まります。
個室代や無痛分娩も自己負担なしになりますか?
厚労省の資料で自己負担の側とされているのは、手術などが必要になった場合の追加負担と、お祝い膳などの希望で選ぶサービスです。個室代や無痛分娩、立ち会い出産などが標準的な費用に含まれるかどうかは、2026年10月時点でまだ決まっていません。
自分の産院が新しい制度に移るかどうかは、いつわかりますか?
特例分娩取扱施設の届出をいつから受け付けるのか、移行する施設の一覧が公表されるのかは、まだ示されていません。施設の側も、単価などが決まってから判断することになる可能性があります。
m
この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

関連記事