通知表の「よくできる」は何で決まる?

通知表の見方で迷いやすい「よくできる」は、教科ごとに「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点で、学習指導要領の目標にどこまで届いたかを表す評価です。クラスの順位でも点数の合計でもありません。何%で「よくできる」になるかは、手元の通知表や学校の説明で確認します。
「よくできる」は何と比べて付くのか
学習指導要領の目標と比べて付きます。同じクラスの子との比較や、テストの順位で決まるものではありません。
国立教育政策研究所の「学習評価の在り方ハンドブック」(2019年6月)は、観点別学習状況の評価を「学習指導要領に示す目標に照らして,その実現状況がどのようなものであるかを,観点ごとに評価」するものと説明しています。同じハンドブックでは、小中学校の観点別学習状況を観点ごとにABCの3段階で評価するとしています。
観点の名前を3つに整理したのは、文部科学省の2019年3月29日の通知です。小学校ではいまの学習指導要領が2020年度から全面実施されていて、2026年10月時点で小学生が持ち帰る通知表もこの3観点の枠組みの上にあると考えられます。
国語や算数の欄が何行かに分かれていたら、行ごとの文言を3観点の名前と見比べてみます。
3観点が決まった学習指導要領の改訂については、家庭向けにまとめた記事があります。
3観点のうちテストで測れないのはどれか
資料の文言から読む限り、テストの点数だけでは決まりにくいのは「主体的に学習に取り組む態度」です。単元テストの点と各観点の対応は、学校の説明で確かめてください。
文部科学省の通知はこの観点を「粘り強い取組の中で,自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価する」としています。
同じ通知は、「挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど,性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面」をとらえるような評価を、学習評価の誤解として挙げています。手を挙げる回数が少ない子が、それだけで「できる」止まりになる仕組みではありません。
| 観点 | 文部科学省の資料にある説明 | 単元テストの点との関係 | 「よくできる」の付き方 |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 3観点の1つとして整理 | 資料に記載なし(学校の説明で確認) | 学校が示す基準に照らして判断 |
| 思考・判断・表現 | 3観点の1つとして整理 | 資料に記載なし(学校の説明で確認) | 学校が示す基準に照らして判断 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 粘り強く取り組み、自らの学習を調整しようとしているかを含めて評価 | 資料に記載なし(学校の説明で確認) | 挙手の回数など形式面だけでは決めない |
表の「単元テストの点との関係」の列は、資料の文言から読める範囲で書いています。どの課題やテストでどの観点を見たかは、学校に確認してください。
評価が実際に何を測っているのかという問いは、AIと教育の評価を扱ったこちらの記事でも取り上げています。
「よくできる」の割合は決まっているのか
国の資料にあるのは目標に照らして観点ごとに評価するという方法で、クラスの何割に「よくできる」を付けるという枠ではありません。「1割しか付かない」「真ん中ばかり」という話は、ある学校や学年での体験として受け止めておくのがよさそうです。
学校ごとの基準の一例に、佐賀県の神埼市立西郷小学校が保護者向けに出した「通知表『あゆみ』の見方について」(2021年7月20日)があります。この学校では「よくできる」「できる」「もう少し」の3段階で評価し、「ねらいを十分上回っている状況(90%から 95%以上)であれば『よくできる』に○が付きます」と説明しています。
この90〜95%は西郷小学校が示した独自の目安で、ほかの学校にそのまま当てはまる数字ではありません。西郷小学校では、ねらいを十分上回ったときに付く段階です。それを決めているのは人数の枠でなく学校の基準だ、というところまでが資料から言えることです。
わが子の学校の基準を知りたいときは、通知表と一緒に説明の紙が配られていないかをまず確かめます。
通知表と指導要録はどう違うのか
家庭に届く通知表と、文部科学省の通知の題名にある「指導要録」は、名前の違う別の書類と考えられますが、両者の関係を直接書いた箇所は今回の資料にありませんでした。国の資料が示しているのは3観点や3段階という評価の枠組みで、通知表の呼び名や段階を表す言葉は学校ごとに違う例があります。
| 項目 | 国の資料 | 通知表の一例(西郷小学校) |
|---|---|---|
| 書類の呼び名 | 指導要録(文部科学省の通知の題名) | 「あゆみ」 |
| 段階の表し方 | 観点ごとにABCの3段階(国立教育政策研究所のハンドブック) | 「よくできる」「できる」「もう少し」 |
| 何に照らすか | 学習指導要領に示す目標 | ねらい(90〜95%以上で「よくできる」) |
| 資料の時点 | 2019年3月の通知、2019年6月のハンドブック | 2021年7月の保護者向け資料 |
3段階のいちばん下の言葉は、西郷小学校では「もう少し」です。学校によって表記が異なる可能性があるため、手元の説明を確認します。他の学校の子と通知表を見比べても、言葉や基準がそろっているとは限りません。
国のABCと通知表の言葉がどう対応するか、通知表の様式をどこが決めているかを示す根拠は、今回参照した資料にはありません。まずは手元の通知表に付いている説明を読むのが確実です。
「がんばろう」が付いたらどこを見るか
最初にどの教科のどの観点に付いたかを確かめ、次に所見欄の文章を読みます。それでも理由がつかめなければ、個人面談などの場で担任に「どの場面を見てこの評価になったか」を尋ねます。
「知識・技能」に付いたなら、単元テストやドリルで取りこぼしている単元がないかを本人と一緒に見返せます。「主体的に学習に取り組む態度」に付いたなら、点数の話から入らず、分からない問題に出会ったときどうしているかを聞いてみます。この観点が見ているのは粘り強さと学び方の調整で、挙手の回数ではありません。
担任に聞くときは、評価を変えてほしいという相談でなく、家で何を見ればよいかを尋ねる形にします。そのほうが次の学期の過ごし方につながる答えが返ってきやすくなります。
数が多いときも、合計より並び方を見ます。「がんばろう」が国語と算数の同じ観点に集まっているのか、ばらばらなのかで、家で手を貸す場所が変わります。
次に通知表を開くときは、丸の数を数える前に、各教科の「主体的に学習に取り組む態度」の行だけを縦にたどってみてください。同じ観点に「できる」が並んでいれば、面談で聞くことが1つ決まります。
来年の春に入学するきょうだいがいるなら、通学路の練習をいつ始めるかもこの時期に確かめておけます。
出典
すべて2026-10-24に確認。
- 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)(文部科学省・2019年3月29日) https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1415169.htm
- 学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)p.4(国立教育政策研究所・2019年6月) https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/gakushuhyouka_R010613-01.pdf#page=4
- 学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)p.5(国立教育政策研究所・2019年6月) https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/gakushuhyouka_R010613-01.pdf#page=5
- 本資料作成の趣旨(文部科学省・2021年) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/senseiouen/mext_01487.html
- 通知表「あゆみ」の見方について(神埼市立西郷小学校・2021年7月20日) https://www.education.saga.jp/hp/saigo-e/wp-content/uploads/sites/56/2021/08/通知表の見方保護者用.pdf#page=1
よくある質問
- 「よくできる」が少ない子は多いのですか?
- 全国でどれくらいの子に「よくできる」が付いているかは、今回参照した資料では確認できません。観点別の評価は学習指導要領の目標に照らして付けるもので、クラスの人数で割り振る仕組みではありません。
- オール「できる」で「よくできる」が1つもないのは低い評価ですか?
- オール「できる」は、3段階のいちばん下の評価ではありません。「できる」は3段階の真ん中で、西郷小学校の例では、いちばん下は「もう少し」です。西郷小学校の例では「よくできる」はねらいを十分上回る状況に付くとされていて、そこに届いていないという意味になります。どの観点で上の段階に届かなかったかは、所見欄や面談で確かめられます。
- 「がんばろう」が多いのはどのくらいのレベルですか?
- 「がんばろう」の数だけでは、どのくらいのレベルかは判断できません。どの教科のどの観点に付いているかを見て、同じ観点に集まっているかを確かめます。理由が所見欄から読み取れなければ、面談で担任に聞きます。
- 小学校の通知表の判断基準は何ですか?
- 国の資料では、学習指導要領の目標に照らして、3つの観点ごとに実現状況を評価するとされています。何%で「よくできる」とするかの具体的な基準は、学校の説明で確認します。西郷小学校の例では90〜95%以上でした。
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