子どもが小さい家の残し湯、なぜ抜く?

防災・家庭の安全memStock編集部
子どもが小さい家の残し湯、なぜ抜く?

100件中74件。医療機関から消費者庁に報告された子どもの溺水のうち、家庭のお風呂での入浴中に起きた事故の数です(2021年5月までの報告)。死亡の統計でも、0〜1歳の溺水は浴槽が最多です。消費者庁は子どもが小さいうちは入浴後に浴槽の水を抜くよう勧めています。防災のために残し湯をしたい家庭は、子どもだけで浴室に入れない対策を先に整えます。

溺水が起きる場所は年齢で変わる

0〜1歳では浴槽、5歳以上では川や海などの自然水域が最も多い場所です。消費者庁は厚生労働省の人口動態調査(2015〜2019年)を集計し、「0歳~1歳では浴槽での溺水、より活動的になる5歳以上では自然水域での溺水事故が最も多く発生」と書いています。

年齢区分 溺水死亡が最も多い場所 出典(集計年)
0〜1歳 浴槽 消費者庁による人口動態調査の集計(2015〜2019年)
5歳以上 自然水域 同上

受診した事故の報告でも傾向は重なります。家庭内で起きた溺水78件では、0歳と1歳の事故が多くを占めていました。0〜1歳の子がいる家では、海や川より先に、毎日使う浴槽が対策の場所になります。

浴槽で起きるのはどんな瞬間か

家庭内の78件のうち51件、約7割は保護者等が目を離している間に起きています。78件の内訳は、家庭での入浴中が74件、入浴していない時間に浴槽へ転落した事故が4件でした。結果は要入院が41件、死亡が2件。治療の必要性や処置が不明な事例も含まれています。

水の深さが記録された事例で最も浅かったのは約10cmでした。10cmより深ければ危ない、浅ければ安全という線ではなく、報告の中で確認された最も浅い値です。湯を少なめに張れば防げる、とは言えません。

消費者庁の資料は見守りだけで終わらせず、入浴後に水を抜くことやベビーゲートの設置といった、浴室の環境側の対策を並べています。

残し湯は防災か、事故か

乳幼児のいる家庭向けの事故防止では「抜く」、防災の文脈では「ためておく」と言われることがあり、勧めの向きが違います。ただ、乳幼児のいる家庭に向けた確認済みの勧めは「抜く」です。

消費者庁は2021年7月7日の注意喚起で「子どもが小さいうちは、入浴後は浴槽の水を抜くことを習慣にしましょう」と書いています。防災の側では、風呂の残り湯を浴槽にためておくとよいと言われることがあり、内閣府の防災カフェ用の資料にもその言い方が紹介されているとされます。ただし、残し湯を国が全家庭に一律に勧める現行の指針は、今回の確認では見つかりませんでした。

観点 勧めていること 出典 両立させるなら
子どもの事故防止 子どもが小さいうちは入浴後に浴槽の水を抜く 消費者庁(2021年7月7日) 水を抜く日を基本にする
防災 残り湯を浴槽にためておくとよいと言われる(国の一律の推奨は確認できず) 内閣府の防災カフェ用資料での紹介 ためる日は外鍵やベビーゲートで子どもだけで浴室に入れないようにする

2026年10月時点で確認できた範囲では、乳幼児のいる家庭に向けた公的な勧めは排水と侵入防止の2つです。防災用の水を浴槽以外で備えられるなら、残し湯に頼る理由はそのぶん小さくなります。

残し湯以外の生活用水や、液体ミルク・離乳食の備え方は、こちらの記事で整理しています。

両立させるなら何を足すか

外鍵とベビーゲートは消費者庁の対策に入っています。浴槽の蓋は、国民生活センターが乳児を寝かせると落下の危険がある場所に挙げています。

消費者庁の子ども安全メールVol.581(2022年2月8日)は、子どもだけで浴室に入れないよう、浴室の外鍵やベビーゲートを設けることを挙げています。入浴そのものについては「子どもは大人の後に浴室に入れ、先に浴室から出しましょう」とし、大人が洗髪するときは子どもを浴槽から出すよう書いています。同じ号には「浮き輪を使用中の溺水事故も発生しています」ともあります。

残し湯をする家では、湯をためた日に外鍵を閉めるところまでを入浴の片付けに含めておきます。

大人が家を空けて子どもだけで過ごす時間の浴室の扱いは、留守番の記事でも触れています。

首浮き輪と浴槽の蓋

首浮き輪では2017年と2020年に死亡事故が起きており、浴槽の蓋や洗濯機の上からは乳児の落下事故が報告されています。消費者庁のVol.609(2022年11月18日)は、首に付ける浮き輪が「入浴時に子どもを浮かせて保護者の洗髪や他の子どものお世話ができる『便利グッズ』として一部で誤って利用」されていると指摘し、そうした入浴方法では使わないよう求めています。平成29年(2017年)と令和2年(2020年)には死亡事故も起きており、2020年3月の事例は0歳でした。

国民生活センターは2025年12月17日、入浴・沐浴に伴う乳児の落下事故への注意を公表しました(2026年1月26日更新)。2020年度から2025年度までの約5年半に、医療機関ネットワークへ78件が寄せられています。乳児を寝かせるときは洗濯機の上や浴槽の蓋を避け、床などの安全な場所を選ぶよう呼びかけています。前の節の溺水78件とは別の集計です。

浴室の外の家庭内事故として、ボタン電池を飲んだかもしれないときの対応は、こちらの記事で扱っています。

数字はどこから来ているか

「0〜1歳は浴槽が最多」は亡くなった子どもを数える人口動態調査、「100件中74件」「約7割」「約10cm」は医療機関を受診した事故を集める医療機関ネットワークの数字です。数えているものが違うので、同じ母数として並べて比べることはできません。

消費者庁の資料は医療機関ネットワークを「医療機関を受診した患者の事故情報を収集し、同種・類似事故の再発防止に活かしていく取組」と説明しています。参画は2026年10月時点で28機関で、数は時期によって変わります。全国の受診件数や発生率を示す統計ではありません。

人口動態調査は死亡の統計なので、受診で済んだ事故は入りません。医療機関ネットワークには、参画していない病院を受診した事故や、受診しなかった事故が入りません。それでも0〜1歳に多いという点では、2つの統計が同じ向きを示しています。子どもの浴槽での溺水を月別に示した公的な統計は、今回確認できませんでした。

事故の統計が何を数えているのかは、保育の事故を例にこちらの記事で詳しく読み解いています。

今夜お風呂から上がったら、栓を抜くか残すかを決める前に、浴室のドアの外側に鍵が付いているかを一度見てみてください。

入浴中に溺れかけたあと、夜間に受診するか迷ったときの相談先は、こちらの記事にまとめています。

出典

すべて2026-10-22に確認。

よくある質問

子どもが小さいうちは、お風呂の残り湯を抜いたほうがいい?
抜くのが消費者庁の勧めです。2021年7月の注意喚起で、子どもが小さいうちは入浴後に浴槽の水を抜くことを習慣にするよう書いています。防災のためにためておく場合は、外鍵やベビーゲートで子どもだけで浴室に入れないようにします。
首浮き輪を使えば、洗髪中に目を離しても大丈夫?
大丈夫ではありません。消費者庁は首浮き輪を入浴中に目を離すための便利グッズとして使わないよう求めており、使用中の死亡事故も2017年と2020年に起きています。大人が洗髪するときは子どもを浴槽から出します。
お湯が浅ければ溺れない?
浅くても起きています。消費者庁が集めた受診事例では、水深の記載があった中で最も浅いものは約10cmでした。これは安全の目安ではなく、報告された事例の中の最も浅い値です。
子どもの浴槽での溺水は冬に多い?
月別の公的な統計は、今回確認できませんでした。0〜1歳の溺水死亡で最も多い場所は浴槽です(2015〜2019年の人口動態調査を消費者庁が集計)。

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