三大疾病保険は必要?公的保障から考える

保険memStock編集部(更新: 2026年10月13日)
三大疾病保険は必要?公的保障から考える

親や職場の同僚ががんや脳卒中で入院したと聞いて、自分の備えが気になった。保険の見直しの面談で「三大疾病の保障も付けておきませんか」と勧められた。子育て中の家庭で三大疾病保険が話題にのぼるのは、たいていこうしたときです。

三大疾病保険は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になったときにまとまった保険金が出る保険です。ただ、保険金が出る条件は病名だけでは決まらず、公的医療保険でまかなえる部分もあります。三大疾病がどれくらい身近なのかを公的な統計で確かめたうえで、保険のしくみと、2026年10月時点の公的保障でカバーできる範囲を整理しました。

三大疾病はどれくらい身近か

厚生労働省の人口動態統計(2025年の概数)では、死因の第1位は悪性新生物(がん)で37万8812人、全死亡者の23.8%でした。第2位は心疾患(高血圧性を除く)で13.9%、脳血管疾患は第4位で6.3%です。3つを合わせると、亡くなった人の44.0%を占めます。年齢別に見ると、女性は35〜89歳で、男性は45〜89歳で、がんが死因の最も多い病気でした。子育て世代と重なる年代です。

がんは、亡くなる人だけでなく診断される人も多い病気です。国立がん研究センターのがん情報サービスによると、一生のうちにがんと診断される確率は、2023年データに基づくと男性61.1%、女性50.1%で、どちらも2人に1人の割合です。

入院の長さは病気によって大きく違います。厚生労働省の患者調査(2023年)で退院した患者の平均在院日数を見ると、がん(悪性新生物)は14.4日、心疾患は18.3日でした。これに対して脳血管疾患は68.9日と長く、35〜64歳に限っても44.5日です。脳卒中は、治療費だけでなく仕事を休む期間の収入も考えておきたい病気だといえます。

三大疾病保険のしくみと保険金が出る条件

三大疾病保険の正式な名前は「特定疾病保障保険」です。生命保険文化センターの説明では、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になったときに特定疾病保険金を受け取れ、その時点で契約は終わります。保険金を受け取らずに亡くなったときは同じ額の死亡保険金が出るため、死亡保障を兼ねた保険でもあります。保険金は一時金で受け取るタイプが中心で、使い道は決められていません。主契約ではなく、終身保険などに付ける特約の形でも加入できます。

保険金が出る「所定の状態」は、病気ごとに違います。生命保険文化センターが示す例は次のとおりです。

  • がん:契約後に初めてがんと診断確定されたとき。上皮内がんと皮膚がんは除かれます(皮膚の悪性黒色腫は対象)
  • 急性心筋梗塞:初診日から60日以上、労働が制限される状態が続いたと医師に診断されたとき。狭心症などは含まれません
  • 脳卒中(くも膜下出血・脳内出血・脳梗塞):初診日から60日以上、言語障害や運動失調、麻痺などの後遺症が続いたと医師に診断されたとき

つまり、心筋梗塞や脳卒中で倒れても、早く回復して60日以内に仕事に戻れた場合は、保険金が出ないことがあります。最近は、所定の手術を受けたときにも保険金が出る商品もあります。また、契約から90日以内などに診断された乳がん(またはがん全般)を保障の対象外とする保険会社もあります。条件は保険会社や加入した時期で違うため、「ご契約のしおり」や約款で確かめておくと安心です。

保険料の払い込みを免除する特約もあります。がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になると、それ以降の保険料を払わなくてよくなるもので、免除の条件は保険会社や特約によって異なります。

医療保険・がん保険との違い

民間の医療保険は、入院や手術に対して給付金が出る保険です。入院1日あたり10,000円のように日額があらかじめ決まっている定額給付が主流で、実際にかかった医療費を払う実損払いではありません。病気の種類を問わず使える一方、受け取れる額は入院日数で決まり、1回の入院で受け取れる日数にも上限があります。

がん保険は、保障をがんに絞った保険です。がんと診断されたときの診断給付金や、日数の上限がない入院給付金などがあります。契約から90日の待ち期間を設けている商品がふつうで、その間にがんと診断されても保障の対象になりません。

三大疾病保険は、この2つとは受け取り方が違います。入院日数に関係なく、条件を満たした時点でまとまった額が一度に出るため、住宅ローンの返済や収入が減った期間の生活費にも回せます。反対に、三大疾病以外の病気やケガには使えず、一度受け取ると契約が終わります。医療保険の種類と選び方は、こちらの記事でも整理しています。

公的保障でまかなえる範囲

三大疾病で治療を受けても、医療費の自己負担には上限があります。高額療養費制度は、1か月の窓口負担が上限額を超えたときに、超えた分が払い戻されるしくみです。2026年8月の診療分から上限額が引き上げられ、協会けんぽの場合、70歳未満で標準報酬月額28万〜50万円の人の上限は「85,800円+(総医療費−286,000円)×1%」になりました。

この区分の人が、1か月に保険診療で100万円かかる治療を受けたとします。窓口で3割の30万円を払ったあと、上限の92,940円を超えた207,060円が戻ります。マイナ保険証を使うか、事前に限度額適用認定証を受け取っておけば、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます。

治療が長引いたときの軽減もあります。直近12か月に3回以上高額療養費に該当すると、4回目からは上限が下がり、上の区分では44,400円です。2026年8月からは年単位の上限(年間上限)も設けられ、8月から翌年7月までの1年間で、上の区分では53万円が上限になります。年間上限の払い戻しの申請は2027年8月から始まります。

一方、高額療養費の計算に入らない費用もあります。入院中の食事代、個室など特別の病室を希望したときの特別料金(選定療養)、先進医療の技術料です。先進医療は2026年9月時点で71種類あり、技術料以外の診察・検査・入院料などは通常の保険診療と同じ扱いになります。年間上限の詳しいしくみは、こちらの記事で解説しています。

収入の面では、会社員などが入る健康保険に傷病手当金があります。業務外の病気やケガで連続3日間休んだあと、4日目以降の休んだ日に支給され、期間は支給開始から通算1年6か月です。1日あたりの額は直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2で、平均が30万円の人なら1日6,667円になります。ただし国民健康保険では、傷病手当金は市町村などが条例で定めた場合に出る任意の給付にとどまります。自営業やフリーランスの人は、休んだ期間の収入を公的保険で補える範囲が会社員より小さくなります。

加入を決める前に確かめたいこと

三大疾病保険が役に立つのは、公的保障では埋まらない出費や収入の減少を、貯蓄だけでは支えきれない場合です。医療費は高額療養費で月ごとの上限が決まっているので、検討の中心は、食事代や個室の特別料金など高額療養費の対象外の費用と、仕事を休む期間の収入の減り方になります。会社員か自営業かで傷病手当金の有無が変わるため、働き方によって必要な額も変わります。

すでに入っている保険の中身も確かめておきます。終身保険や医療保険に特定疾病の特約が付いていたり、がん保険の診断給付金と保障が重なっていたりすることがあります。勤務先の団体保険や福利厚生で、似た保障を持っている場合もあります。

保険金が出る条件も見比べておきたい点です。急性心筋梗塞と脳卒中で「60日以上の状態の継続」が条件になっているのか、手術でも受け取れるのか、上皮内がんは対象か。同じ「三大疾病保障」という名前でも、受け取れる場面は商品ごとに違います。保険会社の説明資料だけでなく、約款の支払条件の欄まで目を通すと、思っていた保障との違いに気づきやすくなります。

公的医療保険のしくみ全体は、こちらの記事でまとめています。

出典

よくある質問

三大疾病保険と医療保険は、両方入る必要がありますか?
役割が違うため、どちらか一方で足りるかどうかは家庭の状況によります。医療保険は入院日数などに応じて給付金が出る保険で、三大疾病以外の病気やケガにも使えます。三大疾病保険は対象の3つの病気で所定の状態になったときに一時金が出る保険です。高額療養費や傷病手当金、貯蓄でまかなえる範囲を確かめてから、足りない部分をどちらで補うかを考えると重複を避けられます。
上皮内がんと診断された場合も保険金は出ますか?
生命保険文化センターが示す特定疾病保障保険の例では、上皮内がんは対象外です。ただし保険会社や商品によって扱いが違い、上皮内がんでも一部の給付が出るものもあります。加入中の保険の約款で確かめてください。
脳卒中で入院しても保険金が出ないことはありますか?
あります。特定疾病保障保険の例では、脳卒中は初診日から60日以上、麻痺や言語障害などの後遺症が続いたと医師に診断されることが条件です。回復が早く条件に当てはまらない場合は保険金が出ません。手術を受けたことを条件に保険金が出る商品もあるため、条件の違いを比べておくと判断しやすくなります。
三大疾病保険の保険金を受け取ると、契約はどうなりますか?
特定疾病保障保険は、特定疾病保険金を受け取った時点で契約が終わります。その後の死亡保障もなくなるため、ほかの死亡保障をどう持つかもあわせて考えておく必要があります。
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この記事を書いた人

memStock編集部

memStock編集部は、家族の豊かな暮らしと家計管理を応援する記事制作チームです。ライフハック・節約・投資・保険など、日常生活とお金に関する実用的な情報を、確かな専門知識と多様な視点から分析・提供しています。読者の皆様が抱える日々の悩みや将来への不安を解消し、ワンランク上の生活を実現するためのヒントが詰まった記事をお届けします。 「家族の暮らしをより豊かに」をモットーに、わかりやすく実践的なコンテンツで皆様の人生設計をサポートします。

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この記事を監修した人

山田 尚貴

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒業後、NTTPCコミュニケーションズでシステムエンジニアとして金融機関等のシステム運用などに携わる。2009年、株式会社エニドアを創業し代表取締役に就任。クラウドソーシングサービスの開発・提供を行う。M&Aにより会社を売却後、上場企業のグループ会社の経営を6年行った後、株式会社modoを創業し代表取締役に就任。家族向けのサービスmemStockの開発を行う。 二級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種を保有。2児の父。

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