共同親権で転居と進学は誰が決める?

共同親権で何が変わるかを学校の手続きに当てはめると、出欠の連絡や給食費、行事への参加同意は片方の親だけでできます。入学・転校や子の転居は原則として父母2人で決める事項で、話がまとまらなければ家庭裁判所に申し立てます。2026年4月1日に施行された改正民法で、離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権」を選べるようになりました。
共同親権で変わるのは「2人で決める事項」
共同親権を選んだ家庭では、子にかかわる一部の事項を父母2人で決めることになりました。共同親権にするか単独親権にするかは選択制で、裁判所のQ&Aは「どちらが原則、例外ということはありません」と書いています。
改正の根拠は、2024年5月17日に成立した民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)です。子への虐待のおそれがある場合や、父母が共同して親権を行うことが困難と認められる場合などは、裁判所が単独親権と定めます。離婚すれば自動的に共同親権になる仕組みではありません。
親権の行い方は民法824条の2に書かれています。第1項は「親権は、父母が共同して行う」を原則とし、子の利益のため急迫の事情があるときは一方が行えるとしました。第2項では、子の監護と教育に関する日常の行為なら父母の一方が単独で親権を行使できると定めています。学校の手続きも、この「日常の行為」に当たるかどうかで扱いが分かれます。
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学校の手続きで片方の親だけでできること
出欠連絡、給食費の納付、学校行事への参加同意は、父母のどちらか一人が手続きしてかまいません。いずれも日常の行為の例として、関係府省庁等連絡会議の「Q&A形式の解説資料(民法編)」(2026年1月14日付)に挙がっています。
同じ資料は就学時の健康診断の受診、アレルギーに係る連絡、家庭訪問や三者面談への対応も日常の行為の例に入れています。朝に子どもの発熱を学校へ伝える電話も、遠足の参加同意書の提出も、父母のどちらか一方で足ります。もう一方の親の署名を取りに行く必要はありません。
学校と生活の手続きを、資料の例に沿って分けると次のようになります(2026年10月時点)。
| 手続き | 片方の親でできる | 父母で決める | 急迫の例外 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 就学時の健康診断の受診 | ○ | ― | ― | 民法編Q&A 23頁付近 |
| 給食費の納付、アレルギーの連絡 | ○ | ― | ― | 民法編Q&A 23頁付近 |
| 出欠連絡 | ○ | ― | ― | 民法編Q&A 23〜24頁付近 |
| 学校行事への参加同意 | ○ | ― | ― | 民法編Q&A 23〜24頁付近 |
| 家庭訪問・三者面談 | ○ | ― | ― | 民法編Q&A 23〜24頁付近 |
| 入学・退学・転学・留学・休学の手続き | ― | ○ | 入学手続の期限が迫る場合などに当たり得る | 民法編Q&A 20頁・24頁 |
| 就学校変更の申立て | ― | ○ | 急迫の事情があるとき | 民法編Q&A 24頁 |
| 特別支援学校への就学に関する意見聴取への応答 | ― | ○ | 急迫の事情があるとき | 民法編Q&A 24頁 |
| 子の転居(同一学区内も含む) | ― | ○ | 急迫の事情があれば単独で決められる場合がある | 裁判所 親権行使者Q&A 2頁 |
| 住民票の転入・転出届 | 父母双方の同意は求められない | ― | ― | 行政手続・支援編Q&A 9頁 |
表の分け方は資料が一般的な例として示したものです。家庭ごとの事情によって評価が変わる余地は残ります。
転校・進学・転居は原則として先に父母で決める
入学・退学・転学・休学などの手続きと子の転居は日常の行為に当たらないため、共同親権なら父母で決めてから動きます。例外は子の利益のため急迫の事情があるときで、民法編Q&Aは「入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合」を例に挙げています。
その例でも、家庭裁判所の手続きを待つと子の利益を害するおそれがあるかどうかが問われ、当たるかどうかは個別の事情で判断されます。受験を考えているなら、出願の前に父母で進学先を話し合っておけば、合格発表のあとに急迫かどうかを考える場面を減らせます。
転居について、裁判所の「親権行使者についてのQ&A」は「同一学区内の転居も含めて、基本的には監護及び教育に関する『日常の行為』には該当しません」としています。学区が変わらない近所への引っ越しでも、共同親権なら父母で決める事項です。
住民票の届出は別の話です。子の転入届・転出届について、行政手続・支援編のQ&Aは「父母双方の同意は求めていない」とし、離婚後に父母双方を親権者と定めた場合も同様だと書いています。窓口で届が受け付けられることと、転居を父母で決めることは別の問題として扱われます。
離婚のときに監護者を定めた家庭もあります。民法824条の3により、監護者に指定された親は単独で子の監護と教育、居所の指定と変更などを行えます。
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意見が合わないときの手順
父母の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所にその事項について親権を行う人を決める調停か審判を申し立てます。民法824条の2第3項は、父又は母の請求により、家庭裁判所がその事項に限って一方が単独で親権を行使できると定められるとしています。
申し立てられるのは父か母で、申立先は相手方の住所地の家庭裁判所などです。対象になるのは、進学先のように父母が共同で決めるべき特定の事項でした。
父母の間で書面を交わしても、親権行使者は決まりません。裁判所のQ&Aは「私的文書(公正証書も含む)で同項の親権行使者を定めることは想定されていません」と書いており、家庭裁判所の調停・審判等の手続きが要ります。
学校が間に入って決めることもありません。文部科学大臣は2026年3月31日の記者会見で、学校は親権者双方の意見を調整したり、協議の内容の是非を判断したりする立場にはないと説明しました。
学校の保護者欄や同意欄はどうなる
地方自治研究機構の法務Q&Aは、共同親権の導入だけを理由に保護者欄や同意欄を父母2人分へ直ちに変える必要はないとしています。父母2人の署名が一律に求められるようになる、という結論ではありません。
同じQ&Aは、親権や監護権について申告があった場合や、父母の対立を具体的に把握した場合には個別の対応が要るとも書いています。
学校は親同士の意見を調整する立場にないので、2人の考えが食い違ったまま学校に判断を求めても、学校が決めることにはなりません。
お金の面では、離婚協議中などで別居している場合、児童手当は子と同居している方に優先的に支給されます(こども家庭庁、2026年10月時点)。関連記事はこちら。
来春に転校や引っ越しの予定がある家庭なら、願書を出す前、部屋を契約する前に、相手の親へ話を持ちかける日をひとつ決めておきます。
出典
すべて2026-10-14に確認。
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について(法務省民事局・2026年9月) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html
- 子どもについてのQ&A 1頁(裁判所・2026年) https://www.courts.go.jp/assets/kaisei-kajiqa4.pdf#page=1
- 民法(e-Gov法令検索・2026年4月1日施行分) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- Q&A形式の解説資料(民法編)20頁(関係府省庁等連絡会議・2026年1月14日) https://www.moj.go.jp/content/001462991.pdf#page=20
- Q&A形式の解説資料(民法編)23頁(関係府省庁等連絡会議・2026年1月14日) https://www.moj.go.jp/content/001462991.pdf#page=23
- Q&A形式の解説資料(民法編)24頁(関係府省庁等連絡会議・2026年1月14日) https://www.moj.go.jp/content/001462991.pdf#page=24
- Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)9頁(関係府省庁等連絡会議・2026年1月14日) https://www.moj.go.jp/content/001462992.pdf#page=9
- 親権行使者についてのQ&A 1頁(裁判所・2026年) https://www.courts.go.jp/assets/kaisei-kajiqa5.pdf#page=1
- 親権行使者についてのQ&A 2頁(裁判所・2026年) https://www.courts.go.jp/assets/kaisei-kajiqa5.pdf#page=2
- 親権行使者の指定調停(裁判所・2026年) https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_25_14/index.html
- 民法の改正(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)後の学校実務(地方自治研究機構・2026年) https://www.rilg.or.jp/htdocs/main/houmu_qa/2026/85_summer01.html
- 文部科学大臣記者会見録(文部科学省・2026年3月31日) https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00680.html
- 児童手当制度のご案内(こども家庭庁・2026年10月) https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/jidouteate/annai
よくある質問
- 共同親権はいつから始まった?
- 2026年4月1日に施行されました。根拠の法律は2024年5月17日に成立した民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)です。
- 共同親権によって何が変わる?
- 離婚後に共同親権と単独親権を選べるようになり、共同親権を選んだ場合は急迫の事情がある場合を除き、入学・転校や子の転居などを父母2人で決めます。出欠連絡や給食費の納付のような日常の行為は、片方の親だけでできます。どちらが原則ということはありません。
- 学校行事の同意や出欠の連絡は、どちらの親がしてもいい?
- どちらの親でもかまいません。関係府省庁等連絡会議の民法編Q&Aは、出欠連絡や学校行事への参加同意を日常の行為の例に挙げており、父母の一方が単独で手続きできます。
- 学校の書類に父母2人の署名が必要になる?
- 共同親権の導入だけを理由に、保護者欄や同意欄を直ちに父母2人分へ変える必要はないという法務Q&Aの見解があります。親権について申告があった場合や父母の対立を学校が把握した場合は、個別に対応するとされています。
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