大人の睡眠の質を上げる生活習慣

暮らし・住環境memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
大人の睡眠の質を上げる生活習慣

子どもを寝かしつけたあと、洗濯物をたたみ、明日の準備をして、スマートフォンを見ているうちに日付が変わる。朝はアラームで無理に起きて、平日の疲れを週末の朝寝坊で取り戻す。共働きで子育て中の家庭では、珍しくない夜の過ごし方です。

厚生労働省は2024年2月に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」をまとめ、睡眠の「量(睡眠時間)」と「質(睡眠休養感)」の両方を確保するよう勧めています。睡眠休養感とは、朝起きたときに「休まった」と感じる感覚のことです。このガイドと、厚生労働省の関連資料をもとに、大人が自分で見直せる生活習慣を整理しました。

大人の睡眠時間は6時間以上が目安

睡眠ガイドの成人向けの推奨は、「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」というものです。ガイドは、成人ではおおよそ6〜8時間を適正な睡眠時間の目安としています。

一方で、令和元年(2019年)の国民健康・栄養調査では、20〜59歳の各世代で睡眠時間が6時間未満の人が約35〜50%を占めていました。子育て期と重なる世代で、睡眠時間そのものが足りていない人が少なくありません。

必要な睡眠時間には個人差があるため、6時間はあくまで下限の目安です。日中に強い眠気がある、朝起きても休まった感覚がないといった状態が続くなら、睡眠時間が足りていないサインとして受け止め、寝る時刻を早められないか考えるところから始めます。

起きる時刻をそろえ、休日の寝だめで帳尻を合わせない

平日の睡眠不足を休日に長く寝て取り戻す「寝だめ」について、ガイドは、このような習慣で実際には眠りを「ためる」ことはできないと書いています。休日に長い睡眠が必要になるのは、平日の睡眠時間が不足しているサインだという位置づけです。

寝だめで休日の起床時刻が大きく遅れると、体内時計がずれ、海外旅行の時差ボケに似た状態(社会的時差ボケ)が起きます。40〜64歳を対象にした調査では、平日6時間以上寝ている人に限り、休日の1時間程度の寝だめは寿命短縮リスクを下げていました。平日の睡眠が6時間未満の人は、休日に寝だめをしても寿命短縮リスクが高くなっていました。週末に寝坊するより、平日の就寝を早めるほうが筋のよい対策です。

体内時計を整えるには、朝の光と朝食が助けになります。起床後に朝日の強い光を浴びると体内時計がリセットされ、日中に光を多く浴びると夜に眠りやすくなります。ガイドによれば、この効果は1,000ルクス以上の光を日中に浴びることで得られます。朝食についても、1週間程度抜くと体内時計が遅寝・遅起きの方向にずれるという報告が紹介されています。

日中に体を動かすことも、睡眠の質を高めます。ウォーキングのような有酸素運動のほか、買い物や掃除などの家事も身体活動に数えられ、ガイドは歩行も立派な有酸素運動だとしています。夕方や夜に運動する場合は、就寝の約2〜4時間前までに終えるのが目安です。

寝る前の光・温度・音を整える

夜の過ごし方で影響が大きいのは光です。就寝の約2時間前から、眠りを促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まり、その後に照明やスマートフォンの強い光を浴びると分泌が抑えられ、寝つきが遅れることが報告されています。ガイドは、寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることを勧めています。子どもが寝たあとに寝室で動画を見る習慣があるなら、まずそこが見直しどころです。

温度については、寝室は暑すぎず寒すぎない温度に保ち、就寝の約1〜2時間前に入浴して体を温めてから寝床に入ると寝つきやすくなると書かれています。夏は寝室の室温が上がると睡眠時間が短くなるという調査があり、ガイドはエアコンで涼しく保つよう書いています。冬は寝具で寝床の中を暖かく保てば睡眠への影響は少ないとしつつ、夜中のトイレや早朝の急な寒さによる血圧の上昇にも触れ、WHOの住環境ガイドラインが冬の室温を18℃以上に保つよう勧めていることを紹介しています。

音は、できるだけ静かな環境が望ましいとされます。欧州WHOガイドラインは夜間の屋外騒音を40dB未満とするよう勧めており、外の音が気になる場合は窓や壁の防音も選択肢になります。寝具は、ガイドでは「リラックスできる寝衣・寝具」とまでしか書かれていません。枕やマットレスの選び方は、次の記事で扱っています。

カフェイン・お酒・たばこの取り方

ガイドは、カフェインの摂取量が1日400mg(コーヒーで700cc程度)を超えると夜に眠りにくくなる可能性があり、夕方以降の摂取は夜間の睡眠に影響しやすいとしています。日本人のカフェインの血中半減期(血液中の濃度が半分になるまでの時間)は3〜7時間と人によって幅があり、午後に飲んだコーヒーが寝る時刻まで残ることもあります。夕方以降は、茶葉を使っていない麦茶やそば茶などに置き換える方法が紹介されています。

お酒は、一時的には寝つきをよくしますが、睡眠の後半の眠りの質は大きく悪化し、飲む量が増えるほど夜中に目が覚める回数が増えます。ガイドは、眠るためにお酒を飲む「寝酒」や晩酌での深酒は、睡眠の質を悪化させる可能性があるとしています。寝酒が習慣になっていて、その理由が眠れないことなら、医師への相談が勧められています。

たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があり、血中半減期が約2時間のため、夕方の喫煙でも寝る前まで作用が残ることがあります。加熱式たばこもニコチンを含めば同じ影響があると考えられ、受動喫煙は妊婦やこどもの睡眠への悪影響が強いことが知られています。同居する家族の睡眠のためにも、喫煙を控えることが勧められています。

寝る前の呼吸法とリラックスの時間

寝つくためには、寝床に入る前に心と体を落ち着かせる時間が要ります。ガイドは、寝床に就く前に少なくとも1時間は、家事や仕事、勉強に追われずにリラックスする時間を確保することが有効だとしています。寝る直前まで家事を片づけている家庭では、この1時間をどう確保するかが最初の課題になります。

リラックスの方法として、ガイドは瞑想法、静かに行うヨガ、腹式呼吸、筋弛緩法、音楽などを挙げ、入眠を促し眠りの質を高める可能性が示されているとしています。同時に、全ての人に効果が保証されたリラクゼーション法はなく、ある人に効く方法が別の人にはかえって興奮を促すこともあるため、自分に合う方法を探すよう書いています。

腹式呼吸のやり方は、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で公開されている講座資料(2019年)にあります。両手を重ねておなかの前にあて、おなかが膨らむように約5拍数えるイメージでゆっくり吸い、膨らみが戻るように約10拍数えるイメージでゆっくり吐く、という手順で、ゆっくり息を吐く深い呼吸を意識することでリラックスできると説明されています。吸う時間より吐く時間を長くするのが特徴です。決まった秒数を守ることより、苦しくない範囲でゆっくり吐くことを優先します。

香りを使う方法については、ガイドもアロマを入眠を促す可能性がある方法に挙げていますが、効果には同じく個人差があります。使い方は次の記事でまとめています。

眠気が来ないのに無理に眠ろうとすると、かえって脳が興奮して寝つきが悪くなることもあります。なかなか寝つけないときは、いったん寝床を離れ、静かで暗めの場所で眠気が来るまで過ごしてから寝床に戻るよう、ガイドは勧めています。

子育て中の家族の睡眠と健康

子育て期は、大人の睡眠がいちばん削られやすい時期です。ガイドは、夜泣きや授乳で養育者の睡眠が細切れになることに触れ、養育者にとって睡眠の確保は心身の健康を守るために必要だとしています。女性の10〜20%が産後うつを経験すると報告されており、著しい睡眠不足や夜中に何度も目が覚める人はそのリスクが高くなります。父親が育児に関わることは、母親の健康を守るだけでなく赤ちゃんにも有益だとも書かれています。

夜中の対応を夫婦で交代する、どちらかが早く寝る日を決めるなど、家族のなかで睡眠時間を分け合う工夫は、こうした知見とも合います。子どもの睡眠時間の目安や寝かしつけの工夫は、別の記事でまとめています。

生活習慣や睡眠環境、嗜好品の取り方を見直しても、眠れない、眠っても休まった感じがしない状態が続く場合、ガイドは不眠症や睡眠時無呼吸などの睡眠障害、うつ病などが隠れている可能性があるとして、医療機関への相談を勧めています。習慣の見直しで変わらないときは、早めに受診を考えてください。

出典

よくある質問

大人は何時間眠ればよいですか?
厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保するよう勧めており、おおよそ6〜8時間を適正な睡眠時間の目安としています。必要な時間には個人差があるため、朝起きたときに休まった感覚があるかどうかも合わせて確かめます。
平日に寝不足でも、休日にまとめて寝れば取り戻せますか?
ガイドは、寝だめで眠りを「ためる」ことはできないとしています。休日に長く寝る必要があるのは平日の睡眠不足のサインで、起床時刻が大きくずれると体内時計も乱れます。平日の睡眠時間を確保することが先です。
寝る前に呼吸法をすれば、必ずよく眠れますか?
腹式呼吸は睡眠ガイドが挙げるリラクゼーション法に含まれますが、ガイドは、全ての人に効果が保証された方法はないと書いています。ゆっくり息を吐く呼吸を試し、合わなければ別の方法を選んでかまいません。
寝つきをよくするために、寝る前にお酒を飲んでもよいですか?
お酒は一時的に寝つきをよくしても、睡眠の後半の眠りの質を悪化させます。ガイドは、眠るためにお酒を飲む寝酒は睡眠の質を悪化させる可能性があるとしており、寝酒の原因が不眠なら医師への相談を勧めています。
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