EVは家計に優しい?カナダの事例と日本

家計・物価memStock編集部(更新: 2026年10月16日)
EVは家計に優しい?カナダの事例と日本

次の車をEVにするか迷っている家庭では、「EVは高いけれど、長く乗れば元が取れる」という話を耳にすることがあります。海外ではカナダで、EVを環境のためだけでなく家計を助ける選択として紹介する調査や広告が目立っています。

ただ、海外の試算は補助金の額やガソリン代、走る距離の前提が日本と違います。カナダの数字が何を前提にしているかを確かめ、日本でEVを買うときにかかわる補助金・税金・燃料代を、2026年10月時点の公的な情報で整理します。カナダドルの円換算は、カナダ銀行(中央銀行)が公表した2026年10月13日の日次平均レート(1円=0.008980カナダドル、1カナダドル=約111円)を使っています。

カナダで「家計のためのEV」が語られる背景

カナダでは物価の上昇が続いています。カナダ統計局によると、2026年8月の消費者物価指数は前年同月比3.0%の上昇で、スーパーなどで買う食品は2.8%上がりました。ガソリン価格も前年より上がっています。

こうした中で、自動車メーカーはEVの経済性を前面に出しています。ベトナムの自動車メーカーVinFastは、カナダ向けの公式サイトで「10年/20万km」の保証を掲げています。故障したときの修理代という読みにくい出費を、保証の長さで小さく見せる売り方です。

カナダのシンクタンク、クリーン・エナジー・カナダが2026年4月に出した報告書は、EVは典型的なケースで10年間の保有で2万〜3万カナダドル(約223万〜334万円)の節約になると試算しています。2026年2〜3月に国の新しいEV購入補助(5,000カナダドル、約56万円)が始まり、ガソリン価格も上がったことで、例に挙げたシボレーのSUVでは10年間の節約額が3万4,100カナダドル(約380万円)になったとしています。

「総所有コスト」で比べると何が分かるか

これらの試算は、車両価格だけでなく、燃料代やメンテナンス費まで含めた「総所有コスト」で比べています。EVはエンジンオイルの交換などが要らず、燃料代も電気のほうが安いため、購入価格が高くても、乗る年数が長いほど差を取り戻しやすくなります。クリーン・エナジー・カナダの比較では、車の値下がり分(減価償却)、燃料代、メンテナンス・修理代、税金・保険などの費用を合計して、EVとガソリン車を車種ごとに並べています。

アメリカの調査会社Vincentricがカナダで行った分析(2024年12月発表)では、50車種のEVのうち49車種(98%)が、5年間の総所有コストで同じクラスのガソリン車より安くなりました。前年(2023年)の分析では95%でした。ただしこの分析は、年2万5,000km走ること、2024年9月24日時点の車両価格、当時の国の購入補助を前提にしています。

前提が変われば結果も変わります。カナダの国の購入補助は2025年1月にいったん停止され、2026年に新しい制度で再開しました。年に2万5,000kmという走行距離も、週末の買い物と送迎が中心の家庭より長い前提です。海外の「〇万円得」という試算は、補助金・燃料価格・走行距離の3つをそろえて読む必要があります。

ヨーロッパでもEVへの移行は進んでいます。ヨーロッパ自動車工業会(ACEA)によると、2026年1〜8月のEUの新車登録に占めるEV(バッテリー式)の割合は21.7%で、前年同期の15.8%から上がりました。

日本で買うなら:CEV補助金の額と締め切り

日本で新車のEVを買うと、国の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」を申請できます。額は車種ごとに決まっていて、次世代自動車振興センターの一覧(2026年10月13日現在)では、2026年4月1日以降に登録した車で、軽EVに58万円、普通車のEVに130万円の車種があります。2027年1月1日以降の登録では、一覧の中で額が下がる車種もあります。

項目 内容(2026年10月時点)
対象 自家用の新車(中古車・事業用は対象外)
額の例 軽EVで58万円、普通車のEVで130万円の車種がある
受付終了の見込み 2026年12月上旬〜下旬(予算に達した日の前日で終了)
保有の義務 登録日から原則4年(車種区分により3年)

申請は事務局に届いた順に受け付けられ、予算額に達すると締め切られます。2026年9月4日の公表では、受付の終了は12月上旬〜下旬の見込みです。補助金を受けた車は、登録から原則4年間の保有が義務で、その間に手放すときは事前の手続きと補助金の返納が必要です。納車が遅れる車は、登録が締め切りに間に合うかを販売店と確かめておくと安心です。

日本の維持費:税金の予定と、電気代・ガソリン代

毎年かかる自動車税は、今は排気量のない電気自動車に最も低い税率が一律に適用されています。2019年10月以降に登録した自家用乗用車の税率表で最も低いのは、1,000cc以下の年2万5,000円です。この扱いは見直しが決まっていて、2028年度以後に新車登録したEVの乗用車には、車両重量に応じた課税が導入されます。税率は2027年度の税制改正で決める予定です。

車検のときの自動車重量税にも、EVとプラグインハイブリッド車に車両重量に応じた負担を上乗せする仕組みが、2028年5月1日以後の車検から入る予定です。新車の新規検査の分と、施行後最初の継続車検の分は免除されます。今買うEVでも、乗る年数によっては関係してきます。

燃料代は、走る距離と電費・燃費で見積もれます。年間5,000km走る場合で、EVの電費を1kWhあたり6km、自宅で充電する電気料金を1kWhあたり31円、ガソリン車の燃費を1リットルあたり15km、ガソリンを1リットル160円とすると(いずれも仮定)、EVの電気代は年約2万6,000円、ガソリン代は年約5万3,000円で、差は年約2万7,500円です。急速充電器を多く使うと電気代の単価は上がります。総務省の消費者物価指数(2026年8月)では、電気代は前年同月比2.4%、ガソリンは2.6%下がっていて、どちらも値動きがあります。

家族で決めるときの考え方

日本の家庭で年間5,000km程度しか走らないなら、燃料代の差は年に数万円で、カナダの試算ほど大きくはなりません。差を広げるのは、補助金の額と、何年乗るかです。CEV補助金を受けると4年間は手放せないため、少なくとも4年以上乗る見込みがあるかを先に話し合うと、判断がしやすくなります。

自宅に充電設備を置けるかどうかも、電気代の単価を左右します。集合住宅では、充電設備を置けるかどうかを先に確かめておく必要があります。見積もりを取るときは、車両価格から補助金を引いた額、毎年の税金、5年分の燃料代を並べて、ガソリン車やハイブリッド車と比べてみてください。

車を持つかどうかそのものの判断材料は、こちらの記事でまとめています。

出典

よくある質問

EVの補助金はいつまで申請できますか?
国のCEV補助金は、2026年9月4日の公表で、申請受付の終了は2026年12月上旬〜下旬の見込みです。予算額に達した日の前日で締め切られるため、申請状況によって前後します。
カナダの「10年で約223万〜334万円の節約」は日本でも当てはまりますか?
そのままは当てはまりません。カナダの試算は、カナダの購入補助、ガソリン価格、走行距離を前提にしています。日本では補助金の額、燃料価格、走る距離が違うため、自分の家庭の条件で計算し直す必要があります。
EVの自動車税は今後上がりますか?
2028年度以後に新車登録したEVの乗用車には、車両重量に応じた課税が導入されます。具体的な税率は2027年度の税制改正で決める予定です。
補助金を受けたEVはすぐに売れますか?
登録日から原則4年間(車種区分によって3年間)は保有が義務です。その間に処分する場合は、事前の手続きと補助金の返納が必要です。
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この記事を書いた人

memStock編集部

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