遺言書は自筆と公正証書のどちらで書く?

資産形成・投資memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
遺言書は自筆と公正証書のどちらで書く?

子どもが生まれたときや家を買ったときに、「自分に何かあったら、家族は財産の場所や分け方で困らないか」と考え、遺言書が頭に浮かぶことがあります。遺言の方式は公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類で、家庭で検討しやすいのは、自分で書く「自筆証書遺言」と、公証人が作る「公正証書遺言」です。自筆証書遺言は法務局に1件3,900円で預けられ、公正証書遺言は2025年10月1日から原則として電子データで作成されるようになりました。

どちらを選ぶにしても、方式の決まりを外れると遺言として扱われない場合があります。2026年10月時点の法務省・日本公証人連合会・裁判所の情報をもとに、それぞれの要件と手続き、遺された家族が知っておきたい相続放棄の期限を整理します。

遺言がなければ法定相続分を目安に話し合う

遺言書がない場合、遺産は相続人の間の話し合い(遺産分割)で分けることになり、民法の法定相続分は、合意できなかったときの遺産の持分です。亡くなった人の配偶者は常に相続人になり、子どもがいれば配偶者と子どもが相続人です。配偶者と子どもが相続人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもが全員で2分の1です。

法定相続分は、必ずその割合で分けなければならないものではありません。とはいえ、相続人の間で合意する必要があるため、財産の場所が分からない、意見がまとまらないといった事情があると、手続きが長引きます。遺言書は、誰に何を渡したいかを先に示しておく方法です。

遺言は民法の定める方式に従う必要があり、方式に従わない遺言は無効です。日本公証人連合会は、生前の発言や、録音・録画で残した内容は遺言としての法律上の効力がないと説明しています。気持ちを声や動画で残すこと自体は家族への手紙になりますが、財産の分け方を法的に指定したい場合は、次のどちらかの方式で書面などに残します。

方式 作る人 証人 保管 家庭裁判所の検認
自筆証書遺言(自宅などで保管) 本人 不要 本人・家族など 必要
自筆証書遺言(法務局で保管) 本人 不要 法務局 不要
公正証書遺言 公証人 2名 公証役場・日本公証人連合会のシステム 不要

検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、遺言書の偽造や変造を防ぐための家庭裁判所の手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。

自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書して押印する

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自分で書き、印を押す必要があります(民法第968条)。日付は特定できるように書き、「令和○年○月吉日」のような書き方はできません。押印は認印でも問題ありませんが、法務省はスタンプ印を避けるよう案内しています。

財産の一覧(財産目録)だけは自書でなくてもよく、パソコンで作ったり、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーを添付したりできます。その場合は、目録のすべてのページに署名と押印が必要です。書き間違えたところを直すときや書き足すときは、場所を示して変更した旨を書き添えて署名し、変更した箇所に押印します。

自宅で保管する自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、保管していた人や見つけた相続人が遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認を受けなければなりません。紛失や書き換えの心配と検認の手間を減らす方法として、次の法務局の保管制度があります。

法務局の保管制度なら1件3,900円で検認が不要になる

自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度で、2020年7月10日に始まりました。保管の申請の手数料は、遺言書1通につき3,900円です。申請できるのは遺言者本人だけで、代理人や郵送での申請はできず、予約したうえで本人が法務局に出向きます。

預けた遺言書は、原本が遺言者の死亡後50年間、画像データが150年間保管されます。相続が始まった後は家庭裁判所の検認が要らず、相続人は全国どこの法務局でもデータで遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書を受け取ったりできます。遺言者があらかじめ希望すれば、死亡が確認されたときに、指定した人(3名まで)へ遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

保管の申請時には、民法の自筆証書遺言の形式に合っているかを遺言書保管官が外形的に確かめます。ただし、法務局は遺言の内容の相談には応じず、保管した遺言書の有効性を保証するものでもありません。用紙はA4で、決められた余白を空け、片面だけに書くなど、保管制度独自の様式のルールもあるため、書く前に法務省の案内を確かめておくと書き直しを避けられます。

公正証書遺言は2025年10月から電子データで作られる

公正証書遺言は、遺言者が公証人と証人2名の前で遺言の内容を口頭で告げ、公証人が文章にまとめて作成する遺言です。家庭裁判所の検認は不要で、原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのおそれがありません。公証人に内容の相談もできます。

改正公証人法の施行により、2025年10月1日から公正証書は原則として電子データ(PDF形式の電磁的記録)で作成されるようになりました。列席者はパソコン上で電子サインをし、公証人が電子署名をしたものが原本になり、日本公証人連合会が運営するシステムで保存されます。正本や謄本に当たるものは、紙でも電子データでも受け取れます。

手続き 2025年9月まで 2025年10月1日から
申し込み 公証役場に出向く インターネットからメールで嘱託できる
内容の確認 公証人と対面 嘱託人が希望し、公証人が相当と認めればウェブ会議も可能
原本 紙に署名・押印 原則として電子データで作成・保存

ウェブ会議での作成は、希望すれば必ず使えるものではなく、公証人が相当と認めた場合に限られます。作成の手数料は公証人手数料令で定められ、遺言の対象になる財産の価額に応じて決まります。

財産の一覧を残し、相続放棄の期限を家族で知っておく

遺言書と一緒に、どこにどんな財産があるかの一覧を残しておくと、家族の手続きが進めやすくなります。預貯金や証券口座、不動産に加えて、保険の契約も一覧に入れておきます。生命保険については、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で、亡くなった親族が契約者や被保険者になっている生命保険契約の有無を、会員の生命保険会社にまとめて確かめられます。利用料は照会対象者1名につきWEB申請6,000円、書面申請7,000円です。

借金などのマイナスの財産が多い場合、相続人は相続放棄を選べます。相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します。費用は収入印紙800円分と郵便切手です。3か月以内に財産の状況を調べても決められない場合は、家庭裁判所に申し立てて、この期間を延ばしてもらえることがあります。

相続税は、遺産の課税価格の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。配偶者と子ども2人が相続人なら、基礎控除額は4,800万円です。相続の準備について調査から見た家族の実情は、次の記事にまとめています。

出典

よくある質問

遺言書は何歳から書けますか?
満15歳以上であれば、いつでも遺言ができます。遺言の撤回や変更は、いつでも何回でもできるため、子育て中の世代でも、財産や家族の状況が変わったときに書き直す前提で作っておけます。
法務局に預けた遺言書は書き直せますか?
書き直せます。保管の申請を撤回して返してもらえ、撤回や住所等の変更の届出には手数料がかかりません。新しい遺言書を追加で預ける場合は、最初に申請した遺言書保管所に申請します。
公正証書遺言は、公証役場に行かずに作れますか?
2025年10月1日から、嘱託人が希望し、公証人が相当と認めた場合には、ウェブ会議で公正証書を作成できるようになりました。必ず認められるものではないため、作成を依頼する公証役場に確かめてください。
親の借金が多い場合、相続放棄はいつまでにすればいいですか?
自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に申述します。期間内に判断できない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。
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この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

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この記事を監修した人

山田 尚貴

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。

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