結婚・子育て資金の非課税贈与、来年3月で終わるって本当?

お金の話memStock編集部
結婚・子育て資金の非課税贈与、来年3月で終わるって本当?

帰省先で親から「保育料、少しまとめて出そうか」と言われたら、どう返すでしょうか。ありがたい申し出ですが、贈与税のことや、夫婦どちらの親から受けるのかが頭をよぎって、その場では答えにくい話でもあります。

親や祖父母から結婚や子育ての資金をまとめて受け取っても、1,000万円まで贈与税がかからない制度があります。期限は2027年3月31日です。2026年8月、この制度を担当するこども家庭庁と金融庁は、延長ではなく期限での「廃止」を税制改正要望で求めました。いま決まっていることと決まっていないことを分けて、受け取る側が確かめておきたい点を見ていきます。

2026年10月3日時点で、廃止は各省庁の「要望」の段階です。最終的には、例年12月にまとまる税制改正大綱と、その後の法改正で決まります。結論が出たら、この記事に追記する予定です。

親・祖父母から1,000万円まで非課税で受け取れる制度です

お金を出せるのは「直系尊属」、つまり自分の父母・祖父母・曽祖父母(養父母を含む)です。契約する日に18歳以上50歳未満の人が受け取る側(受贈者)になり、金融機関の専用口座に資金を入れてもらいます。

非課税になるのは受贈者1人あたり1,000万円までで、そのうち結婚関係に使えるのは300万円までです。300万円は1,000万円の枠の内側で、合計1,300万円にはなりません。贈与を受ける前の年に、受贈者本人の合計所得金額が1,000万円を超えていると使えません。

夫婦で確認したいのが「誰の親か」です。配偶者の親から自分の名義で受け取ることはできません(その親の養子になっている場合を除きます)。双方の親が援助を考えているなら、それぞれが自分の親から、自分の名義の口座で受ける形になります。

使い道のうち結婚関係で対象になるのは、挙式・披露宴の費用、婚姻の前後1年以内に受贈者が結んだ賃貸住宅の家賃・敷金・礼金など、同じく前後1年以内の引越し費用です。婚約指輪・結婚指輪、両家の顔合わせや結納、婚活の費用、新婚旅行は対象外です。リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」では、挙式と披露宴・ウエディングパーティーをどちらも行った人の費用総額は平均298.6万円で、結婚関係の上限とほぼ同じ水準です。

妊娠・出産・育児関係では、不妊治療、妊婦健診、分べん費、産後ケア(宿泊型6泊分・デイケア型7回分まで)、小学校に上がる前の子の医療費、保育園・幼稚園・認定こども園やベビーシッターの保育料などが対象です。受贈者本人の出産費用や受贈者の子の保育料・医療費は、受贈者が結婚していなくても対象です。一方、結婚関係の費用とパートナー側の不妊治療・出産の費用は、法律上の結婚が前提と読める定義です(事実婚について明記した公的資料は見当たりません)。

廃止は、まだ「要望」の段階です

2027年3月31日の期限は、前回2024年12月の税制改正大綱で2年延長されたものです。今回、こども家庭庁と金融庁は2026年8月31日付の令和9年度税制改正要望で、期限が来たら制度を廃止するよう求めています。同じ要望書には、期限までに拠出されたお金には引き続きこの特例を適用する、とも書かれています。

要望書は、廃止の理由に利用件数の低迷を挙げています。示されている件数は2023年が217件、2024年が253件、2025年が219件です。これは信託銀行など信託協会加盟会社での契約数の前年からの増加分とみられ、預金型の口座などは含まれていない可能性があるため、制度全体の利用者数ではありません。認知率も、2026年の調査で22.9%と目標の30%に届いていません。

ただし、これは省庁が出した要望で、決定ではありません。税制の変更は、例年12月にまとまる税制改正大綱と、その後の法改正で決まります。期限までに入れたお金の扱いも、いまは要望書に書かれた方針の段階です。似た仕組みの教育資金の一括贈与の非課税制度は、2025年12月26日閣議決定の令和8年度税制改正の大綱で延長されず、2026年3月31日で終了しました。

一括で受け取ったお金には、使い残しや解約の決まりがあります

一括で受け取ったあとで「やっぱり親に返したい」と思っても、基本的にはできません。信託銀行の信託型は、全額を払い出した場合を除いて途中で解約できず、贈与した人にお金を戻せない決まりです。

使い切れなかったときの扱いも決まっています。受贈者が50歳になると契約が終わり、使わなかった残りには、その年の贈与税がかかります。2023年4月1日以後に入れたお金の残りは、親や祖父母からの贈与で使える特例税率でなく、一般税率で計算されます。

契約の途中で贈与した人が亡くなった場合は、その時点の残額を相続で受け取ったものとみなします。相続税がかかるのは、遺産全体が基礎控除を超えるときです。孫が受け取っていた場合は、2021年4月1日以後に入れた分の残額について相続税が2割加算されます(子が受け取っている場合は、通常この加算はありません)。

払い出すたびに領収書や証明書類を期限内に金融機関へ出す手間もあります。信託協会が2026年6月に公表した利用者向けアンケート(n=450)では、改善してほしい点の1位が「払出請求の簡素化」で、58.4%でした。

必要なときに払ってもらう方法もあります

親や祖父母が、必要になったときにその費用を直接出す場合は、この特例を使わなくても贈与税はかかりません。国税庁のタックスアンサー(No.4405)とそのQ&Aでは、扶養義務者(夫婦、親子や祖父母と孫、兄弟姉妹など)から生活費や教育費として受け取り、必要な都度、直接それに充てる分は非課税とされています。Q&Aには、不妊治療、妊婦健診、分べん費、産後ケア、子の医療費、保育料なども例として並んでいます。

ただし対象は「通常必要と認められるもの」、つまり受け取る側の必要と出す側の資力などから見て社会通念上ふさわしい範囲に限られます。名目が生活費や教育費でも、受け取ったお金を預金や投資に回すと贈与税の対象です。配偶者の親は、同居などで生計を一にしていなければ、原則として扶養義務者に当たりません。

結婚式の費用は、新郎新婦や両家が本来負担すべき分をそれぞれ出し合っているなら、そもそも贈与にあたらないと国税庁は説明しています。2つの方法を並べると、次のようになります。

まとめて受け取る(一括贈与の特例) その都度払ってもらう
誰から 自分の親・祖父母など。配偶者の親は不可 親・祖父母・兄弟姉妹など。配偶者の親は生計が同じ場合などに限られる
受け取り方 専用口座にまとめて入れる(最大1,000万円) 必要なときに、その費用に直接充てる
手続き 契約時の書類と、払い出しのたびの領収書・証明書類 特別な手続きはない
使い残し 50歳時点の残りに贈与税 使い残しは生じない(預金に回すと課税)
期限 2027年3月31日までの拠出(廃止を要望中) 期限はない
あとから戻せるか 信託型は解約できない その都度、出すかどうかを決められる

先にまとまったお金を受け取っておけるのが一括、手続きが軽く使い残しが出ないのが都度払いです。親が必要なときに払ってくれる関係なら、特例を使わずに都度払いで足りる場合もあります。

申し出を受けたとき、家族で話しておきたいこと

援助の話は、親の暮らしの話でもあります。信託協会が2026年3月に行った意識調査(子どものいる40〜89歳、n=2,066)では、子にも孫にも経済的な援助をしたことがない人が50.4%でした。制度を知っていて使わなかった人(n=1,120)の理由は「援助する経済的余裕がないから」が最も多く34.8%、「自分自身の将来に備えて資産を残しておきたかったから」も22.6%ありました。

援助を受けない家庭は珍しくなく、親が自分の老後のお金を先に考えるのも自然なことです。申し出があったら、制度を使うかどうかの前に、親がどのくらいの額をどんなつもりで考えているのかを聞いておくと、話を進めやすくなります。

使う場合は契約に書類集めが必要で、受付の締切や手数料は金融機関ごとに違います。取扱金融機関はこども家庭庁のサイトに一覧があり、早めに締切を問い合わせておくと落ち着いて決められます。金額が大きい場合は、税理士に相談する方法もあります。

夫婦のあいだでは、どちらの親からどんな申し出があり、何にいつ使う見込みなのかを共有しておくと、双方の親への返事がそろいます。受益者向けアンケートでは、制度を使った人の26.0%が「結婚・子育て資金について贈与者と話し合うきっかけになった(なる)」と答えていました。家族間のコミュニケーションをテーマにしたサービスを開発するなかでも、お金の話は「あのとき何て言っていたっけ」があとから起きやすい話題だと感じています。

12月の税制改正大綱で、この制度の行方ははっきりします。それまでの数か月は、制度を使うかどうかに加えて、親の考えを聞き、こちらの事情を伝える期間にもなります。次に顔を合わせたとき、「この前の話だけど」と一言切り出すだけでも、話は前に進みます。

出典

よくある質問

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税は、廃止が決まったのですか?
決まっていません。2026年8月31日付で、こども家庭庁と金融庁が期限(2027年3月31日)の到来をもって廃止するよう要望した段階です。最終的には、例年12月にまとまる税制改正大綱とその後の法改正で決まります。
制度がなくなったら、すでに入れたお金はどうなりますか?
要望書には「同日までに拠出された金銭等については、引き続き本特別措置を適用できることとする」(同日=2027年3月31日)と書かれています。これも要望の内容で、確定するのは税制改正大綱と法改正の段階です。
配偶者の親から、この制度で援助を受けられますか?
受けられません。この特例で贈与できるのは受贈者本人の父母・祖父母などの直系尊属に限られます(配偶者の親の養子になっている場合を除きます)。双方の親から受ける場合は、それぞれが自分の親から受ける形になります。
事実婚でも使えますか?
「事実婚は対象外」と明記した公的資料は見当たりません。ただし、結婚関係の費用は婚姻届の受理日を「婚姻の日」とし、パートナー側の不妊治療や出産の費用の「配偶者」は「法律上の婚姻関係にある者」とされています。受贈者本人の出産費用や、受贈者の子の保育料・医療費は、受贈者が結婚していなくても対象です。個別のケースは取扱金融機関や税務署に確認してください。
今から申し込んでも間に合いますか?
法律上は、2027年3月31日までに拠出したお金が対象です。ただし受付の締切や手数料は金融機関ごとに異なり、契約には書類集めも必要です。使う場合は、早めに取扱金融機関に確認してください。制度の一般的な説明は国税庁のタックスアンサー、税の相談は国税庁「税についての相談窓口」から探せます。
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