熱性けいれん、救急車はいつ呼ぶ?

5分。熱性けいれんが始まってから5分たっても止まらなければ、救急車を呼びます。日本小児神経学会の診療ガイドラインによると、けいれん発作は5〜10分以内に自然に止まることが多く、5分以上続く発作は薬の治療を考え始める状態とされています。それまでの数分は子どもを横向きに寝かせ、口に物を入れず、始まった時刻とけいれんの様子を見ておきます。止まっても意識が戻らないときも救急車を呼びます。
救急車を呼ぶ目安はなぜ5分?
5分以上続けば、医療者が薬で止めることを考える段階に入るからです。日本小児神経学会の「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」は、発作が5分以上続いている場合を「薬物治療の開始を考慮すべき熱性けいれん重積状態」と書いています。
同じガイドラインには、けいれん発作は5〜10分以内に自然に止まることが多い一方、それより長い発作は治療しなければ30分以上続く可能性が高くなる、という説明もあります。ガイドラインの5分は医療者が治療を判断するための線で、家庭での行動の目安とは出どころが違います。
家庭向けの資料では、日本小児科学会の「こどもの救急」が「けいれんが5分以上続いている」を緊急度を判断するチェック項目に挙げています。総務省消防庁の子ども向け救急リーフレットは、けいれんが止まらないときを、ためらわず救急車を呼ぶ症状としました。医療者の5分と、家庭向け資料の「止まらない」を重ねたものが、5分で救急車を呼ぶという目安です。
紛らわしいのが15分という数字です。ガイドラインは15分以上続く発作を、焦点性発作(体の一部から始まる発作)や、同じ発熱のあいだに通常24時間以内に繰り返す発作と並べて、複雑型熱性けいれんの要素としています。15分は診断の分類に使う線で、救急車を呼ぶまで待つ時間ではありません。
けいれん中に親がすること、しないこと
することは3つで、安全な場所で横向きに寝かせる、時刻を見る、けいれんの様子を観察する。しないことは、口に物を詰めたり、くわえさせたりすることです。
青森県の「小児救急ガイドブック」は、衣服を緩めて横向きに寝かせ、けいれんの仕方と時間を観察するよう案内しています。口に物を詰め込む、くわえさせる対処は「してはいけないこと」に入っていて、理由は窒息の原因になるためでした。舌をかまないようにとタオルや指を口に入れるのも、同じ理由で避けます。
時計は5分たってから見るのではなく、始まった時点で見ます。5分たったかどうかは、開始時刻がなければ判断できません。
| 経過 | 親がすること | 見ておくこと |
|---|---|---|
| 始まった直後 | 時刻を確かめる。床など安全な場所で衣服を緩め、横向きに寝かせる | 始まった時刻 |
| 発作のあいだ | 口に物や指を入れない。そばで様子を見る | 全身か体の一部か、手足の動き、唇の色 |
| 5分たっても止まらない | 救急車を呼ぶ | 続いている時間 |
| 止まった直後 | 横向きのまま様子を見る。意識が戻らなければ救急車を呼ぶ | 呼びかけへの反応、唇の色 |
| 落ち着いたあと | 夜間・休日は子ども医療電話相談で受診の時期を相談する | 熱、同じ発熱での2回目がないか |
全身がけいれんしているのか、片側の手足だけなのかも観察します。焦点性発作かどうかは複雑型の要素の1つなので、見たままを覚えておきます。
5分以内に止まったら受診はいつ?
止まっても意識が戻らないときは、5分以内に止まっていても救急車を呼びます。意識が戻って落ち着いているなら、夜間・休日は子ども医療電話相談で、すぐ受診するか朝まで待つかを相談できます。
消防庁のリーフレットは「けいれんが止まっても、意識がもどらない」も、ためらわず救急車を呼ぶ症状の欄に載せています。こどもの救急のチェック項目には、意識が戻らないことのほかに、唇の紫色が続いている、何度も繰り返しけいれんが起こる、も並んでいます。止まったあとも、この3つを確認します。
子ども医療電話相談は厚生労働省の事業です。受付時間は都道府県ごとに違い、2026年10月時点で掲載されている厚生労働省の一覧は2026年5月22日現在のものでした。生後1か月から6歳の子なら、こどもの救急で診療時間外に受診するかの目安を確かめる方法もあります。
翌朝の受診に迷う場合は、診察した医師や相談窓口に確認します。子ども医療電話相談と救急車の使い分けや、夜の発熱で迷ったときの相談先は、こちらの記事で整理しています。
熱の原因が学校感染症だった場合、法令で出席停止期間の基準が定められています。出席停止の扱いは別の記事にまとめました。
初めてのときは呼んでいい?
初めてでも、5分たっても止まらない、止まっても意識が戻らないときは救急車を呼びます。消防庁のリーフレットは、この2つをためらわず救急車を呼ぶ症状としています。
初めて見るけいれんが熱性けいれんの定義に当てはまるかは、医療機関で確認します。ガイドラインでいう熱性けいれんは、おもに生後6か月から60か月までの乳幼児期に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作です。中枢神経感染症(脳や脊髄の感染症)や代謝の異常など、はっきりした原因のあるものと、てんかんのある子の発作は含みません。どれに当たるかも医療機関で確かめます。
判断の材料は、親が感じた怖さより、時計の数字と意識の戻り方の2つ。5分を目安に救急車を呼びます。
繰り返す子はどうなる?
ガイドラインによると、熱性けいれんの再発率は全体で約30%、再発を予測する因子がない場合は約15%です。集団での割合で、その子が次の発熱で起こすかどうかを示す数字ではありません。
再発を防ぐ薬について、ガイドラインは有効性が高いとしつつ、「熱性けいれんの良性疾患という観点と高い有害事象の出現から」、ルーティンに使う必要はないとしています。使うかどうかは、医師が再発の予測因子やそれまでの発作を見て判断します。繰り返したからといって、家庭で予防の薬を足すことはしません。
解熱薬には、再発を防げるとする根拠がありません。ガイドラインは再発予防を目的とした解熱薬の使用を推奨しておらず、熱のつらさを和らげる目的まで否定した記述ではありません。
予防接種については、熱性けいれんを起こしたことがあっても、ガイドラインは現行の予防接種はすべて接種してよいと推奨しています。接種の前に、起こりうる副反応と対応を説明し、保護者の同意を得ることも推奨に含まれます。この冬のインフルエンザワクチンの時期は、こちらで確かめられます。
次に熱が出た夜は、けいれんが始まったらまず時計を見る、と家族で1つだけ決めておきます。
出典
すべて2026-10-20に確認。
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 総論・定義(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/03fs2023_sec1_general.pdf#page=2
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 総論・複雑型(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/03fs2023_sec1_general.pdf#page=4
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 総論・重積状態(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/03fs2023_sec1_general.pdf#page=6
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 総論・再発率(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/03fs2023_sec1_general.pdf#page=11
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 CQ4(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/07fs2023_sec2_CQ04.pdf#page=1
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 CQ6(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/09fs2023_sec2_CQ06.pdf#page=1
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 CQ8(日本小児神経学会・2023年) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/11fs2023_sec2_CQ08.pdf#page=1
- こどもの救急(ONLINE-QQ)(日本小児科学会・日付記載なし) https://kodomo-qq.jp/
- こどもの救急「けいれん・ふるえ」(日本小児科学会・日付記載なし) https://kodomo-qq.jp/index.php?pname=keiren
- 救急業務のあり方に関する検討会資料 子どもの救急リーフレット(総務省消防庁・2023年3月8日) https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento020_05_kk_230308.pdf#page=15
- 小児救急ガイドブック「けいれん」(青森県・日付記載なし) https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/files/17shouni-guidebook.pdf#page=1
- 子ども医療電話相談事業について(厚生労働省・2026年5月22日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_55223.html
- 学校保健安全法施行規則(e-Gov法令検索・日付記載なし) https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018
よくある質問
- 夜間に救急車で受診したあと、翌朝もかかりつけを受診したほうがいい?
- 翌朝もかかりつけを受診するかどうかは、この記事の出典では一律の基準を確認できていません。夜間・休日に受診の時期で迷うときは、子ども医療電話相談で相談できます。同じ発熱のうちにまたけいれんが起きたときのために、こどもの救急は「何度も繰り返しけいれんが起こる」を緊急度のチェック項目にしています。
- 熱性けいれんで救急車を呼んだら、怒られることはある?
- 消防庁の子ども向け救急リーフレットは、けいれんが止まらないとき、止まっても意識が戻らないときを、ためらわず救急車を呼ぶ症状としています。5分以上続く発作は、ガイドラインで薬の治療を考える段階です。開始時刻を確認し、5分以上続けば救急車を呼びます。
- 一度熱性けいれんを起こした子は、また起こしますか?
- ガイドラインでは、再発率は全体で約30%、再発の予測因子がない場合は約15%です。集団での割合で、その子が次に起こすかどうかを決める数字ではありません。予防の薬を使うかどうかは医師が判断し、解熱薬は再発予防の目的では推奨されていません。
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