親のネット口座、誰のスマホで見守る?

生活/暮らしmemStock編集部
親のネット口座、誰のスマホで見守る?

年末の帰省で、母から「ネットの口座、あんたが見ておいて」とIDとパスワードのメモを渡されそうになりました。

高齢の親のネット口座の見守りは、子がIDを預からず、入出金の通知を親のスマホで受け、残高と明細は親本人が登録した見守りサービスを通して子のスマホで見る形にします。ログインをパスキーに替えるときは銀行が案内する登録方法を親子で確かめ、「最終確認通知書」のようなニセのハガキに書かれた連絡先には連絡しない、と家族で決めておきます。

親のIDを子が預かると何が起きるか

口座を動かせる鍵が親と子の2人の手に渡り、誰がどの操作をしたのかを後から区別できなくなります。全国銀行協会は2021年2月の「金融取引の代理等に関する考え方」で、預金の払出しには本人の意思確認が必要だとし、「家族といえども預金者の預金を払い出すことはできない」と書いています。

この文書は各行に一律の対応を求めるものではなく、個別の状況で対応が異なることもあるとされています。それでも出発点は本人の意思です。本人以外のログインの扱いは、親の銀行の規定で確かめておきます。

パスワードの扱いでも不利です。警察庁は2026年10月23日更新のサイバー警察局便りで「安全なパスワードを設定して使いまわさない!」と呼びかけ、ワンタイムパスワードなどの多要素認証も有効だとしています。家族の間でも、パスワードをメモやメッセージアプリで受け渡さないことにします。

通知は親のスマホ、照会は子のスマホ

入出金やログインの知らせは親本人のスマホで受け、子は親が登録した見守りサービスを通して自分のスマホで残高と明細を見ます。口座を動かす鍵は親だけが持ち、子は親が許した範囲を読むだけです。

仕組みの例として七十七銀行の家族口座見守りサービスを見ると、2026年10月時点で、家族等が口座残高・入出金明細を照会し、入出金通知を受け取れます。申し込むのは子ではなく「口座情報を提供する(見守られる)お客さま」本人で、インターネットバンキングのほか同行の窓口でも申し込めます。親の銀行に同様のサービスがあるかは、その銀行のサイトで確かめます。

子が親の口座に関わる方法を並べると、次のようになります。

方法 手続きする人 子が見られるもの 扱い(2026年10月時点) 向いている状況
親のIDとパスワードを子が預かる なし(子が親として入る) すべて。操作もできてしまう 全国銀行協会は払出しに本人の意思確認が必要とする 勧めない
入出金・ログインの通知を親のスマホに 親 なし。親が自分で気づく 設定の有無や内容は利用する銀行で確認 親がスマホを毎日見る
家族見守りサービス(七十七銀行の例) 見守られる本人 本人が決めた範囲の残高・明細・通知 照会・通知は1日6回で、リアルタイムではない 離れて暮らし、残高の変化を一緒に見たい
窓口での代理の手続き 親と家族が銀行で 銀行の手続きによる 各行が個別に対応 親が窓口へ行きにくくなってきた
日常生活自立支援事業 親が契約(相談は社会福祉協議会) 子ではなく事業が日常の金銭管理を援助 契約内容を判断できる人が対象 判断に不安が出てきた

七十七銀行の例では、照会・通知はリアルタイムではなく、所定の時刻に1日6回です。子の見守りは不正な出金をその場で止める道具ではありません。親の銀行に入出金やログインを知らせる設定があれば親のスマホで受け取れるようにし、身に覚えのない出金に最初に気づくのは親自身、子は後から一緒に確かめる側、と役割を分けます。

帰省で一緒にやるパスキー設定

パスキーの設定は親のスマホで、親自身の操作で進めてもらい、子は隣で画面の文字を一緒に読む役にとどめます。登録できる端末や利用者の条件は、銀行の案内で確かめます。

パスキーは日本証券業協会の説明で、公開鍵暗号方式を使った、フィッシングに耐性のあるオンライン認証方式です。金融庁は2026年4月、金融機関と警察庁が連携して、フィッシング耐性のある多要素認証を国民に周知する広報を始めました。日本証券業協会も2026年3月、利用する証券会社がパスキー等を提供している場合は速やかに切り替えるよう投資家に求めています。

帰省の日は、親の銀行のアプリやサイトにパスキーの設定があるかを、親の画面で一緒に探します。見つかったら親が自分でログインし、登録の確認も親が押します。子が代わりに押したくなる場面ほど、手を止めて文言を読み上げておくと、次に親が1人で操作するときの助けになります。

パスキーはフィッシングへの耐性を高める認証方式です。古いパスワードのメモをどうするかも、その場で親と決めておきます。

証券口座も持っている親なら、パスキーと通知を組み合わせる考え方を同じ回の記事で確かめられます。

国民生活センターをかたるハガキが来たら

「最終確認通知書」と書かれたハガキは国民生活センターが送るものではないので、書かれた連絡先に親も子も連絡しない、と決めておきます。国民生活センターは2026年10月20日、「国民生活センターが、『最終確認通知書』のようなハガキを消費者に送付することは絶対にありません」と公表し、受け取っても「連絡せずに無視してください」と呼びかけています。

発表のタイトルは「ニセのハガキ」で、ここでいう偽ハガキはこれを指します。家族の約束は、気になるハガキが届いたら連絡先に連絡する前に写真を子に送る、迷ったら国民生活センターのサイトにある「全国の消費生活センター等」の一覧から地元の窓口を探す、の2つで足ります。

一方で、郵便を全部無視してよいわけではありません。国民生活センターの消費者トラブルFAQによると、裁判所からの重要な通知は「特別送達」という特別な郵便で配達され、郵便受けへ直接投函されるものではありません。本物の特別送達を放置しないことも、同じ約束に入れておきます。

帰省のときに郵便物や電話の様子をどう見るかは、こちらの記事にまとめています。

実家の固定電話にかかってくるニセ警察への備えは、家族のルールとして別の記事で扱っています。

見守りが監視にならない線引き

何を見るか(残高だけか、明細までか)と、どのくらいの頻度で見るかを親が決め、その範囲を見守りサービスの設定に写します。七十七銀行の例では、見守り範囲として残高・明細の表示や通知の範囲を、申し込む本人が入力します。

話し合いでは、見る目的を先に言葉にしておくと線が引きやすくなります。「覚えのない大きな出金がないか」に絞るなら、通知を受け取れば足り、毎日の明細までは要らないかもしれません。照会・通知が1日6回の仕組みなら、子が1日に何度も開く意味もあまりありません。

見たことは親に伝えます。「今月の引き落としは普段どおりだったよ」と月に1回話す、のように伝え方も決めておきます。範囲を変えたいときや止めたいときの手順も、登録の日に親と画面で確かめておくと、親が自分で決められる状態を保てます。

親の老後のお金の話を夫婦でどう始めるかは、こちらの記事で扱っています。

判断能力が落ちたときの別の仕組み

親本人による申込みや操作が難しくなってきたら、銀行の窓口での代理の手続きや、日常生活自立支援事業が別の選択肢になります。

日常生活自立支援事業は厚生労働省の説明で、判断能力が不十分な人が地域で自立した生活を送れるよう、利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用援助等を行う制度です。預金の払い戻しや預け入れの手続きなど、日常生活費の管理も含まれます。対象は判断能力が不十分でも事業の契約内容を判断できる人で、相談はお住まいの市町村の社会福祉協議会で受け付けています。

窓口での代理の手続きは、全国銀行協会の考え方を踏まえて各行が個別に対応しているとされ、条件も銀行ごとに違います。判断能力が大きく落ちたあとの財産管理の制度は、この記事の範囲外です。

次の帰省で母がIDのメモを差し出してきたら、受け取る代わりに、母のスマホの通知設定の画面を2人で開いてみてください。

出典

すべて2026-10-26に確認。

よくある質問

高齢の親の口座にパスキーを設定するとき、子は何をすればいい?
銀行が案内する方法で親本人が登録できるよう、子は横で画面の文言を一緒に読みます。日本証券業協会はパスキーをフィッシングに耐性のある認証方式と説明し、2026年3月時点で、証券会社が提供していれば速やかに切り替えるよう求めています。登録できる端末や利用者の条件は、銀行の案内で確かめます。
親が施設に入ったら、子が口座からお金を下ろせる?
家族だからという理由だけでは払い出せない、というのが全国銀行協会の基本的な考え方です(2021年2月)。窓口での代理の手続きは銀行ごとに違うため、親の口座がある銀行で確かめます。判断能力に不安が出てきたら、市町村の社会福祉協議会で日常生活自立支援事業の相談ができます。
入院などで親が動けなくなる前に、何を決めておけばいい?
親が元気なうちに、どの銀行に口座があるかを書き出し、見守りサービスがあれば親本人に登録してもらいます。七十七銀行の例では、本人が見守り範囲を決めて申し込み、家族は残高や明細を照会できます。窓口での代理の手続きも、親と一緒に銀行で聞いておくと慌てずに済みます。
パスワードを覚えきれない親は、家族で同じものを使えばいい?
家族で同じパスワードを使うことを直接扱った公的資料は確認できていませんが、いくつものサービスで同じパスワードを使い回す方法はとりません。警察庁は2026年10月の資料で、パスワードを使い回さないことと、多要素認証の利用を呼びかけています。銀行がパスキーを提供しているかと、その登録方法は、銀行の案内で確かめます。
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