子どもの睡眠時間と寝つきの整え方

朝7時を過ぎても布団から出てこない小学生を何度も起こし、朝ごはんもそこそこに送り出す。夜は夜で、21時を過ぎてもタブレットを手放さない。子育て中の家庭では、子どもの寝る時刻と起きる時刻をめぐるやりとりが、毎日のように繰り返されます。
子どもの眠りを整える手がかりは、睡眠時間の目安を知り、起きる時刻と光の浴び方から整えることにあります。この記事では、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」のこども版、同省の健康情報サイト(旧e-ヘルスネット)、こども家庭庁、文部科学省の資料をもとに、家庭で見直せることを年齢に沿って整理します。
子どもに必要な睡眠時間の目安
厚生労働省の睡眠ガイドは、米国睡眠医学会の推奨として、1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間の睡眠時間を紹介しています。そのうえで、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保するよう推奨しています。高校生までは成人より長い睡眠が必要で、ガイドも、一般に思われているより長い睡眠時間だと注意を促しています。
睡眠が足りないと、肥満のリスクが高くなる、抑うつ傾向が強くなる、学業成績が低下するといった影響が報告されていると、ガイドは説明しています。厚生労働省の健康情報サイトの記事「こどもの睡眠」によると、日本の子どもの睡眠時間は平均すると推奨時間を下回るか、下限付近です。
小学生以降は、起きる時刻を決めたうえで、推奨睡眠時間から逆算して寝る時刻を決めるようガイドは勧めています。たとえば朝6時30分に起きる小学生が9時間眠るには、21時30分には眠っている必要があります。10時間なら20時30分です。寝床に入ってから眠るまでの時間も考えると、寝室に向かう時刻はもう少し早くなります。
乳幼児期は、子どもの睡眠習慣が親の睡眠習慣に影響されやすいため、ガイドは家族ぐるみで早寝・早起きを目指すよう勧めています。大人の睡眠時間の目安や生活習慣は、別の記事で扱っています。
「早寝」より先に「早起き」から整える
厚生労働省の健康情報サイトの記事は、「早寝・早起き」ではなく「早起き・早寝」から始めるよう勧めています。まず1週間、決まった時刻に起こし、ベランダに出るか窓辺で外に顔を向けて日光を浴びる。1〜2週間ほど続けると体内時計が徐々に朝型に変わり、早起きのつらさは減ってくると説明しています。
睡眠ガイドも、乳幼児期は朝起きる時間を決めてカーテンを開けて部屋を明るくし、朝食後は戸外で活動すること、小学生以降は登校時や学校で日光を十分に浴びることを挙げています。朝食を抜く生活は睡眠・覚醒リズムの後退を促すと報告されており、朝食を欠かさないことも早寝・早起きを保つ手立てになります。
崩れやすいのは週末です。ガイドは週末も普段と同じ時間に起きて日光を浴びるよう勧めています。健康情報サイトの記事は、平日より週末に3時間以上遅くまで寝ている子どもは睡眠不足があると考えてよいとし、昼近くまで寝坊すると体内時計が一気に遅れると注意しています。
子どもの早寝・早起きは、文部科学省も「早寝早起き朝ごはん」国民運動として進めています。平成18年4月に全国協議会が発足し、文部科学省は協議会と連携して子どもの生活リズムの向上に取り組んでいます。
夜の光と画面の扱い
睡眠ガイドによると、眠りを促すホルモンのメラトニンは就寝の約2時間前から分泌が始まり、その後に照明やスマートフォンの強い光を浴びると分泌が抑えられ、寝つきが妨げられます。子どもは大人より光の影響を受けやすく、ガイドは10歳代の眼のレンズの光透過性が70歳代より5倍近く高いという報告を紹介しています。
画面との距離も影響します。厚生労働科学研究の研究班が2018年3月に発行した「未就学児の睡眠指針」は、小さい子どもほど画面との距離が近く、同じ機器を見ていても目のところでは大人の倍の照度になっていたと報告しています。画面を暗くしたりナイトモードにしたりすれば照度は抑えられますが、指針は寝る前の時間帯には画面を見ないよう勧めています。
睡眠ガイドは、デジタル機器を寝室に持ち込まず、電源を切って別の部屋に置くよう勧めています。寝そべって使うと画面との距離が近くなり、寝つきや睡眠の質の悪化につながるとしています。文部科学省が平成26年11月に小学5年生から高校3年生を対象に行った調査でも、携帯電話・スマートフォンとの接触時間が長い子どもほど就寝時刻が遅い傾向が見られました。
テレビやゲーム、SNSをやめられずに寝る時刻を過ぎてしまう状態を、ガイドは「就寝時刻の先延ばし」と呼び、家庭での電子機器使用のルールづくりが有効な場合があるとしています。一方で、余暇の時間が減りすぎるとストレスにつながる可能性もあるため、夜に削った分の楽しみを日中に回す工夫も勧めています。小・中・高校生のスクリーンタイムは1日2時間以下が推奨されている、とガイドは紹介しています。
日中の過ごし方とカフェイン
睡眠ガイドは、小・中・高校生に1日60分以上からだを動かすよう勧めています。屋外での遊びや活発な身体活動をできるだけ毎日行うことで、睡眠不足や就寝時刻の遅れ、夜中に目が覚めることが減ると期待できるとしています。ただし、就寝前1時間以内の激しい運動はかえって睡眠の質を下げる可能性があるため、寝る直前は控えたほうがよいとしています。
入浴は、就寝の約1〜2時間前に済ませて身体を温めると寝つきやすくなるとガイドは説明しています。夕食後すぐの遅い時間の入浴になりがちな家庭では、入浴の時刻を少し前に動かすだけでも寝る時刻を整えやすくなります。
見落としやすいのがカフェインです。ガイドによると、子どもでは1日当たり体重1kgにつき1〜3mg以上のカフェインで睡眠に悪影響が出ると報告されており、体重30kgの児童なら30〜90mgにあたります。お茶やコーヒーだけでなく、コーラタイプの飲料やエナジードリンクにも含まれるため、夕方以降は麦茶などカフェインを含まない飲み物に切り替えると安心です。
年齢で変わる注意点
1歳未満の赤ちゃんについて、こども家庭庁は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症リスクを下げるため、1歳になるまでは寝かせるときにあおむけに寝かせるよう呼びかけています。令和6年には55名の乳児がSIDSで亡くなっています。窒息を防ぐため、寝具は硬めで平坦なものを使い、1歳になるまでは掛け布団を使わずスリーパーや空調で寒さを調整し、ぬいぐるみやタオルは寝床に置かないよう勧めています。
幼児期は昼寝の扱いが変わります。睡眠ガイドは、4〜5歳以降は昼寝がそれほど要らなくなり、昼寝によって夜の寝つきの悪さや朝の目覚めの悪さが悪化する可能性が報告されているとしています。「未就学児の睡眠指針」は、小学校に入学すると起床時刻が30分程度早まるという調査結果を紹介し、就学が近づいたら30分ずつ生活時刻を動かして学校のスケジュールに合わせていく方法を勧めています。
思春期に入ると、メラトニンの分泌開始が遅れて夜型になりやすく、部活動や勉強、デジタル機器の使用も重なります。睡眠ガイドは、夜ふかし・朝寝坊が長く続くと朝起きられず、遅刻や登校が難しくなる「睡眠・覚醒相後退障害」につながることもあると説明しています。勉強時間を確保したい時期でも、睡眠は学習した内容の定着に関わるとガイドは述べています。
医師に相談したほうがよいサイン
寝ぼけて泣き出す、寝言を言うといった睡眠中の異常行動について、睡眠ガイドは、年齢とともに自然に消える場合がほとんどで心配しすぎなくてよいとしています。ただし睡眠不足や不規則な生活で増えるため、十分な睡眠時間を確保するよう勧めています。
厚生労働省の健康情報サイトの記事は、寝ている途中に呼吸が止まる、眠りの質が悪い、寝入りばなや夜間に身体の異常な動きがある、日中の眠気が強すぎるといった症状が1カ月以上続くときは、かかりつけの小児科医に相談するよう勧めています。子どもは自覚症状があっても言葉で伝えられないことがあるため、寝ている様子を見ている保護者が異常に気づく必要があると「未就学児の睡眠指針」は書いています。
大人の睡眠時間の目安や、寝る前の光・カフェイン・お酒の取り方は、こちらの記事で整理しています。
出典
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- こどもの睡眠(厚生労働省 健康づくりサポートネット〔旧e-ヘルスネット〕) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-007.html
- 赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~(こども家庭庁) https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids
- 未就学児の睡眠指針(厚生労働科学研究費補助金 未就学児の睡眠・情報通信機器使用研究班、2018年3月発行。こども家庭庁「健やか親子21」掲載) https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s04_nyu_pan004.pdf
- 「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進について(文部科学省) https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/asagohan/index.htm
- 睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(概要)(文部科学省、平成26年11月調査) https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/__icsFiles/afieldfile/2015/04/30/1357460_01_1_1.pdf
よくある質問
- 小学生は何時に寝ればよいですか?
- 決まった就寝時刻は示されていません。厚生労働省の睡眠ガイドは、小学生は9〜12時間の睡眠を参考に、起きる時刻から逆算して寝る時刻を決めるよう勧めています。朝6時30分に起きるなら、9時間眠るには21時30分に眠っている必要があります。
- 昼寝はいつまで必要ですか?
- 睡眠ガイドは、4〜5歳以降は昼寝がそれほど要らなくなるとしています。夜の寝つきが悪い幼児は、昼寝をしない選択肢が望ましい可能性があるとも書いています。保育所に通っている場合は園の生活時間もあるため、就学が近づいたら少しずつ短くしていきます。
- 子ども部屋の温度や湿度は何度にすればよいですか?
- 睡眠ガイドは、寝室は暑すぎず寒すぎない温度にし、夏はエアコンを使って涼しく保つよう勧めていますが、子どもの寝室の温度や湿度の具体的な数値は示していません。冬については、WHOの住環境ガイドラインが室温を18℃以上に保つよう推奨していると紹介しています。1歳未満の赤ちゃんは、掛け布団ではなく着るものや空調で調整するようこども家庭庁が勧めています。
- スマートフォンのナイトモードを使えば、寝る前に見てもよいですか?
- 「未就学児の睡眠指針」は、画面を暗くしたりナイトモードにしたりすれば照度は抑えられるとしつつ、子どもは大人より光の影響が大きいため、寝る前の時間帯には画面を見ないよう勧めています。睡眠ガイドも、デジタル機器を寝室に持ち込まず別の部屋に置くよう勧めています。
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