資産運用、子育て世帯は何から始める?

資産形成・投資memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
資産運用、子育て世帯は何から始める?

子どもが生まれて保育料や習い事の出費が始まると、10年後、20年後のお金のことも気になってきます。教育費と老後資金をこのまま預金だけで用意できるのか、投資を始めるならいくらから、何で始めればいいのか。周りでNISAの話を聞くと、そんな疑問がわいてきます。

投資は預金と違い、元本割れのおそれがあります。そのため、商品を選ぶ前に「どのお金を投資に回すか」を決めておくことが、資産運用を長く続けるための前提になります。この記事では、家計の預金の割合と物価の動き、リスクの意味、教育費と老後資金の置き場所の分け方を、金融庁・日本銀行・金融経済教育推進機構(J-FLEC)などの資料をもとに整理します。

預金だけで持つと、何が起きるのか

日本銀行の資金循環統計(2026年第2四半期速報)によると、2026年6月末の家計の金融資産は2,519兆円です。このうち現金・預金は1,132兆円で、全体の44.9%を占めます。株式等は486兆円(19.3%)、投資信託は193兆円(7.7%)で、日本の家計はいまも資産の半分近くを現金・預金で持っています。

預金は元本が保証され、必要なときにすぐ引き出せます。一方で、物価が上がると、同じ金額で買えるものは減っていきます。総務省の消費者物価指数は、2025年平均の総合指数が前年比3.2%の上昇でした。2026年8月分は前年同月比1.9%の上昇です。

仮に物価が毎年2%ずつ上がり続けると、10年後に100万円で買えるものは、今の価格に直して約82万円分になります(税金や預金の利息は考えない単純な計算です)。預金の金利が物価の上昇率を下回る状態が続けば、金額は減っていなくても、お金の価値は少しずつ目減りします。資産の一部を投資に回す理由のひとつは、この目減りに備えることにあります。

ただし、株式や債券、投資信託などは預貯金と違い、元本割れのおそれがあります。預金をやめて投資に切り替えるのではなく、預金と投資を目的ごとに使い分ける考え方が基本になります。

始める前に、お金を使う時期で分ける

金融庁のNISA特設ウェブサイトは、家計管理の基本を、収入と支出を把握し、収支を黒字にして、黒字分を貯蓄することだと説明しています。給料日に一定額を自動で貯蓄用の口座に移し、残りでやりくりする方法も紹介されています。資産運用はこの「先に取り分ける」仕組みの延長にあります。

J-FLECの教材は、手元のお金を「日常生活に必要なお金」「近い将来に使う予定のお金」「当面使う予定のないお金」の3つに整理しています。生活費は使うお金、車や住宅の購入、教育費などは目的のある貯めるお金、老後資金や大きな病気・ケガへの備えは増やす・備えるお金という整理です。

そのうえで、投資は無理のない範囲、つまり当面使う予定のないお金で行うよう勧めています。生活費や近いうちに使う予定のお金まで投資に回すと、値下がりした時期に売らざるを得なくなります。まず家計簿や口座の明細で毎月の支出をつかみ、急な出費に備える預金を確保してから、残ったお金のうち何年も手を付けなくてよい分を投資の候補にします。

リスクとリターン、長期・積立・分散の考え方

金融庁の「基礎から学べる金融ガイド」は、運用で得られる成果を「リターン」、その不確実性(振れ幅)を「リスク」と説明しています。リスクが低い金融商品はリターンも低く、高いリターンを望めば高いリスクを伴います。J-FLECの教材も、リスクが低くてリターンが高い金融商品はないと説明しています。

どこまでの損失に耐えられるかを「リスク許容度」といい、同じガイドは、生活に無理のない範囲で始めることを勧めています。育休や時短勤務で収入が減る時期がある家庭なら、その時期に値下がりが重なっても家計が持ちこたえられるかを考えておく必要があります。

リスクとの付き合い方として、金融庁は長期・積立・分散の3つを挙げています。長い期間投資を続けると複利の効果が大きくなります。決まった金額を続けて買う積立投資なら、高いときにだけ買ってしまうことを避けられます。値動きの異なる複数の資産(国内と海外、株式と債券など)に分けて投資すれば、価格の変動をある程度抑えられます。

複利の効果を数字で見てみます。毎月1万円を20年間積み立てると、元本は240万円です。年3%(毎月複利)で運用できたと仮定すると、20年後には約328万円になる計算です。税金や手数料は考えておらず、実際の運用成果は毎年変わり、元本割れになる年もあります。金融庁のNISA特設ウェブサイトの「つみたてシミュレーター」で、金額や期間を変えて試算できます。

教育費と老後資金で、置き場所を変える

子育て世帯の資産運用で迷いやすいのが、教育費と老後資金を同じ方法で用意してよいかという点です。教育費は使う時期と金額の目安がある程度決まっていて、時期が近づくほど、値下がりから回復するのを待つ時間がなくなります。進学の時期が近いお金は預金など値動きのない形で持ち、まだ先のお金と分けて考えると無理がありません。

運用益にかかる税金を減らす制度として、NISAとiDeCoがあります。NISAは、通常は約20%かかる売却益や配当への税金が非課税になる制度です。2024年からの制度では、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円で、合計年360万円まで投資できます。生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)で、非課税で持てる期間は無期限です。売却した場合は、翌年以降に取得金額の分だけ枠が復活するため、教育費のように途中で引き出す予定のあるお金にも使えます。

iDeCoは掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税で再投資されます。掛金は月5,000円以上、1,000円単位で決められます。ただし、原則として60歳になるまで引き出せません。教育費や住宅資金など60歳より前に使うお金ではなく、老後資金を準備する手段として考えるのが前提です。

2027年1月からは、つみたて投資枠の年齢要件がなくなり、0歳から17歳の子どももNISA口座を開設できるようになります。未成年者の年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円で、使えるのはつみたて投資枠だけです。子どもが17歳までの間は原則として払い出せませんが、12歳以降は子どものために使うなど一定の要件の下で払い出せます。

商品を選ぶ前に確かめたいこと

投資信託には、購入時に販売会社に支払う「購入時手数料」と、保有している間、保有額に応じて日々差し引かれる「運用管理費用(信託報酬)」があります。信託報酬は年率で示され、保有を続ける限りかかり続けるので、保有期間が長いほど負担の合計も大きくなります。どの費用がいくらかかるかは、目論見書で確認できます。

口座を開く金融機関や、投資を勧めてくる業者が、金融庁の登録を受けているかも確かめておきます。金融庁のウェブサイトでは、登録を受けた金融商品取引業者の一覧を公開しています。J-FLECの教材は、「元本保証」「毎月・毎年確実に○%儲かる」といった宣伝文句を、投資詐欺の特徴として挙げています。元本が保証されていて、毎月・毎年決まった利益が出る投資はありません。

NISAやiDeCoの細かな条件や、掛金の決め方は別の記事で紹介しています。iDeCoの上限は2026年12月分から引き上げが予定されているので、加入を考えている方はあわせて確かめてください。

2027年に始まる子ども向けのNISAについては、次の記事で詳しく説明しています。

出典

よくある質問

月1万円の積立でも意味はありますか?
金融庁は、少ない金額から始められることを積立投資の利点に挙げています。毎月1万円を20年間続けると元本は240万円で、年3%で運用できたと仮定すると約328万円になる計算です。ただし運用成果は保証されず、元本を下回ることもあります。
預金はどのくらい残しておけばいいですか?
公的な資料に「生活費の何か月分」という一律の目安は示されていません。J-FLECの教材にあるように、日常生活に必要なお金と近い将来に使う予定のお金を預金などで確保し、当面使う予定のないお金を投資に回すと考えると、家庭ごとの金額を決めやすくなります。
NISAとiDeCoはどちらから始めればいいですか?
一番の違いは引き出しやすさです。NISAはいつでも売却でき、iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに掛金が所得控除の対象になります。教育費など60歳より前に使う可能性があるお金はNISAや預金、老後資金はiDeCoも候補というように、使う時期で分けて考えます。
投資信託の手数料はどこを見ればわかりますか?
購入時手数料、運用管理費用(信託報酬)、換金時の信託財産留保額などの費用は、目論見書に記載されています。信託報酬は保有している間ずっとかかるので、年率を確かめてから選びます。
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この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

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この記事を監修した人

山田 尚貴

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。

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